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28 魔導師はお芋堀りをする
しおりを挟む午睡から覚めた後。
何故か料理長がロザリンド(とセイリュウ)の部屋にきた。
・・・ん?
俺に用事?
「セイリュウ様のお好きな蜜芋とタロ芋の料理をお伺いしたく・・・」
「ん? 何故? そりゃあ物心つく前から食べてる好物だけども」
「それがその・・・」
言い淀む料理長に二人揃って『??』マークを浮かべて。
料理長に案内されて向かった先には・・・。
えっさえっさと芋を収穫するたくさんの使用人達。
そして結構な範囲で庭を埋め尽くす芋畑・・・畑?!
「・・・えーと・・・?」
もしかしなくてもアレですか?
【神の愛し子】の祝福---!!
やらかしたよね? ね?
まーじーかー・・・・・・。
じゃあ責任とらないとね・・・。
「というわけで、はい。皆さん退いて下さーい。良いですね? いきますよ! そーれ!」
セイリュウが両手を空に向かって下から持ち上げた。
いわゆる『万歳』である。
かけ声と共に行った動作に合わせて、蜜芋がぼわっと土から出て持ち上がった。
「---は?」
「はいはい、次、タロ芋ね---!! あ、そーれ!!」
ずぼっと持ち上がったタロ芋。
めちゃくちゃデカい。
「うんうん、豊作だねえ。美味しそうだねえ」
「・・・セイリュウ?」
「うん? ・・・ああアレ、辺境で定番の僕が考案した芋掘り魔法。楽ちんで便利でしょ?」
「・・・・・・もしやレグルス様も・・・?」
「もちろん使ってるよ? むしろ芋農家で使っていない人の方がもぐりだよ?」
公爵家の使用人達がポカンとする中、セイリュウは魔法を無駄遣い・・・ケホン、駆使して芋を集めて水魔法で土を洗い落とす。
其れを風魔法で乾かしてどんどん籠に詰めていった。
「ねえ、これ厨房まで運ぼうか?」
セイリュウが庭師さんに声をかける。
皆が我に返った。
「---はっ、いやいやそれくらいは私共にさせて下さい! ありがとうございます!」
「そ? どういたしまして。あ、僕、シンプルに焼き芋やふかし芋が好きだなあ。スイートポテトも好きだし、フライドポテトもカリカリほこほこで美味しいんだよねえ・・・」
「ではその様に料理をいたしましょうか。楽しみにお待ち下さい」
「うん、待ってる」
そういって皆が去って行った後、見るも無惨な有様の畑・・・いやいや元庭をセイリュウが指パッチンであっと言う間に戻した。
「今のは・・・」
「ん? ああ『復元』魔法。別に指パッチンする必要ないんだけど、魔法行使したって分かるように?」
「・・・以前、万年筆をへし折った後に直していた魔法か」
「---うげ、しっかり見てたんだ? そういえばあの時、ロズ、ビックリしてなかった?」
「ああ、いや、急にベキッと音が聞こえたので視線を向けたらセイリュウの手の中の万年筆が折れてたのが見えて、思わず二度見を・・・」
ああ、確かにこんなひ弱な腕で折れたら驚くわ。
ははは、と空笑いした。
「さあさあ、他も直しちゃおう!」
誤魔化すように庭中を魔法で直し終わる頃には料理長がお芋の調理を終えたようで、夕ご飯は芋三昧。
特に普通の焼き芋やふかし芋はめちゃくちゃ甘くてほこほこで最高でした!
手の込んだものももちろん美味しいけど、素朴な料理が辺境を思い起こさせて、ちょっと涙が出た。
さてさて、再びお風呂タイム!
昼間はアレだったが、夜は一人で・・・と思ってたのに、やっぱり疲れが出たようで、すでに半分近く意識は夢の中。
危ないからと、結局ロザリンドと入浴する羽目になった。
さすがにお触り禁止である。
「---はー、幸せ」
ロザリンドに抱えられて湯船に浸かると、もうどうでもいいやって思っちゃう。
「それは良かった」
クスッと笑ってロザリンドが軽く抱き締めてくる。
それを気持ちいいなと、腕に頬擦りする。
まさかこんな未来があるとは思わなかった。
この4年間で未来も希望も擦り切れて無くなっちゃって、このまま、前世と同じように孤独に死ぬんだと・・・。
せっかく生まれ変わったのに、優しい両親の元、愛されたのに。
どんどん心が冷えていって、その内何も感じなくなって。
でも掬い上げてくれた。
俺はこんなにもたくさんの人に愛されてたって思い出させてくれたロザリンドに、父様達に・・・。
感謝の言葉だけでは言い表せない。
でも、あんまりアレだとまたやらかしちゃうから。
「・・・セイ?」
「んー? なんでもないよ」
どうせなら、止まっちゃってた俺の肉体の4年間の成長をゆっくりで良いから戻して欲しいかな。
せめてロザリンドと釣り合うくらいには大きくなりたい。
・・・なんてな。
---この願いがフラグだということに気付くのは後もう少し。
※書き終わらず、遅れました。
次話も遅いかもしれません。
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