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20 王太子も暗躍する
しおりを挟む私は父上・・・現国王陛下の長子で王太子のエドワードである。
私には叔父がいる。
父上の歳の離れた弟・・・王弟である。
歳は私の少し上で、今は辺境の神殿で神官長を勤めている。
その彼とは密かに連絡を取り合うほどの長い付き合いになる。
最初は好奇心からだった。
自分に近しい王族の血筋が『神託』の祝福とはいえ辺境の神殿に行くなど、おかしいなと。
しかしソレが王位継承問題解決の為と聞けば、幼くも申し訳なく思われた。
時々様子を窺ってみれば、王位には全く興味は無く、本当に神官として穏やかに過ごしていたのだ。
私には却ってソレが羨ましかった。
次期王として日々、厳しく躾けられ、教育を受けさせられ、自由な時間などほとんど無い。
寄せられるのは王太子としての期待。
個人の、エドワードとしての関心や愛情は薄かったように思う。
何時しか、レグルス叔父様にこっそりと影を送り、連絡を取り合うようになった。
拒絶されるかも、忌避されるかも・・・という不安を他所に、すんなり私を受け入れてくれた。
王太子ではなくエドワードとして・・・。
これがどれ程嬉しかったか。
父である国王はかなり選民意識が高い故に、国民を蔑ろにするような政策を好んでいた。
私は叔父に話をし、また話を聞かされて国民の為に何が良いかと議論することもしばしば。
叔父は身分に囚われない考えの方だった。
歳が近いことも有り、本当の兄のように慕っていった。
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実は叔父は、その侯爵令嬢を好いていたのだ。
偶然知った事だが、弟の婚約者となり、傷心で辺境の神殿に向かったらしいと。
今の侯爵令嬢と同じような状況だなと密かに苦笑いしたモノだ。
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・・・陛下は第二王子には甘い。
およそ19年前、辺境の神殿で幸せに暮らしていた元侯爵令嬢が悲劇に見舞われ、乗り越えて愛を確かめ合って生まれた愛息子を、今また失いそうになっている叔父の為に・・・。
私は助力を惜しまないつもりだ。
王宮への手引きはもちろん、腐りきった魔導師の貴族共や同じような選民意識の高い騎士団員共の排除・・・。
もちろん、その中には国王陛下も含まれますよ?
だから精々足掻いて下さいね。
「---王位など欲しいと思ったことは無いが、必要とあらば手に入れましょう。何、遅いか早いかの違いだ。・・・叔父の為に・・・」
今頃は父の寝室に忍び込んでいるだろう叔父を思って月明かりの元、ニヤリと笑う顔は兄と慕うレグルスにそっくりだった・・・。
「さあ、終わりの始まりです」
その部屋で付き従うエドワードの影は、気配を殺して主を窺っていた。
---奇しくも辺境のレグルスに過去、命を救われた元暗殺者。
レグルスを殺す依頼を受け、失敗し、逆に命を救われた。
その恩を返すため、エドワードに付き従っている。
エドワードもレグルス信者といっていい。
だからエドワードに従うのは引いてはレグルスの為となるのだ。
だからその為に命を賭けても良いのだが、彼の方はソレを良しとしない。
愛息子であるセイリュウ様が哀しむからだ。
レグルス様の愛する者は影にとっても護るべき者。
それはエドワードも同じだ。
二人は狂気にも似た敬愛をレグルスに捧げる。
もちろん他には知られてはいけない。
二人は普段、完璧に仮面を被っている。
・・・諸々の準備をしているうちに、割と同類が集まっていることには薄々気付いているが。
ここに来て漸く、反撃の狼煙が上がった。
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