癒しが欲しい魔導師さん

エウラ

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32 魔導師は未来に思いを馳せる

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あれから採寸をして貰って、とりあえずはロザリンドの小さくなった服を詰めて貰い、着ることにした。

ロザリンドはじめ、邸の皆には申し訳無さそうにされたが。

前世日本人で、そもそも社畜で身の回りに気を使う事が無かったセイリュウにしてみれば、お古とはいえ布地は上質だし、ろくに袖を通していないような新古品と変わらない状態なので、喜んで着ていた。

「僕は気に入ってるよ。ロズの着ていたものでしょ?」
「そ、そうか?」
「うん。でもお金を使うところは使わないと、経済が回らないもんね。だから貴族として色々不要と思っても、使うべきところは使わないとって、分かってるから。その辺りは僕は詳しくないけど、任せるよ。あー、でも宝飾品とかは最低限必要で僕が気に入ったらにして欲しいな」

贈る気満々だったらしいロザリンドが怪訝そうな顔になった。

「・・・何故、と聞いても?」
「ああ、うん。元々持ってないから身に着けると違和感がっていうのと、気に入ったモノならずっと付けてても良いかなと。あの・・・ロズの色とか・・・?」
「---え」
「・・・・・・」

それって、自分の色を相手に身に着けさせる意味を分かってて・・・?

見ると耳まで真っ赤になったセイリュウが・・・。

「ああ、選ぶときは一緒に・・・な」
「・・・・・・ん」

今から楽しみだ。
そうロザリンドが笑った。

「じゃあ、とりあえず、コレ用意して貰いたい物」
「ああ、父上に頼んでおこう」
「魔石はインベントリにいっぱいあるから大丈夫。後でロズ、選んでくれる?」
「? 構わないが。とりあえずメモを渡してくるから待ってて」
「いってらっしゃい」
「ああ」

・・・いってらっしゃいなんて、新婚さんみたい!
きゃー?!

・・・なんておバカな事を考えてたらさっさと戻ってきたロザリンド。
俺の顔を覗き込んで言った。

「顔が赤いぞ。熱でも出たか?」
「うえっ?! だ、大丈夫だよ」

すかさず抱き上げようとするのを慌てて阻止して、テーブルにごろごろと魔石を出す。

「じゃあ、ロズ、この中から僕に似合う魔石選んでくれる? 魔導具の媒体にするから。あと、ロズのは僕の変装魔導具の無効用の魔導具に使うからそれは僕が選ぶね?」
「え、セイのを俺が選んで良いのか?」
「どれもほとんど性能は同じだから、色くらいロズの好きなのが良いな・・・なんて・・・」
「・・・・・・」

お互い、赤くなった。
むっつりスケベと恋愛初心者が揃うとダメだなあ・・・?!

もじもじしながらああでもないこうでもないと数ある魔石からじぶんたちの色の魔石を選ぶと、公爵と夫人とロザリンドの兄、レグルス父様の分も選ぶ。

「・・・何故、父達の分も?」
「だって、魔導具で姿を変えても、家族にはちゃんと本当の姿で接して貰いたいじゃない?」
「・・・・・・家族・・・そうだな、俺達はもう家族だもんな! ありがとう、父達も喜ぶよ」
「えっあっ・・・うん」

思わずカアッとなって俯いた。

いつの間にか公爵達も家族のつもりでいたから、自覚してびっくりした。
でも、いつかロザリンドと結ばれたら・・・。

そう遠くない未来に起こるかもしれない出来事に思いを馳せたセイリュウだった。


そしてそれはきっととても幸せなこと。




※ちょっと短めですが、キリがいいので。
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