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77 魔導師は魔剣士団長と語らい合う 3
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「おーい。そろそろいいかなぁ?」
スザクの呆れたような声にハッとした僕と、若干不服そうなロズが顔を上げた。
「何だ、まだいたのか」
「いたのか、じゃねえよ。まだセイリュウに詳しく説明してないだろ」
「・・・・・・何故セイリュウを呼び捨てにしてる」
「あっ、あの、僕がそう頼んだの。堅苦しいのがイヤだったし、ソレに・・・・・・前世の記憶持ちって」
ロズも聞いたんだよね?
「・・・・・・そうだな。仕方ないから許す」
渋々そう言うロズにクスッと笑って僕もぎゅうっと抱き付いた。
「ありがとう。僕ね、久しぶりに色々聞けそうで楽しみだったんだ」
「そんな楽しみの前にあんなコトになって悪かったな」
「まあ、でもスザクがめちゃくちゃ悪いわけでもなさそうだし、このあといっぱいお話聞ければいいから、ソレでチャラってことで!」
「ふっ、強いな、セイリュウは。じゃあ先に着替えておいで。向こうで待ってるから」
そう言ってスザクは最初にいた部屋に戻っていった。
「セイリュウ、すまなかった。着替えたらセイリュウの気の済むまで説明するからな」
「・・・・・・もういいよ。ロズが不本意だったのはスザクの話やロズの態度で分かったし。今後、あんなコトがなければいいよ」
「もちろん、指一本触らせないし、顔も見せないように隔離してやるから任せろ」
「・・・・・・ソレは頼もしいなぁ」
そう言いながらもその手段がコワそうでその話はそこで止めにした。
さて、正装をロズに脱がして貰って、綺麗に結われていた髪もロズが器用に解いて緩く三つ編みして纏めてくれた。
そして用意されていたカジュアルなシャツとパンツに着替えてショールを肩にかけて隣の部屋に移動した。
「お待たせー」
「おお、服や髪型でだいぶ印象が・・・・・・こうしてみると結構幼い?」
「いや、これでも18歳だけど?」
不健康な生活が長かったとはいえ、今はロズの甲斐甲斐しいお世話と【神の愛し子】の祝福で人並みに成長した・・・・・・はず。
「そうなんだが、何か童顔?」
「ぐぬぬ・・・・・・気にしてることを・・・・・・」
背は伸びたけど顔の造形はあまり変わらず、レグルス父様みたいに綺麗系じゃなくて可愛い系なんだよね。
「俺は可愛い顔も好きだぞ。まあ、セイリュウがセイリュウであれば気にはしないが」
「───何この人、流れるように愛を囁いてるよ。マジか、凄え」
「───ぅん。ありがとう?」
スザクにムッとしたら、ロズがそう言って頭を撫ぜてくれた。
撫ぜて貰うの気持ちいいし嬉しかったからそのままでいたら、スザクが苦笑しながらぼやいていた。
うん。安定のロザリンド。
少し前のイヤな気持ちはとっくに消えていた。
「さて、落ち着いたところで本題に入ろう」
スザクの言葉で我に返って、真剣な表情で頷く。
───そこからは大まかな話を聞かされた。
ココが前世の日本で流行った乙女ゲームの世界に酷似しているそうで、その乙女ゲームのストーリーをざっくりと教えられた。
そしてその続編として作られたのが、僕が主役のBLゲーム───BLなんかい!
「まあ、実際の出自は多少違えどセイリュウが攻略対象者達と交流して誰かとハッピーエンド、もしくはハーレムエンドってのが大筋の話だ」
「イヤ、誰かとって。ロズ以外いないしハーレムなんてごめんだし!」
それが本当だとしても絶対御免こうむる! そもそもゲームなんてやる暇もない社畜だったから全然分からないし!
大体、好きになったのがたまたまロザリンドだっただけで別に同性愛者ではなかったし。・・・・・・なかったよな? たぶん。ていうか恋愛のれの字もない生活だったし・・・・・・アレ?
