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76 魔導師は魔剣士団長と語らい合う 2
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「───あ、ごめんなさい。やだ、何で」
「気にしなくていい。ホッとしたんだろ? 誰にも言えない秘密を抱えてここまで過ごしてきたんだろ?」
───ほらって言って紅茶を淹れてくれたスザク魔剣士団長にお礼を言う。
一口飲むと気分が落ち着いた。
あ、紅茶は僕が手を伸ばしたらスルンと結界がカップにまで伸びて結界の中に取り込まれたので、直に普通に持って飲んでいる。
「じゃあ、改めて自己紹介な。スザク・フィニクスだ。俺も前世、日本人だった記憶があるから敬語とかいいからな。さっきロザリンドとも話してアンタの事情も聞いてる」
「あー、うん。その方が気楽かな。僕もセイリュウと呼んでくれる?」
「分かった。俺もスザクでいい」
そう言いながら握手を求めてきたのでつい手を差し出すと、紅茶のときと同じようにスルンと結界がスザクを包んで直に握手が出来た。
「・・・・・・どうなってるんだ、これ。面白いな」
「ぅ、え、僕も今イチ分からなくて。神殿の結界と似たようなモノで悪意を弾くようになってるみたい?」
「ロザリンドは? さっきは弾いてたみたいだけど、アイツは悪意なんてないだろう?」
スザクにそう言われて困り顔で応える。
「ぅ・・・・・・たぶん、無意識に拒否してるんだと思う。───あの子が触れたから、間接的に」
あの子には嫌悪感しかなかったから。
「あー、それな。さっきロザリンドにも言ったが、すまなかった。アレの接触は想定外だったんだ」
「・・・・・・どういうこと?」
スザクが罰が悪そうに頬を掻いてそう言ったから詳しく聞いてみた。
彼の名はユリアナといって、ホウオウ国王の弟の元第三王子で現大公の嫡男だそう。
要するにこの国の元王女であるロザリンドの母親の兄で、ロザリンドとは従兄弟同士ということだ。
元王族だから避難用の秘密の通路を知っていて、そこから警備の目を盗んで入り込んでいたらしい。
従兄弟という間柄ゆえに、ロザリンドが時々この国に来たときは多少の付き合いがあったそうだ。
それだけの関係だが、ここ一年ほどユリアナがロザリンドに懸想しているらしく、ルラック公爵家にロザリンドとの婚約の打診をしまくっていると。
「・・・・・・いや何でうちの国のオーディン公爵家じゃなくてルーお爺ちゃんちに申し込むの? 意味が分からない」
「そう思うよな? 普通はそうだよな?」
うんうんと同意するとスザクは続けた。
「それが陛下がうっかりルラック公爵家へのロザリンドの養子話を漏らしてしまったために、非常識な打診をしまくっているんだよ」
深い溜め息を吐きながらそう言うスザクに、何となく察した。
要するにその大公一家は物事を深く考えない、いわゆるダメ家族で自己中心的な人達なんだ。だからたぶん、何が悪いのか分かっていない。
「・・・・・・僕とロザリンドの婚約はうちの国王からも正式に発表されているのに、まさか知らないの?」
「いや、さすがに知っていると思うが・・・・・・」
「知ってて打診してるって、頭おかしいんじゃない? それとも僕達のこの婚約を覆すほどの何かがあって自信満々なの?」
僕は不敬と思いつつもあんまりな話に呆れてそう言ってしまった。
だがスザクも咎めるどころか同意するように頷く。
「いやあ、ただのアホだと思うね」
「・・・・・・そんな人達だから、今日のアレを、周りにお構いなしにやってたわけ?」
「うん・・・・・・まあ、うちの陛下が今回の謁見を利用して懲らしめようとちょっとやらかしちゃって、ああいう事態に・・・・・・スマン」
「───上がアホだと部下が尻拭い大変だよねぇ」
「全くだ」
「あ、ロズ」
前世で散々やったわ、なんてぼやいているうちに、お風呂でさっぱりしてきたロズが部屋に戻ってきた。
服も着替えたようで、登城用の正装じゃなくなっていつもの騎士服だった。
そういえば僕は着替えてないな。今更だけど皺くちゃになっちゃう。
「僕も着替えたいな。着替えってあるの?」
「ああ、用意してあるが・・・・・・その前に」
「?」
「・・・・・・ああ」
風呂に入って綺麗になったらしいロズがおもむろに僕に近付き、抱きしめてきた。
僕は意味が分からずキョトンとしたが、スザクは何か気付いたようだ。
───ん? あれ?
「・・・・・・ロズ、結界の中にいる?」
「───やっと触れられた」
「やっぱりイヤなマーキングのせいだったか」
ぎゅうっと抱きしめられても拒否反応が出ない。
───え、それってそういうこと? お風呂で綺麗になったから?
「・・・・・・なんかソレって、僕が潔癖症っぽくない?」
「それくらいがいい。他所の野郎の匂いなんか纏ってたら俺はキレる」
「・・・・・・おーい、魔王降臨しそうだからセイリュウ、しっかり手綱握っとけな」
「えええ?」
微妙な感じになった僕をロズがそう言って、スザクは意味が分からないことを言った。
───僕が倒れてる間に何があったの?
