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25 魔導師は秘密を暴露する
しおりを挟むそれからはレグルス父様がかいつまんで話をしてくれた。
5歳の祝福の儀で【神の愛し子】と【魔法】の二つの祝福を受けたこと。
【魔法】の紋様は見えやすいところにあったのでそちらを強調して【神の愛し子】の祝福を誤魔化していたこと。
『何故なら【神の愛し子】の祝福を受けた者の末路を知っているからだ。公爵も知っているんじゃないか?』
レグルスの問いに渋い表情のネレイド。
「---ええ、存じております。・・・生きているだけで祝福の恩恵を周りに齎す。つまりは、本人の意志に関わらず常に常時発動するということを」
『そうだ。そしてそれが問題だった・・・だろう?』
「そうです。【神の愛し子】本人の幸不幸は関係ないのです。故に過去、強欲な国や貴族に囚われ囲われ、監禁や凌辱、中には血肉にも恩恵が宿ると躰を損壊させられた者もいたとか・・・」
それを聞いて俺は全身が震えるのを止められなかった。
それってカニバリズム・・・?!
人魚伝説じゃあるまいし、勘弁して欲しい。
レグルス父様に聞いてはいたけど、怖すぎる!
ガタガタ言うほど震えている俺の体をぎゅっと抱き締めてロザリンドがちょっと怒りながら言った。
「父上、セイリュウが怯えてしまっています。その辺で止めて頂きたい」
「あ、すまん。そうだよね、当事者には酷な話だった。だがそれだけ諸刃の祝福だということは分かって欲しい」
「・・・分かります。大丈夫、です。怖かっただけで・・・」
公爵の言葉に俺は強ばりながら返事を返した。
それにしても・・・。
「どうして今回は僕の気持ちに添ったのかな?」
俺は思わず、疑問に思ったことを呟いていた。
それを聞いたロザリンドがセイリュウに聞き直す。
「そうだ、あれ、どうやったんだい?」
「ああ・・・。今、幸せだなーって思って、この幸せをくれた公爵家と辺境の神殿のレグルス父様に幸せのおすそ分けをして欲しいって神様にお願い?したんだよね。だから自分じゃやらかした感じは全くなくて・・・」
気付いたらああなってたってのが正解かな?
『・・・今までの【神の愛し子】は判明するとすぐに囲われてしまったから詳しいことは分からないんだけど、本来はそういうものなんだろう。やはり本人の幸せが大きく影響するんじゃないかな?』
聞いていたらしいレグルスがそう言ってきた。
うん、俺もそう思う。
最低限生きてれば良いって言うのはあんまりだもん。
きっと長い歴史の中で歪められていったんだろう。
『さて、【神の愛し子】の事はココにいる者だけで秘するように。さすがに今の状況じゃ知られるとマズい。そうだな・・・セイリュウは魔法に長けているから、緑の生育を良くする魔法を使って、ちょっと体調不良で暴走した・・・でどうだい?』
「・・・それは構いませんが・・・良いのかい、セイリュウ殿はそれで」
「ああはい、構いません。実際、植物生長促進の魔法はあります。辺境の地は作物が育ちにくいので、蜜芋やタロ芋を育てるのにちょっと考えて魔法陣も作ってました。美味しいんですよね、お芋のお菓子!」
涎でも出そうな顔だったのか、微妙な顔で見られていた事に気付き、恥ずかしそうに顔を覆ったセイリュウをほのほのと見て。
「ではそれで押し通します。そちらも大丈夫なんですね?」
『ああ、こちらもセイリュウがいるときは割と頻繁にやらかしていたから誰も気にしていない。大丈夫』
色々とやらかしてたんだ・・・と皆の視線が物語っている。
恥ずかしいよ、父様!!
暴露しないでよ!
「ところで【神の愛し子】の紋様は何処に現れていたんです? 倒れてからこちら、御世話させて頂いてましたが気付きませんでしたよ?」
それを聞いてセイリュウがあっと声を上げたが間に合わず。
『ああそれは・・・ロザリンドが知ってるんじゃないかな?』
「「え?!」」
「え? あ、ああ・・・あれ、そうだったんだ」
「うわーっ!!止めて止めて止めてー!!」
『ふふ、後でゆっくり確認すると良いよ。あ、あとね、そこの3人はお前が私の実子だと知っているから安心して良いよ。じゃあ、頼んだ』
「分かりました。お任せ下さい」
「ちょっと---!! 何、最後に爆弾投下していくんだよ、父様の実子って事よりもある意味ヤバい情報なんだけど---!!」
セイリュウの雄叫びによりわちゃわちゃしながら通信も終わり、一旦情報整理と対策を、という話になり・・・。
「---で、セイリュウ殿の紋様は何処に?」
やはり確認しないことには安心出来ないのだろうが・・・。
「---無理です、教えるのもちょっと・・・それに見せられないです」
顔を真っ赤にしているセイリュウに、何となく察しはつくが。
「・・・ロザリンド?」
「・・・右足の付け根の裏の辺りに、肌色と同化してましたが五芒星の中心に桔梗の花が・・・それが【神の愛し子】の紋様なので?」
「・・・・・・ああ、それは、うむ。確かに見せられないな。ロザリンドは何度も見・・・げふん。ああ、その紋様は王宮にも残る書物に書かれている。協会の紋様で神の紋様だ」
「肌色と同化していて良く分かったな」
不思議に思ってガラテアが聞いてきた。
「ああ、魔力譲渡の時に、肌が紅潮して浮かび上が「セクハラ発言ヤメロって言ってんだろ!!」・・・せく・・・?」
思わず叫んでロザリンドの頭をバシッと叩いた。
この石頭め!
俺の手の方が痛えよ!
そんでああ、またうっかり前世言葉が・・・ていうか心の声出過ぎだろ!
「面白いな、セイリュウ殿は。そっちが素かな? ここでは気にせず自由に過ごして良いんだよ。やっと年相応の様子が見られて嬉しいよ」
そういって笑うネレイドとガラテア。
そっか、少なくともこの3人は俺の祝福を知って、気を抜いても良いんだと言ってくれてる。
肩肘張って頑張らなくても良いんだと。
父様以外の場所でも、ほっと出来る場所なんだね。
ありがとう。
またホロリと涙が零れた。
この涙は掌の痛さだと誤魔化した。
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