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34 宮廷魔導師団は混乱する
しおりを挟むセイリュウとレグルスが芋掘りをしていた頃、宮廷魔導師団ではすでに業務が滞っていて、徹夜をしても仕事が回らない状態が続いていた。
中には体調を崩して倒れ、医務室に運ばれる者も。
治癒魔法を使える者はちまちまと魔法を使って回復しているが、それもすずめの涙ほど。
どんどん人が減って処理が滞り、更に体を壊してまた仕事が回らない・・・という悪循環。
これをセイリュウがワンオペでおよそ4年間。
如何にバケモノじみているか、魔導師達はそれを身を以て思い知ったのだった。
「こんなこと、もうやってられるか! 出来るわけ無いだろう?!」
「隊長、来月からの演習ですが、候補地とか人員とかどうなっているんです?!」
「知るわけ無いだろう?! お前がやれよ!」
「私は別の仕事があるんですから無理ですって!」
「じゃあそこのお前」
「別案件中で無理です!」
「あああ---!! どうすりゃ良いんだよ」
魔導師達は自分の事で精一杯だった。
大体セイリュウだって食事や睡眠時間を削ってアレだったのだから。
それからしたら遥かにヌルい仕事量なはずだが、今までセイリュウに押し付けていたツケが回ってきたのだ。
そもそも書類の書き方もろくに出来ない状態で内容を理解しろという方が無理なのだ。
「---本当にダメダメですねえ。そんな貴方方に助っ人を呼んできました」
「・・・おおっ! この際何でも構わん! 何人でも良いから手伝わせろ!」
「ではこの書類にサインを御願いします」
「そんなことで良いのか?! 構わん。寄越せ!」
そういって事務官の指し出した書類にサインをする。
事務官はちゃんとサインが書かれていることを確認して満足に頷いた。
「確かに。では人員を投入しますね。じゃあ皆さん、御願いします」
そういって廊下に声をかけた。
すると入ってきたのは魔導師達の倍はいる人数。
見た目は普通の文官のようだが・・・。
「はいはい、一人の魔導師につき二人の手伝いが付きます。付き添う助っ人は書類の整理に慣れた者ですので安心して任せてくださって結構ですよ」
文官が手際良く魔導師達の机に移動して仕事を引き継いでいく。
「・・・はあ、やっとひと息吐ける」
「何なら宿舎にお戻りになって構いませんよ」
「---なら、疲れたからもう休む・・・任せた」
「ええ、お気をつけて!」
一人がそういって出て行くと、我も我もと後に続く魔導師達。
それをにやりと事務官や文官達が見送っていることなど気付かずに・・・。
そうして数日、魔導師達が宿舎や自宅で泥のように眠って休んでいる間に、宮廷魔導師団は実質乗っ取られた。
・・・誰に?
あの時事務官が連れて来ていた文官もどきは、多くは平民から募ったれっきとした魔導師で書類仕事もキチンと教わった優秀な者達。
更には隣国リヴァージュから密かに送り込まれた魔導師達も加わり、宮廷魔導師団を内側から吸収したのだった。
十分に休養を取った元魔導師達は職場に来て唖然とした。
「・・・・・・っど、どういう事だ?! 何故我らが追い出されねばならん?!」
「ええ? だって書類にサインしていましたよね、ほらここに」
「---?! た、確かにしたがっ!!」
「じゃあ仕方ないですよね? 居たって仕事も出来ない人達を雇う意味がないですもの」
「「「---!!」」」
元魔導師達は国王の玉璽の押された書類に文句も言えずに、顔を真っ赤にして去って行った。
書類には『全ての権限を王太子殿下に委ねる』と記載されており、それにより王太子殿下は仕事の出来ない魔導師を全員首にし、新たに平民の魔導師や隣国の魔導師を雇用したのである。
これによって、腐った魔導師団は新しく生まれ変わったのである。
この裏には、王宮事務官と第三騎士団副団長補佐の尽力があったことを付け加えておこう。
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