考えても分からず、首を捻る僕をスリスリしまくるロズ。
スザクはソレを微笑ましそうに見ていた。
「暫しの平和だねぇ」
※語らいはもう少し続きますが、ロザリンドとスザクの会話の内容と被るところがあります。
ご了承下さい。(前世でのゲームの話とか)
「気にしなくていい。ホッとしたんだろ? 誰にも言えない秘密を抱えてここまで過ごしてきたんだろ?」
───ほらって言って紅茶を淹れてくれたスザク魔剣士団長にお礼を言う。
一口飲むと気分が落ち着いた。
あ、紅茶は僕が手を伸ばしたらスルンと結界がカップにまで伸びて結界の中に取り込まれたので、直に普通に持って飲んでいる。
「じゃあ、改めて自己紹介な。スザク・フィニクスだ。俺も前世、日本人だった記憶があるから敬語とかいいからな。さっきロザリンドとも話してアンタの事情も聞いてる」
「あー、うん。その方が気楽かな。僕もセイリュウと呼んでくれる?」
「分かった。俺もスザクでいい」
そう言いながら握手を求めてきたのでつい手を差し出すと、紅茶のときと同じようにスルンと結界がスザクを包んで直に握手が出来た。
「・・・・・・どうなってるんだ、これ。面白いな」
「ぅ、え、僕も今イチ分からなくて。神殿の結界と似たようなモノで悪意を弾くようになってるみたい?」
「ロザリンドは? さっきは弾いてたみたいだけど、アイツは悪意なんてないだろう?」
スザクにそう言われて困り顔で応える。
「ぅ・・・・・・たぶん、無意識に拒否してるんだと思う。───あの子が触れたから、間接的に」
あの子には嫌悪感しかなかったから。
「あー、それな。さっきロザリンドにも言ったが、すまなかった。アレの接触は想定外だったんだ」
「・・・・・・どういうこと?」
スザクが罰が悪そうに頬を掻いてそう言ったから詳しく聞いてみた。
彼の名はユリアナといって、ホウオウ国王の弟の元第三王子で現大公の嫡男だそう。
要するにこの国の元王女であるロザリンドの母親の兄で、ロザリンドとは従兄弟同士ということだ。
元王族だから避難用の秘密の通路を知っていて、そこから警備の目を盗んで入り込んでいたらしい。
従兄弟という間柄ゆえに、ロザリンドが時々この国に来たときは多少の付き合いがあったそうだ。
それだけの関係だが、ここ一年ほどユリアナがロザリンドに懸想しているらしく、ルラック公爵家にロザリンドとの婚約の打診をしまくっていると。
「・・・・・・いや何でうちの国のオーディン公爵家じゃなくてルーお爺ちゃんちに申し込むの? 意味が分からない」
「そう思うよな? 普通はそうだよな?」
うんうんと同意するとスザクは続けた。
「それが陛下がうっかりルラック公爵家へのロザリンドの養子話を漏らしてしまったために、非常識な打診をしまくっているんだよ」
深い溜め息を吐きながらそう言うスザクに、何となく察した。
要するにその大公一家は物事を深く考えない、いわゆるダメ家族で自己中心的な人達なんだ。だからたぶん、何が悪いのか分かっていない。
「・・・・・・僕とロザリンドの婚約はうちの国王からも正式に発表されているのに、まさか知らないの?」
「いや、さすがに知っていると思うが・・・・・・」
「知ってて打診してるって、頭おかしいんじゃない? それとも僕達のこの婚約を覆すほどの何かがあって自信満々なの?」
僕は不敬と思いつつもあんまりな話に呆れてそう言ってしまった。
だがスザクも咎めるどころか同意するように頷く。
「いやあ、ただのアホだと思うね」
「・・・・・・そんな人達だから、今日のアレを、周りにお構いなしにやってたわけ?」
「うん・・・・・・まあ、うちの陛下が今回の謁見を利用して懲らしめようとちょっとやらかしちゃって、ああいう事態に・・・・・・スマン」
「───上がアホだと部下が尻拭い大変だよねぇ」
「全くだ」
「あ、ロズ」
前世で散々やったわ、なんてぼやいているうちに、お風呂でさっぱりしてきたロズが部屋に戻ってきた。
服も着替えたようで、登城用の正装じゃなくなっていつもの騎士服だった。
そういえば僕は着替えてないな。今更だけど皺くちゃになっちゃう。
「僕も着替えたいな。着替えってあるの?」
「ああ、用意してあるが・・・・・・その前に」
「?」
「・・・・・・ああ」
風呂に入って綺麗になったらしいロズがおもむろに僕に近付き、抱きしめてきた。
僕は意味が分からずキョトンとしたが、スザクは何か気付いたようだ。
───ん? あれ?
「・・・・・・ロズ、結界の中にいる?」
「───やっと触れられた」
「やっぱりイヤなマーキングのせいだったか」
ぎゅうっと抱きしめられても拒否反応が出ない。
───え、それってそういうこと? お風呂で綺麗になったから?
「・・・・・・なんかソレって、僕が潔癖症っぽくない?」
「それくらいがいい。他所の野郎の匂いなんか纏ってたら俺はキレる」
「・・・・・・おーい、魔王降臨しそうだからセイリュウ、しっかり手綱握っとけな」
「えええ?」
微妙な感じになった僕をロズがそう言って、スザクは意味が分からないことを言った。
───僕が倒れてる間に何があったの?
考えても分からず、首を捻る僕をスリスリしまくるロズ。
スザクはソレを微笑ましそうに見ていた。
「暫しの平和だねぇ」
※語らいはもう少し続きますが、ロザリンドとスザクの会話の内容と被るところがあります。
ご了承下さい。(前世でのゲームの話とか)
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