まあいいか。
───そういえばゲームの設定では僕の【神の愛し子】の祝福はどうなってるんだろう?
「スザク、そのゲ・・・・・・えっと物語では5歳で得られた祝福のことはどうなってるの?」
「ああ、あれな。主人公は【魔法】の他にもう一つ重要な祝福が授けられる」
そこはやっぱりゲームと同じなんだな。確かに僕には二つの祝福がある。
「ソレって・・・・・・」
「物語の鍵となる【神の愛し子】だな。・・・・・・セイリュウも持ってるんだろう?」
どうやらスザクがこの部屋全体に防音の魔法をかけていたらしいが、それでもつい内緒話をするように顔を近づけて小さな声でぽそっと告げる。
僕はこくんと一つ頷く。
「───やっぱりかぁ。ソレが周りにバレて色々問題が起こって、攻略対象者達と解決しながら仲を深めていくっていうのがこの物語の醍醐味でさー」
「・・・・・・思ってたけど、ずいぶん詳しいよね? もしかして経験者?」
「おう! ビジュアルも好きでやりこんでた! ソレに俺、腐男子だったし!」
全ルートやったしスチルも全部集めた! なんて力説してる。スザクは一体前世で何歳だったんだ? 学生か?
「ああ、俺は裕福な会社の息子で次男だったから割と緩かったな。ちなみに20歳の大学生だったが酔っ払いの車に跳ねられて、気付いたらココで1歳くらいだった」
ケラケラ笑う顔には悲壮感がなくてホッとした。勝手に辛い思いをしていたんじゃないかって心配してたから。
「まあ、歳の割に言葉も分かって聞き分けのいい子供だってんで、当初は周りが騒がしかったけどな。俺は気にせず楽しんでたぜ」
「そっか、よかった」
「ちなみに俺もセイリュウの攻略対象者の一人な」
「・・・・・・・・・・・・は?」
「殺す」
何、後出し情報ぶっ込んでくんの、この人。
───ほらあ! ロズがドス黒いオーラ撒き散らして剣を(鞘ごと)突き出してるじゃん!
スザクの呆れたような声にハッとした僕と、若干不服そうなロズが顔を上げた。
「何だ、まだいたのか」
「いたのか、じゃねえよ。まだセイリュウに詳しく説明してないだろ」
「・・・・・・何故セイリュウを呼び捨てにしてる」
「あっ、あの、僕がそう頼んだの。堅苦しいのがイヤだったし、ソレに・・・・・・前世の記憶持ちって」
ロズも聞いたんだよね?
「・・・・・・そうだな。仕方ないから許す」
渋々そう言うロズにクスッと笑って僕もぎゅうっと抱き付いた。
「ありがとう。僕ね、久しぶりに色々聞けそうで楽しみだったんだ」
「そんな楽しみの前にあんなコトになって悪かったな」
「まあ、でもスザクがめちゃくちゃ悪いわけでもなさそうだし、このあといっぱいお話聞ければいいから、ソレでチャラってことで!」
「ふっ、強いな、セイリュウは。じゃあ先に着替えておいで。向こうで待ってるから」
そう言ってスザクは最初にいた部屋に戻っていった。
「セイリュウ、すまなかった。着替えたらセイリュウの気の済むまで説明するからな」
「・・・・・・もういいよ。ロズが不本意だったのはスザクの話やロズの態度で分かったし。今後、あんなコトがなければいいよ」
「もちろん、指一本触らせないし、顔も見せないように隔離してやるから任せろ」
「・・・・・・ソレは頼もしいなぁ」
そう言いながらもその手段がコワそうでその話はそこで止めにした。
さて、正装をロズに脱がして貰って、綺麗に結われていた髪もロズが器用に解いて緩く三つ編みして纏めてくれた。
そして用意されていたカジュアルなシャツとパンツに着替えてショールを肩にかけて隣の部屋に移動した。
「お待たせー」
「おお、服や髪型でだいぶ印象が・・・・・・こうしてみると結構幼い?」
「いや、これでも18歳だけど?」
