優しい庭師の見る夢は

エウラ

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シュルツさんが冒険者ギルドの依頼を終えて帰った次の日の朝。

何故かロッジ我が家にいたシュルツさん・・・本人の希望で今はシュルツと呼び捨てである・・・が、うやむやの内に同居人となることが決まった。


「だって、イツキが一人で住んでいるなんて危ないだろう?」
「え、いや、一人じゃないです。精霊達がいるから。それに悪い人はこの森に入れないって・・・」
「それはそうだろうが、俺が心配なんだ」
「ええ・・・、そんなに僕って頼りない?」

ちょうど今朝ロッジに遊びに来ていた精霊王の一人である闇の精霊王に思わず聞いた樹希。
闇の精霊王は腰まである真っ直ぐな黒髪に黒い瞳の美丈夫だ。
まあ、精霊には性別は無いらしいんだけど、本人の性質でどっちかの容姿に寄るらしい。

そんなカッコいい闇の精霊王ダルクは、ニヤリと笑った。

実は、名前が無いと不便だねって僕が言ったら名付けを頼まれて精霊王達には僕が名前をつけていたのだけど、それはまた追々と。

で、ダルクが笑って言ったんだ。

『ああ、全くもって頼りないな。目が離せないというか手のかかる子供?』
「・・・僕、子供じゃ無いんだけど」
『そうだな。年齢的な事をいえばお前は今・・・19だっけ? だが精神的な意味ではお子様だな。我は愛らしくて好きだが』

・・・まあ、ここに転生したのは15歳のハイエルフで、そこから4年だから実質19歳だけども。
精神的な意味では23歳だよね?
それともこの体に精神年齢も引っ張られてたのかな?
周りに比較対象がいないから分からなかったけど、僕、もしかしてもっとずっと子供に見えてた?!

「19歳なのか?! もっと小さ・・・コホン、若いのかと・・・」

シュルツが驚いた後に思わずという感じで失言をしたのでちょっと睨んだら言い直した。
今更言い直しても遅いよ。

「ココで目が覚めたときは15歳だったんだけど、それから一ミリも大きくなってないと思いますね。伸びたのは髪の毛くらいじゃないですか?」
「俺には敬語で無くて良いぞ。ていうかって、どういう意味だ? 以前はエルフの隠里に住んでいて精霊にここに喚ばれたんじゃ無いのか?」
「ああうん、じゃあ普通に話すね。んーと、エルフの隠里には行ったこと無いよ。そもそも僕はハイエルフらしいから。でもハイエルフの隠里も知らないし。えーと、ここに連れて来て貰う前は・・・・・・昨日も言ったけど、言いたくない」

また前世での生活環境を思い出して思わず昏い目をした。
お世辞にも楽しく暮らしていたとは言えない生活だった。
それこそ精霊達がいなければ心が病んでいたと思うから。

黙ってしまった樹希に何を思ったのか、シュルツも何事か考えるように黙り込んでしまった。

「・・・・・・まあ、昔の事は今のイツキには関係ないだろうから、忘れたら良い。何かあれば俺に何でも言ってくれ」
「・・・ありがとう。何でだろうね、精霊達以外の人は怖いけどシュルツには平気みたい」
「・・・うぐっ・・・」

そう言ってニコッと笑ったらシュルツが片手で口元を押さえて呻った。
・・・僕の笑顔って、そんなに酷いの?
不安になって思わずダルクを見ると、にっこりされた。

『お前が可愛過ぎるんだよ』
「? 意味が分からないんだけど。まあ、僕の変顔のせいじゃないならいいや」
『イツキかわいい』
『綺麗だよ』
『何時もの可愛いイツキ!』
『かわいいかわいい』
「・・・僕ってダルクみたいにカッコいいって言われる気がしない・・・」
『イツキは可愛いが正解。そのまま大きくなれ』
「えー・・・、育つのかな?」

精霊王や精霊達とほのほのと話す樹希を見やって、心の中でうんうんと頷くシュルツだった。

『そういうわけで、あの竜人を受け入れてやるが良いぞ』
「ダルクがそう言うなら」
「じゃあ決まりだな。これからよろしく頼む」
「・・・うん、よろしくね、シュルツ」

こうしてイケメン竜人と突然同居する事になったのだった。

急な出来事だったが、樹希には大きな転機だった。




シュルツが自分の大切な人になるのに時間はかからなかったのだから・・・。








※次話からシュルツ視点の話になる予定です。





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