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48 魔導師と騎士は挨拶に行く
しおりを挟むセイリュウが職場見学で熱を出してから一週間後、辺境地の神殿に転移で向かうことになった。
もちろん、俺とロザリンドの婚約の報告の為だ。
先週、職場見学と称して例の転移魔法陣の描かれた部屋を見せて貰った。
そこでバッチリ魔法陣を記憶し、頭の中で色々と考えて組み立て直していたのだ。
あーでもないこーでもない、これは不要・・・等と考えていたせいでまた知恵熱が・・・・・・。
記録紙に頭の中の出来上がった魔法陣を魔法で転写し終えた途端にぶっ倒れました。
うんうんと魘されていた俺を看病してくれたのは当然の如くロザリンドでした。
「ほどほどにお願いしますよ・・・」
と、目覚めた瞬間に呟かれた。
またしても心配をかけていたようで、スミマセン。
そして過保護な保護者達に当然のようにベッドから出る事を禁じられて今日、ようやくオッケーが出たと思ったら・・・。
「一週間くらい辺境地の神殿に里帰りしようか。レグルス様にも婚約のご報告を兼ねて。向こうでゆっくりとしよう。転移魔法陣は仕上がってるから、公爵家からこっそり行ってこっそり帰れば問題ない」
「・・・あー、うん、たぶん防犯に引っかからずにちゃんと転移できるはず・・・。でも急だね?」
「---まあ、レグルス様が早く会いたがっているから」
実際、転移魔法陣はレグルスが改良していてすでに転移出来るのだが、それをセイリュウは知らないので、やはり知識チートで更に簡略化して魔力消耗も極力減らしたモノを作っていた。
試しにとロザリンドが何度か試してみた結果、レグルスもセイリュウの魔法陣を使うようになり、この間寝込んでいたときには毎晩転移してきたのだが、セイリュウは気付いていない。
「父様が?」
「ああ、寝込んだ事を報告したら心配してね」
「・・・小さい時は知恵熱で結構寝込んだからなあ。もう大人なのに・・・」
思わずスンッとしてしまった。
せっかく大人サイズになったのにこの体たらく・・・。
「まあまあ、急に成長して体が驚いているんじゃ無いか? じきに落ち着くだろう」
「そうだね! そう思っておこう!」
「じゃあ、転移しようか。大丈夫?」
「うん。じゃあお願いします」
今回はロザリンドに転移を御願いした。
俺はまだ本調子じゃ無いから、念の為使わないようにって言われたので。
確かに何かあって向こうで魔力譲渡の為にあんなコトやこんなコトをレグルス父様のいる神殿でヤルのはちょっと・・・・・・。
そういうわけで、ロザリンドがぱぱっとやってくれました。
あっと言う間に見慣れた、でも懐かしい空間に出た。
俺の部屋だ。
4年間帰れなかった部屋は当時のまま。
あの日、読みかけの本。
花瓶の花はさすがに取り替えられているけど、何も変わっていない。
「・・・・・・帰ってきたんだ。僕、本当に・・・・・ここに帰れた・・・」
「セイ、大丈夫か?」
いつの間にか涙を溢していたようで、ロザリンドの大きな掌が俺の頬を包んでいた。
「ん、大丈夫・・・。懐かしくて、嬉しくて・・・」
「---セイリュウ? お帰り」
不意にロザリンドではない声がして。
振り向けば、そこには変わらない姿のレグルス父様が・・・。
「---レグルス父様!!」
「お帰り。待ってたよ、私の愛しい子」
「ーっただいま!」
ロザリンドがそっと離れて俺を押してくれたから、俺は嬉しくて駆け寄って、その胸に飛び込んでぎゅっと抱き締めた。
レグルス父様もぎゅうっと抱きしめ返してくれて・・・。
ようやく、帰ってきた実感が湧いてきたんだ。
暫く、ぼろぼろと泣いて縋った。
ロザリンドは苦笑しながらも見守ってくれていた。
※遅くなりました。
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