不健康な生活が長かったとはいえ、今はロズの甲斐甲斐しいお世話と【神の愛し子】の祝福で人並みに成長した・・・・・・はず。
「そうなんだが、何か童顔?」
「ぐぬぬ・・・・・・気にしてることを・・・・・・」
背は伸びたけど顔の造形はあまり変わらず、レグルス父様みたいに綺麗系じゃなくて可愛い系なんだよね。
「俺は可愛い顔も好きだぞ。まあ、セイリュウがセイリュウであれば気にはしないが」
「───何この人、流れるように愛を囁いてるよ。マジか、凄え」
「───ぅん。ありがとう?」
スザクにムッとしたら、ロズがそう言って頭を撫ぜてくれた。
撫ぜて貰うの気持ちいいし嬉しかったからそのままでいたら、スザクが苦笑しながらぼやいていた。
うん。安定のロザリンド。
少し前のイヤな気持ちはとっくに消えていた。
「さて、落ち着いたところで本題に入ろう」
スザクの言葉で我に返って、真剣な表情で頷く。
───そこからは大まかな話を聞かされた。
ココが前世の日本で流行った乙女ゲームの世界に酷似しているそうで、その乙女ゲームのストーリーをざっくりと教えられた。
そしてその続編として作られたのが、僕が主役のBLゲーム───BLなんかい!
「まあ、実際の出自は多少違えどセイリュウが攻略対象者達と交流して誰かとハッピーエンド、もしくはハーレムエンドってのが大筋の話だ」
「イヤ、誰かとって。ロズ以外いないしハーレムなんてごめんだし!」
それが本当だとしても絶対御免こうむる! そもそもゲームなんてやる暇もない社畜だったから全然分からないし!
大体、好きになったのがたまたまロザリンドだっただけで別に同性愛者ではなかったし。・・・・・・なかったよな? たぶん。ていうか恋愛のれの字もない生活だったし・・・・・・アレ?
まあいいか。
───そういえばゲームの設定では僕の【神の愛し子】の祝福はどうなってるんだろう?
「スザク、そのゲ・・・・・・えっと物語では5歳で得られた祝福のことはどうなってるの?」
「ああ、あれな。主人公は【魔法】の他にもう一つ重要な祝福が授けられる」
そこはやっぱりゲームと同じなんだな。確かに僕には二つの祝福がある。
「ソレって・・・・・・」
「物語の鍵となる【神の愛し子】だな。・・・・・・セイリュウも持ってるんだろう?」
どうやらスザクがこの部屋全体に防音の魔法をかけていたらしいが、それでもつい内緒話をするように顔を近づけて小さな声でぽそっと告げる。
僕はこくんと一つ頷く。
「───やっぱりかぁ。ソレが周りにバレて色々問題が起こって、攻略対象者達と解決しながら仲を深めていくっていうのがこの物語の醍醐味でさー」
「・・・・・・思ってたけど、ずいぶん詳しいよね? もしかして経験者?」
「おう! ビジュアルも好きでやりこんでた! ソレに俺、腐男子だったし!」
全ルートやったしスチルも全部集めた! なんて力説してる。スザクは一体前世で何歳だったんだ? 学生か?
「ああ、俺は裕福な会社の息子で次男だったから割と緩かったな。ちなみに20歳の大学生だったが酔っ払いの車に跳ねられて、気付いたらココで1歳くらいだった」
ケラケラ笑う顔には悲壮感がなくてホッとした。勝手に辛い思いをしていたんじゃないかって心配してたから。
「まあ、歳の割に言葉も分かって聞き分けのいい子供だってんで、当初は周りが騒がしかったけどな。俺は気にせず楽しんでたぜ」
「そっか、よかった」
「ちなみに俺もセイリュウの攻略対象者の一人な」
「・・・・・・・・・・・・は?」
「殺す」
何、後出し情報ぶっ込んでくんの、この人。
───ほらあ! ロズがドス黒いオーラ撒き散らして剣を(鞘ごと)突き出してるじゃん!
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