癒しが欲しい魔導師さん

エウラ

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17 第三騎士団も焦る

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---セイリュウ殿が倒れた。


宮廷魔導師団に動揺が走った頃、時を同じくして第三騎士団にも激震が走った。

だが、こちらの反応は二つに分かれた。

セイリュウに恩ある者と、ロザリンドに恐怖する者だ。


前者は4年前に実際に命を救われた者やその者の家族親族で、後者はその場には居合わせなかった者、特に選民意識の高い貴族籍の騎士達だった。

恩ある騎士達は純粋に心配し、更には魔導師団に恨みを持っていた。
当然、セイリュウの酷い扱いも知っていて、何とか出来ないのかとロザリンドと共に密かに動いていたのだ。

それが間に合わず彼が倒れる事態となったのだから、それはそれは己の無力さと不甲斐なさで自責の念に堪えない。

直ぐさま副団長のロザリンドに連絡を取ると、信じられないほどボロボロの体で魔力枯渇になったという。

護衛していたロザリンドが公爵家に連れ帰り、治療にあたった為に命は助かったようだ。

ほっと一安心した。

そして後者は、最近までセイリュウの事を見下し、魔導師達と一緒になって、なんならウチの第三騎士団長と一丸となって職務放棄をしていた連中だ。

ロザリンドがキレて団長室の机を素手で叩き割った話は耳に新しい。

その後の地獄のしごきにズタボロになり震え上がったモノである。

そんな彼等が、セイリュウが自分達のせいでボロボロになり倒れたと知って思い出すのが、目が笑ってないロザリンドである。

あのしごきはマジでヤバい。
死にかけた。
なんなら一度、三途の川を渡った気もする。

そのロザリンドだが、倒れたセイリュウの看護に付きっきりであたるため、セイリュウと同じだけ休暇を取るらしい。

・・・復帰したときが恐ろしい・・・。
騎士達は戦々恐々としていた。

それは現団長にも言えた。

「---団長、どうなさったので?」

セイリュウの一報を聞いてから、青白い顔で心なしか震えているようだ。

「体調が悪いのでしたら、どうぞご自宅へお帰り下さって結構ですよ? こちらの事は我々にお任せ下さい」
「---お、お前達・・・・・・いや、そう・・・だな」

青い顔を白くさせて力無く立ち上がると、ふらふらと部屋を出て行った。

「・・・やっと静かになったな」

副団長、貴方が復帰するまでに害虫駆除を徹底的にしておきますよ!

そう意気込んでいるのは、ロザリンドの補佐官の騎士だ。
4年前のあの日、セイリュウの治癒魔法で命を救われた。

腕を噛み切られ、出血多量で朦朧としていた。
死を覚悟していた。

それが優しい光に包まれて・・・。

意識を取り戻して生えている腕に呆然としているうちにセイリュウが魔力枯渇に陥り、昏睡状態のまま一部の騎士達と魔導師達の結託により連れ攫われ、未だ直接御礼を言えていない状況で・・・。

副師団長となったセイリュウにやっと恩返しが出来ると張り切っていた矢先の、同僚による職務放棄という虐め。

ロザリンドの怒りも当然である。

本当は彼も護衛騎士の任に名乗りを上げたかったが、ロザリンドのかわりに仕事を補佐するのが今の自分の使命と思い、身を引いた。

これを機に徹底的に騎士団を掃除するつもりである。
他の同志達と決意を新たにした。


その一方で、顔色の悪い騎士達は今後への不安を口にした。

「・・・マズいぞ」
「どうするんだ、以前だってアレだったんだぞ?」
「今は不在だが、その後は・・・」
「---異動を願い出るか」
「それか、辞めるか・・・?」
「今の騎士団長なら異動願いも受理してくれるだろう。今のうちだな」

等と話している。

だがしかし、受理はされても願った部署に異動は出来ないだろう。
なにせ公爵家ロザリンドがすでに手を回し済みだからである。

首を切られるか閑職に回されるだけである。

それを知るのはもう少し先の事。
一緒になって虐げていた魔導師達にも言えることである。


ここで明暗がはっきり決まった。







※ストック切れと時間が無くて投稿遅れてます。
不定期になりますが、これからもよろしくお願いします。








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