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20 続・軟禁生活
しおりを挟むリビングのソファでうたた寝しているうちに僕の軟禁生活の延長が決定したらしい・・・。
イヤイヤ何なの?
だってまだ一日どころか、朝食の支度の時にちょーっと寝ただけじゃん。
なのに何で延びてるのさぁ?!
「だって体力落ちてるだろう? 取りあえず食べて寝ないと。眠くなるのは体が休息を求めているからだよ。はい、あーん」
「むー・・・頂きます。あむっ・・・んまい! やっぱりシュルツって料理上手だよね!」
つい今しがたまでブーブー言っていた樹希だっが、シュルツの『あーん』に思わず口を開け、料理が押し込まれればケロッと忘れた。
もくもくと食べ終えると、歯磨きをしてトイレ・・・はさすがに恥ずかしいから一人で入る。
こちらのトイレも、良いところだと地球で言うところの洋式の水洗トイレだ。
庶民や貧しいところだと和式みたいな形らしい。
安いからって理由だと、ナヴィ情報。
「・・・大丈夫か? 落ちるなよ?」
「───落ちないよ! ってか何処に落ちるの?!」
「そりゃあ便座の中---」
「落 ち な い!!」
そんなに小っさくないわ───!!
『・・・イツキ、たまに便座下ろすの忘れて座って落ちかけてるよね?』
『何回か落ちたね』
『時々叫んでるよね?』
『ぅひゃ───!!って』
「ギャ───!! なんてこというの、君達───!!」
シュルツがトイレの前で待っていると、精霊達が爆弾を投下して、慌てて叫ぶもシュルツに全部聞こえて撃沈した樹希。
「───どうしてくれようか・・・。イツキが鈍くさ過ぎる」
シュルツは頭を抱えるのだった。
諸々の恥ずかしい話で精神的に疲労した樹希は、シュルツに言ってロッジの倉庫から以前作ったカウチソファを取り出して貰うと窓辺に置いて貰った。
シュルツが寝転んでも足がぎりぎりはみ出ないくらいには大きいサイズだ。
以前、ベッド代わりに作って使わないでいたものだった。
「・・・ここで寝そべってるから、シュルツは好きなことしてていーよ・・・。疲れたから、また寝てる・・・」
「───ああ、適当に過ごすから心配するな。ずっと側にいる」
「・・・ん・・・ありがと・・・・・・」
うとうとしたかと思えば、あっと言う間に寝入ってしまった。
ブランケットを掛け直すと、シュルツは念のためにカウチソファの下に大きなクッションを敷き詰めた。
コレなら万が一転げ落ちても、怪我はしないだろう。
キッチンで食器を片づけてから衣類の洗濯。
何時もイツキは浄化魔法を使っているらしく、シュルツも教わってすぐに使えるようになったのでソレを毎回使っている。
それが終われば後は大したことはないので、自分もひと息吐いて父であるゼクスに通信を入れる。
昨日イツキの件でイーストの街のギルマスと会っていた時に、シュルツに付いていた精霊を通して受けた緊急事態に慌ててロッジに戻って。
その後ギルマスには一応連絡を入れたが、実家には連絡を入れていなかった。
後で家から通信があったことに気付いたが、それどころじゃなかったので、放置していたのだ。
「───シュルツです。今、大丈夫ですか?」
『───シュルツ?! イツキ殿は大丈夫なのか?!』
「・・・もしかして、ギルマス辺りから連絡ありました?」
『昨日ね。何かあったらしいが、一応無事らしい・・・と。詳しい内容は語らなかったんだが・・・聞いても良いのかな?』
「そうですね。俺がギルドに行っていて不在中にうっかりスライムに襲われ、逃げた先でうっかり足を踏み外し、うっかり滝壺に落ちて溺れました。で、取りあえず無事でしたが、その後熱を出して今朝はふらふらして階段から落ちました。・・・キャッチして無事でしたが」
『・・・・・・』
大まかなあらすじを語ったんだが。
『・・・・・・ええと?』
沈黙の後の困惑の声。
「ようは鈍臭くて一人にしておけないって事ですよ。今日から暫くは軟禁生活確定です」
『・・・・・・ほどほどにな?』
苦笑するような声音で言われたが、昨日の傷だらけのイツキを思うと生温い方だと思う。
愛しい番いに傷一つだって付けたくないのに。
「監禁しないだけマシでしょう? 生傷の絶えないハイエルフって、どう思います? ましてや愛する番いですよ?」
『───笑えないねぇ・・・。分かった、イヤ分かりたくないけど、うん、まあ頑張って。・・・その内、彼に会わせてくれるんだろう?』
「・・・・・・不本意ですが。ただ、これまでの様子を見るに外に出すのはかなり不安です」
何が起こるか未知数で、想像もつかない。
『ははは、独占欲かい? うーん、それはこちらがロッジに行ければ問題は無いんだが・・・その辺りイツキ殿とも相談してみてくれる?』
「・・・そうですね。精霊王様達ならどうにか出来るかもしれないですね」
『じゃあ、その線でいってみて。くれぐれも無理はしないように、色々とな』
「分かってますよ」
じゃあ、とお互い挨拶をして通信を切った。
「・・・・・・ひとまずはイツキの快復に集中せねばな」
そう言って、栄養価の高い食事の準備に取りかかるシュルツだった。
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