優しい庭師の見る夢は

エウラ

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31 公爵家の影警護の裏事情(sideヌル)

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私は影のリーダーの一人であるヌルと言う。

シュヴァルツ公爵家のお抱え影軍団は、大まかに分けて二つある。

一つは公爵家全体を警護する部隊。

こちらは字の如く、公爵家に侵入する暗殺者アサシン諜報員スパイを排除する事がメイン。

もう一つは公爵家の住人に付き従い、直接警護する部隊。
公爵家には今現在、公爵家当主であるゼクス様と嫡男のアハト様、次男のシュルツ様がおり、この3人が護衛対象なのだが・・・。

この方々、実は竜人の中でも上位に入る強さを誇る。

次男のシュルツ様に至っては、Sランク冒険者として活動しており、すでに亡き公爵夫人と並び立つほどの腕前のため護衛の意味はほぼ無く、今は何かの時の連絡係のようなモノである。

影としてこれは如何ともしがたい・・・。
存在意義が・・・。

影達がそんな鬱屈した日々を過ごす中で、ソレは不意に現れた。


「『精霊の森』に新たな【管理者】が現れたようだ」

そう言ってゼクス様が冒険者ギルドに指名依頼を出した。
・・・その依頼を指名されたのはシュルツ様なのだが。

そして調査に向かった先で出会ったのは、エルフらしからぬ【管理者】でシュルツ様の運命の番いだった。

『鈍臭いエルフ、しかもハイエルフだった』

そう聞いたときは全員、耳を疑ったが。
鈍臭いって、エルフにそんなのいるのか?!

更には、もしかすると奴隷狩りの被害者で籠の鳥だったかもしれないと・・・。

その後のシュルツ様からの通信で語られる数々のエピソードは妙に信憑性があり、に変わるのは当然だった。

今は調査中だが、そういった証拠はまだ出て来ない。
今まで全く表に出なかったのだ。
犯人は相当な切れ者なのかもしれない。
尻尾を掴むのは容易では無いだろう。

そんなわけで公爵家の中でも極一部しか知らされていない、まだ見ぬ【管理者】への興味がますます高まるばかりだった。


少しして、どうやら【管理者】と会う手段が出来たとシュルツ様が一時的に邸にお戻りになった。

鈍臭さを凌駕するほどの規格外な能力を持つ【管理者】イツキ様に一同驚愕し、偶然か亡き公爵夫人によく似た毛色のウサギのぬいぐるみがこれまた亡き公爵夫人の動きにそっくりな事に驚く。

この時、イツキ様の専属警護として選ばれた私と他の4名は先の二部隊から外れて、交代でイツキ様の側に控えるようになる。


『精霊の森』での主な役目は、シュルツ様が目を離している時や冒険者として依頼を遂行中の時のイツキ様の見守り。

普段はシュルツ様が甲斐甲斐しく付き添って御世話をしているので心配はないが、イツキ様はたまにふらっと予想外の行動をとるのだ。

そういうときに限ってシュルツ様がいなかったりする。
そして『鈍臭い』がしっかりと仕事をしてしまうのだ。

本棚から本を取ろうとして台を踏み外す。
庭先で水を撒こうとして何故かびしょ濡れになる。
階段を踏み外す。

───取り込んだシーツに包まってテラスで寝落ちる・・・。

等々・・・。

───公爵家では久しく感じなかった護衛へのやり甲斐をイツキ様に見出し、おそらく嬉々として任務に当たっているだろう。
他の4名も同様だ。


充実した日々を送っていると、シュルツ様が不在の時に、不意にお茶に誘われて名前を聞かれた。

困惑しながらも公爵様に対応を求めると、コードネームなら良いとの許可が。

『可能な限り応えてやると良い。イツキには悪意は無いから。単に友人知人として接したいのだろう』

そう言われて、イツキ様に請われるまま応えているとシュルツ様が戻ってきたので、お開きになった。

気配を消して様子を窺っていると、イツキ様は無意識なのだろうが、シュルツ様に「寂しかったから」「シュルツが帰ってきて嬉しい」と言ってシュルツ様の気持ちを爆上げしていた。

───自覚の無い発言と行動・・・・・・。
恐ろしい子・・・・・・。

「次の影さんにも名前を教えて下さいって言っといて下さいな」

それにコンッと天井を叩いて返事をすると嬉しそうに笑った。

この笑顔を絶対に護ろうと誓うのだった。






※今朝から寝不足気味で頭がぼけぼけしてまして。
話が何か纏まりませんでしたが何とか書けたので遅いですが更新します。
読み返してオッケーと思ってますがヘンなところがあったらすみません。


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