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74 騎士は魔剣士団長と話す 2
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※引き続きロザリンド視点
「・・・・・・ところで、そのセイリュウ殿の様子なんだが───」
スザクが言い辛そうに言ってチラッと寝室の扉見る。
・・・・・・俺もなんと言っていいのか分からない。
あんな状態のセイリュウは初めてだったから。
「アレは無意識でやったんだろうな。しかも俺すらも拒絶した」
「その原因は───言わずもがなだな。・・・・・・悪い、俺達のせいだな」
「それ、まだその話を聞いてないんだが」
「ああ、話が逸れたからな。すまん」
俺達はお互い深い溜め息を吐くと、冷めてしまったお茶を飲み干した。
「アレな。本当はあそこまで接触を許すつもりはなくてだな・・・・・・」
「当然だ。それありきで仕組まれたモノだったらアレを始め関係者を皆殺しにするところだ」
そのせいで今、セイリュウを苦しませているのだから。
「うえぇ・・・・・・マジかよ。まあ、気持ちは分かるが。アレらには陛下もほとほと困り果てていて、今回の謁見で何か問題を起こせば、それを理由に処分をする予定だったんだ」
「それが予想外に接触をしてきて、慌てているって? 俺やルラック公爵も警戒はしていたがアソコまでとは思わず、後手に回ってしまったが」
そっちは一体何をしていたんだ?
そういう意味を込めてスザクを睨む。スザクも肩をすくめて溜め息を吐く。
「こちらでも近衛騎士や兵士達を増員して固めていたさ。なのにちょろちょろと抜け道を使って入り込んで来やがって、あのガキ」
嫌悪感丸出しで言い捨てるスザクに、本当にアレは嫌われているんだなと再認識した。
抜け道とは王城内の秘密の隠し通路のことだろう。
王族と宰相、大臣クラス。近衛騎士の一部の者しか知らされない。
腐っても王族だからアレらも知っていて不思議ではない。
スザクも知らされているだろうが、そんな秘密の通路にあからさまに騎士を配置するわけにいかないだろう。
「だが隣国の国王の従兄弟であり魔導師団長という肩書きを持ち、加えて公爵家次男で第三騎士団長の婚約者であるセイリュウ殿を間接的にだが害したんだ。罪状は明白だ。立派な不敬罪にあたる」
そう、あのあとすぐにユリアナはその場で近衛騎士達に拘束され、貴族牢へと入れられた。
その旨はすでに大公家に早馬で伝えられ、今頃大慌てでこちらに向かっていることだろう。
いくらホウオウ陛下の甥とはいえ、何の役職もない成人したばかりの大公子息と、隣国の大公子息で魔導師団長という肩書きのセイリュウとでは身分が違う。
しかし成人しているということで負う責任は自分にあるわけだが・・・・・・。
そこら辺を分かっていない時点でダメだろう。
すでに親に揉み消して貰う範ちゅうを越えている。
「・・・・・・結局のところ俺達をダシにしたってことだろう? 被害はかなり大きいが」
「そうなんだが、陛下がなぁ。いくら止めてもこの際だからと聞かなくてなぁ。いや、マジすまん!」
そう言って両手を合わせて頭を下げるスザクに溜め息を吐く。
「それはセイリュウ本人に謝って許しを請え」
「・・・・・・そうだな」
───問題はどうやって近付くか、なんだよなぁ。
あのとき、倒れたセイリュウをすんでのところで支えたが、何故か腕にワンクッションあって、よく見るとセイリュウの全身には薄い膜のような結界が張られていた。
それを見て、直前に差し伸べた手を振り払われたことを思い出す。
・・・・・・拒絶。
俺に触れられたくないと、とっさに張ったとしか思えなかった。だが俺はそのショックを隠して案内された離宮のベッドに寝かせた。そのとたん、ベッドを中心に結界が広がって俺は弾き出されたんだ。
それを目の当たりにしたスザクも呆然としたモノだった。
「───マジ凄えんだけど。え? アンタ婚約者だよな? 彼氏に溺愛されてんだよな?」
「俺も溺愛してるが?」
「いやそうじゃなくて、えーと、つまり、それなのに拒絶されたって・・・・・・コレって俺達のせい、だよな、たぶん? ていうか絶対?」
「・・・・・・よく分かってるじゃないか」
この状態になったのがあのユリアナのせい以外に何があるというんだ。
ショックで己の殻に閉じ籠もってしまったとしか思えない。
俺とお祖父様のせいもあるだろうが・・・・・・。クソ、謁見の前に無理にでも話をしておけば傷は浅かったかもしれないのに。
いや、こうなれば傷付けると分かっていたのだから、その前に元凶を徹底的に排除しなければいけなかったんだ。
ズモモモッという効果音がつきそうなほどのドス黒いオーラを放つ俺を見たスザクが・・・・・・。
「うへぇ・・・・・・マジヤベえ。ガチ闇堕ち寸前じゃん」
そう呟くのをギロッと睨んでおいた。
「うヘぇ・・・・・・。セイリュウ殿、早く目を覚まして、一刻も早くこの猛獣を宥めてー!」
───アンタも一度〆てやろうか?
