癒しが欲しい魔導師さん

エウラ

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55 騎士は魔導師に打ち明ける

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「それで、ロザリンドのお祖父様として今日はこちらにいらしたんですか?」

セイリュウがおもむろに切り出した。
そもそも、今ロザリンドに会いに来た理由がセイリュウには全く分からないからだ。

ちらっとロザリンドを窺うと、ロザリンドは分かっているのかルラック公爵・・・お祖父様と目で語っているようだった。

口を開いたのはルラック公爵だった。

「・・・そうですね。ロザリンドとセイリュウ様が婚約したとレグルス様から連絡を頂いて、それで様子を窺いに来たのです」

その後を継ぐようにロザリンドが躊躇いながら話し出した。

「・・・・・・セイリュウ、実はルラック公爵家には今、後継者がいないんだ。さっき話したように身重の母がこちらに後妻で嫁いだために、本当ならばルラック公爵家の血を引く俺が後継者だったが、無理になってしまって」
「うん、書類上はオーディン公爵家の次男だもんね」

おそらく実子として届を出してあるんだろう。
王女である母親の瑕疵にならないように。
セイリュウだって、打ち明けられなかったら疑うことは無かった。

せいぜいが母親似なんだろうな、くらいだ。

「だが、最初からオーディン公爵家は義兄が継ぐ事が決まっているし、もし義兄に何かあってもオーディン公爵家の血筋から養子を迎える話になっているから、俺自身は騎士になって身を立てようとして、今があるんだ」

なるほど。
そんな理由があったんだ。

確かに家を継ぐ予定が無いなら、何か別のことで爵位を貰うなりして独立したいよな。
騎士爵なら一代限りでも自分だけなら十分だし。

うんうんと頷いていると、次にルラック公爵が話し出した。

「そこでロザリンドは本来わがルラック公爵家の血筋なので、私の養子になってルラック公爵家を継いで貰いたいと話をしたら、色々と片付いたら良いということになって・・・」
「・・・色々・・・?」

セイリュウが色々のところに引っかかった。

「何か問題でもあったの?」

セイリュウがそう言うと、ロザリンドだけで無くルラック公爵もはぁ---っと深い溜息を吐く。

何故?

「・・・・・・セイリュウ様は、本当に何というか」
「・・・こういう人だから。・・・俺の苦労、分かってくれますか?」
「確かにこれでは、諸悪の根源を根絶やしにしないと安心できないな」

何やら二人でこそこそと話し始めてしまい、まあおじいちゃんと孫だしなあと気にしないことにした。

その後も何か二人で相談事をし始めてしまい、すっかり手持ち無沙汰になってしまったセイリュウは異空間収納魔法インベントリからお茶とお菓子を取り出し、一人でもきゅもきゅと食べ始めてしまった。

それに気付いて二人がセイリュウをちらっと見たが、セイリュウは気付かずにたくさん焼き菓子やケーキを頬張り、リスの頬袋のように膨らませた可愛い顔を見せた。

「・・・可愛らしいな、セイリュウ様は」
「でしょう? ずっと構いたくなって・・・」
「ほどほどにしないと嫌われるぞ?」
「・・・大丈夫・・・・・・だと、思いますが・・・」
「ふっ、お前のそんな顔、初めて見た」

---本当にベタ惚れだな。

孫の嬉しい変化に頬を緩めるルラック公爵だった。

その後も二人でつい夢中になって話し込み、いつの間にか静かになったセイリュウ。
気付いたときには、お腹いっぱいになってソファに倒れ込んで穏やかにうたた寝をしていた。

それを見て、気の許せる場所や人が少しでも増えるように尽力しようと誓った二人だった。







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