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31 隣国も暗躍する
しおりを挟むここはロザリンドの母である末王女の生国である隣国リヴァージュの王宮である。
ここにロザリンドの今後に関する一報が齎されたのは4年前。
そう、セイリュウが命懸けで止めた辺境地の人為的スタンピードの後。
末王女を後妻とするにあたってここの王家とすでに交流があったオーディン公爵家は、義息子ロザリンドの成長を定期的に報告していて、この頃すでに辺境の神殿に神官長として住んでいる王弟殿下やその実子セイリュウの事も秘密裏に相談していたのだ。
なんせ自国の可愛い末王女の嫁ぎ先である。
不穏なモノは少しでも排除したい。
亡き護衛騎士の両親は公爵家だが他に子が無く、本来ならば末王女の産んだロザリンドが跡取りだったので、本人が同意してくれるならば実の孫だが養子縁組をして引き取り,後を継いで貰いたいと思っていた。
その事もあって密に連絡を取っていたのであるが。
そのロザリンドが関わったセイリュウ殿があろう事か事件の直後に意識不明のまま攫われ、無理矢理宮廷魔導師にされたと影から連絡が入ったのだ。
まだたった14の未成年を拐取したという。
ロザリンドは怒り心頭だという。
どうやら一目惚れしたらしいが、本人は色恋沙汰に疎く、無自覚らしい。
元々王弟殿下やセイリュウ殿を手助けするつもりで影ながら動いていたが、ロザリンドが関わったことで大義名分を得た。
とにかくあの国の上層部は腐っている。
これを機に、王太子に世代交代して頂こう。
公爵家を通じて密かにあの国の膿を出して綺麗にしてしまおう。
「・・・ルラック公爵、事が落ち着けばあの子は養子縁組を快く受けると言っているそうだが、どうかな?」
「は、有難きお言葉。我らルラック公爵家はリヴァージュ国王に忠誠を誓っております故、何とぞ我らを御自由にお使いくださいますよう」
「うむ。その心意気しかと受け取った。では手始めに、影を数人オーディン公爵家に差し向けよ。もっと密に連絡を取り合わねばな」
「畏まりましてございます」
こうして国王と公爵は、時間の許す限り策略を練るのであった。
あれから4年。
影ながら見守っている事しか出来ず、大手を振ってセイリュウ殿を手助けできない歯痒さの中、とうとうセイリュウ殿が倒れたとの一報が入る。
聞けば長年の栄養失調に無理な仕事量で魔力回路はぼろぼろ、体もろくに成長しないまま、骨と皮だけのようだったと。
ロザリンドが魔力譲渡をしなければ儚くなっていただろう。
だが、そのお陰で二人は実は相思相愛だった事が分かり、今は恋人同士になったとのこと。
それは良かったが、クズ共は許すまじ。
オーディン公爵家も王弟殿下も、我が国も。
仕返しは存分にさせて頂く。
倍返し?
甘い甘い。
この世の地獄を見せてやろう。
国王とルラック公爵は黒い笑みを浮かべる。
姿は見せないが影達も同じだろう。
影は特に、二人が小さい頃からロザリンドとセイリュウ殿を見ている。
我が子のような、我が孫を見るような心境で日々見守っていたのだ。
さあ、覚悟して貰おうか。
お前達を追い落とす材料は揃っている。
首を洗って待っていることだな。
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