今でも定期的に行われる我が騎士団の地獄の訓練を絶対にやらせてやろうと心に誓った。
※次話はセイリュウ視点になります。
今さらですが、基本的にサブタイトルで『魔導師~』はセイリュウ視点、『騎士~』はロザリンド視点です。サブタイトルの冒頭の『○○~』で視点が変わりますので、よろしくお願いします。
「・・・・・・ところで、そのセイリュウ殿の様子なんだが───」
スザクが言い辛そうに言ってチラッと寝室の扉見る。
・・・・・・俺もなんと言っていいのか分からない。
あんな状態のセイリュウは初めてだったから。
「アレは無意識でやったんだろうな。しかも俺すらも拒絶した」
「その原因は───言わずもがなだな。・・・・・・悪い、俺達のせいだな」
「それ、まだその話を聞いてないんだが」
「ああ、話が逸れたからな。すまん」
俺達はお互い深い溜め息を吐くと、冷めてしまったお茶を飲み干した。
「アレな。本当はあそこまで接触を許すつもりはなくてだな・・・・・・」
「当然だ。それありきで仕組まれたモノだったらアレを始め関係者を皆殺しにするところだ」
そのせいで今、セイリュウを苦しませているのだから。
「うえぇ・・・・・・マジかよ。まあ、気持ちは分かるが。アレらには陛下もほとほと困り果てていて、今回の謁見で何か問題を起こせば、それを理由に処分をする予定だったんだ」
「それが予想外に接触をしてきて、慌てているって? 俺やルラック公爵も警戒はしていたがアソコまでとは思わず、後手に回ってしまったが」
そっちは一体何をしていたんだ?
そういう意味を込めてスザクを睨む。スザクも肩をすくめて溜め息を吐く。
「こちらでも近衛騎士や兵士達を増員して固めていたさ。なのにちょろちょろと抜け道を使って入り込んで来やがって、あのガキ」
嫌悪感丸出しで言い捨てるスザクに、本当にアレは嫌われているんだなと再認識した。
抜け道とは王城内の秘密の隠し通路のことだろう。
王族と宰相、大臣クラス。近衛騎士の一部の者しか知らされない。
腐っても王族だからアレらも知っていて不思議ではない。
スザクも知らされているだろうが、そんな秘密の通路にあからさまに騎士を配置するわけにいかないだろう。
「だが隣国の国王の従兄弟であり魔導師団長という肩書きを持ち、加えて公爵家次男で第三騎士団長の婚約者であるセイリュウ殿を間接的にだが害したんだ。罪状は明白だ。立派な不敬罪にあたる」
そう、あのあとすぐにユリアナはその場で近衛騎士達に拘束され、貴族牢へと入れられた。
その旨はすでに大公家に早馬で伝えられ、今頃大慌てでこちらに向かっていることだろう。
いくらホウオウ陛下の甥とはいえ、何の役職もない成人したばかりの大公子息と、隣国の大公子息で魔導師団長という肩書きのセイリュウとでは身分が違う。
しかし成人しているということで負う責任は自分にあるわけだが・・・・・・。
そこら辺を分かっていない時点でダメだろう。
すでに親に揉み消して貰う範ちゅうを越えている。
「・・・・・・結局のところ俺達をダシにしたってことだろう? 被害はかなり大きいが」
「そうなんだが、陛下がなぁ。いくら止めてもこの際だからと聞かなくてなぁ。いや、マジすまん!」
そう言って両手を合わせて頭を下げるスザクに溜め息を吐く。
「それはセイリュウ本人に謝って許しを請え」
「・・・・・・そうだな」
───問題はどうやって近付くか、なんだよなぁ。
あのとき、倒れたセイリュウをすんでのところで支えたが、何故か腕にワンクッションあって、よく見るとセイリュウの全身には薄い膜のような結界が張られていた。
それを見て、直前に差し伸べた手を振り払われたことを思い出す。
・・・・・・拒絶。
俺に触れられたくないと、とっさに張ったとしか思えなかった。だが俺はそのショックを隠して案内された離宮のベッドに寝かせた。そのとたん、ベッドを中心に結界が広がって俺は弾き出されたんだ。
それを目の当たりにしたスザクも呆然としたモノだった。
「───マジ凄えんだけど。え? アンタ婚約者だよな? 彼氏に溺愛されてんだよな?」
「俺も溺愛してるが?」
「いやそうじゃなくて、えーと、つまり、それなのに拒絶されたって・・・・・・コレって俺達のせい、だよな、たぶん? ていうか絶対?」
「・・・・・・よく分かってるじゃないか」
この状態になったのがあのユリアナのせい以外に何があるというんだ。
ショックで己の殻に閉じ籠もってしまったとしか思えない。
俺とお祖父様のせいもあるだろうが・・・・・・。クソ、謁見の前に無理にでも話をしておけば傷は浅かったかもしれないのに。
いや、こうなれば傷付けると分かっていたのだから、その前に元凶を徹底的に排除しなければいけなかったんだ。
ズモモモッという効果音がつきそうなほどのドス黒いオーラを放つ俺を見たスザクが・・・・・・。
「うへぇ・・・・・・マジヤベえ。ガチ闇堕ち寸前じゃん」
そう呟くのをギロッと睨んでおいた。
「うヘぇ・・・・・・。セイリュウ殿、早く目を覚まして、一刻も早くこの猛獣を宥めてー!」
───アンタも一度〆てやろうか?
今でも定期的に行われる我が騎士団の地獄の訓練を絶対にやらせてやろうと心に誓った。
※次話はセイリュウ視点になります。
今さらですが、基本的にサブタイトルで『魔導師~』はセイリュウ視点、『騎士~』はロザリンド視点です。サブタイトルの冒頭の『○○~』で視点が変わりますので、よろしくお願いします。
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