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3 優しい世界と精霊達と・・・
しおりを挟む───あれから、はや4年が経った。
僕が前世、亡くなった歳になった。
え? 早いって?
だってその間の事なんて大したこと無かったし。
あの後神様に聞いた話だと、僕は魂だけだったからこの世界に合わせた肉体を創り、魂と馴染ませたのだそうだ。
若返っていたのは、この世界での成人が15歳だったからそれに合わせただけだと。
その際、魂の情報を読んで肉体を構築したそうで、容姿は元の姿なんだけど、耳が長く尖っていた。
いわゆるエルフ耳だ。
自分の気持ちに連動するようで、しょっちゅうピクピク動いてしまい、慣れるまでは大変だった。
そう、僕はこの世界では純粋なエルフとして転生していた。
元々、先祖返りでエルフの遺伝子が強かったらしい。
この世界で生きていくなら、純粋なエルフの方が過ごしやすいそうだ。
精霊達とも通じ合えるし、長生きできるから精霊の森の管理者としては助かるって。
《ただ、純粋なエルフは隠里から滅多に出ないから、この森を離れることはしない方がいいよ。森なら精霊達が護ってくれるけど、外の世界は悪いヤツらも危険もいっぱいだから》
「絶対に出ません!」
そう神様に言われて、僕は速攻で引き篭もり宣言をした。
どうせこの世界に知り合いはいない。
いるのはここの精霊達と神様だけ。
出なくても問題ない。
この森にある果物や食べられる野草や野菜、そんなものでもエルフなら十分栄養が摂れるんだって。
髪を伸ばせば、空気中の魔素・・・魔法の元の魔力をたくさん吸収して生命活動のエネルギーに変えてくれるとか。
植物の光合成かい!ってツッコんだ僕は悪くないはず。
なるほど、エルフって本当に森の人なんだなと思った。
結局僕は動物を捕まえて食べることはせず(出来ないし捌けない)、精霊達や頭の中の知識を総動員して日々食べ物を確保しながら、森を整備していった。
ロッジ自体に神様が状態保存の魔法をかけてくれていて、更に倉庫には時間停止付きの無限収納の魔法をかけてくれたので、見つけた食材や薪、薬になる素材などをホイホイとツッコんでいる。
慣れた頃に精霊達から魔法も教わり、今では自分の身を守れるくらいには上達したと思う。
まあ、そんな危機的状況に陥っていないので予想でしかないが。
そうして少しづつ馴染んでいって、髪も背中の真ん中辺りまで伸びた頃、ソレは突然現れた。
神様は、精霊の森には悪意を持つ存在は入れないって言ってたから、たぶん問題は無いんだと思うんだけど・・・。
だからって真っ黒い大きな翼竜が来るなんて誰が思うの?!
その日、何時もの森の巡回ルートを通って果物を幾つか採取してロッジへと戻ってきた。
ローブのフードを下ろしてホッとひと息吐いたときに、自分の周りがふっと暗くなって、アレ、天気崩れるのかな?なんて思いながら空を見上げたら・・・。
太陽を遮るように、大きくて真っ黒い竜が空にいたんだ。
驚きのあまり、マヌケにも口をポカンと開けたまま長いこと見上げていたら、くらりとして仰向けに倒れた。
それでハッとなったけど、腰が抜けて起き上がれずに仰向けのままぽけーっと竜を眺めていると、凄い勢いで僕にツッコんできて・・・。
たぶん僕はパニックになって気絶した。
次に目が覚めたら、ロッジの寝室の自分のベッドに寝ていて、その横には眉をへにょっとさせた黒髪に綺麗な紫水晶色の瞳の美丈夫が椅子に座って覗き込んでいた。
そこで驚いて、僕はまた気絶したんだ。
ごめんなさい、前世合わせて23才だけど、コミュ障でイケメンに免疫無いんです。
あ、見た目は15歳のまんまだった。
じゃあ子供って事で許してくれるかな?
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