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66 魔導師と隣国の魔剣士 3
しおりを挟む次の朝、何事もなく出発の時間となり、宿の前に付けた馬車に乗り込もうと宿の外に出たら。
「せーりゅーさまー!!」
「あっ、コラ!!」
宿の周りを離れたところで大勢の人が囲んでいて、その中に昨日の孤児院の子と神官を見つけた。
ソレに手を振って笑いかければ、ザワザワと驚きの声が波のように広がっていった。
「・・・あれ? 何かやらかした?」
「・・・・・・いや、そう言うわけではないから大丈夫だ。馬車に乗ってくれ」
「え、うん」
ロザリンドに促されてそそくさと馬車に乗り込むと、今度は窓から軽く手を振ってあげた。
するとまたザワザワ・・・。
「---えーと、ごめん?」
向かいの席でロザリンドが頭が痛いとばかりに手で押さえているのを見て、思わず謝る。
・・・意味が分からず疑問形だが。
「・・・いや。思ったよりもお前は好かれてるな、と」
「? うーん、レグルス父様の子だって知られる前からあちこち仕事で飛び回っていたから、皆、顔見知りなんだよ、実は」
「・・・セイリュウがボロ雑巾のような見た目の頃から?」
「---うっ、言い方・・・いや、入団した当初から回ってるから、たぶん急に大きくなった俺に驚いたんじゃない?」
「・・・・・・なるほど? まあ、そういうことにしておこう」
実際は保護者目線で『大きくなって良かったなあ』とか『美人さんだった』とか『まさか王族だったなんて、気安くしてて不敬罪だっていわれないかな』という心配が大半だったのだが。
そんな感じでまったり進み、順調に二日目の宿にも泊まって、三日目。
セイリュウ一行は隣国との国境の大門に昼前に着いた。
「---お待ちしておりました、フォルレイク国魔導師団長殿! 第三騎士団長殿! ようこそリヴァージュ王国へ。これよりはルラック公爵家の私設騎士団がご案内致します!」
大門で通行手形を検めて馬車の中のセイリュウとロザリンドを窓越しに確認する騎士らしき人物。
次の瞬間、ザッと敬礼をしてそう言われたので、セイリュウはにこっと微笑むだけに留めた。
内心は大きな声に驚いて声が出なかっただけなのだが。
そして静かに進み出した馬車の中で、セイリュウはロザリンドに尋ねた。
「公爵家・・・・・・お祖父様のお家の騎士団って、お祖父様が凄い人だから団員達も凄そうだね。ロズは知ってるの? どんな感じ?」
「・・・・・・さっきの騎士のように、熱血漢が多いように思う・・・。セイ、驚いたろう? 別に彼等に気を使って愛想笑いなんかしなくてもいいんだぞ?」
「・・・・・・ハハハ、バレたか。うん、でも、これから家族になるお家の人達とはなるべく仲良くしたいかなって。別に気を使ってる訳じゃなくて、慣れれば良いなと思って。・・・・・・僕って最近ちょっと人慣れしてなかったから・・・」
リハビリ、リハビリ!
そう言って笑うセイリュウが愛おしい。
自分のためだけじゃなく、俺の為でもあるのだろう。
その心が嬉しくて、公爵家に着くまで馬車の中はほのほのとした空気に包まれていた。
※遅い上に短いです、スミマセン。
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