3 / 85
3 魔導師は回想する 2
しおりを挟む「はああ---っ?!」
思わず大声で叫んだ俺を面白いものを見るような顔で笑って見ている。
「え? 僕が? レグルス様の子?!」
「そうだよ。正真正銘、私の実子だ」
・・・レグルス様の話によると、スピカは凌辱されたあと、徹底的に体を清めてから自身の聖魔法で瘴気を消し去ったんだそうだ。
それはそれは憎しみの籠もった執念の聖魔法だったそうだ。
---いや、精子って瘴気扱いで死滅させられるんだ?!
スピカ、怖え・・・。
そして月のモノが来て妊娠していないことを確認してやっと、ホッと安堵したと。
「だが、彼女はあの時の記憶を上書きして欲しいと・・・寝ていた私を夜這いしに来たんだ」
「はあ?!」
「私はずっとスピカの事を想っていたから、これ幸いと乗っかって、お前が生まれた」
「・・・・・・いやもう、もはや、どこをどうツッコめば・・・」
頭が痛い・・・。
聞いた感じ大人しそうな印象だったスピカが、凌辱されたのをきっかけにブチ切れてレグルスを襲い、俺を孕んだと・・・。
で、スピカを好きだったレグルスはラッキースケベな感じでノリノリだったと・・・。
「・・・・・・何時から?」
俺は疑問に思って尋ねた。
「何が?」
レグルスはにこやかに微笑んで首を傾げる。
カッコいいのに可愛いな、じゃなくて!
「何時からスピカが好きだったの?」
「そうだね、スピカが第二王子と婚約する前からだから、かれこれ25年くらい前から?」
「---ええ?!」
どゆこと?!
困った顔でレグルスは話し出した。
実はレグルスは今の国王陛下のかなり歳の離れた王弟なんだそうだ。
どおりで王都の事情に詳しい訳だ。
神官長だが、陛下に何かあったときのスペアだから王位継承権は持ったまま。
ただ王位継承問題で揉めるのを防ぐために早いうちから神殿に身を置き、わざわざ辺境地の神官長となった。
今は王太子も第二王子もいるから継承順位も下がって気楽なもんだって。
「実はたまたまお茶会に来ていたスピカに一目惚れをして。でも甥の第二王子の婚約者になってしまって、傷心で神官になったんだけどね」
王位継承問題も確かにあったけど、大半はこっちが理由だったそうだ。
「それでも忘れられなくて・・・。そんな時、第二王子が婚約破棄をしてスピカがここに来ると知って、浮き足立ったよ。密かに想っていた女性が側に来てくれると。---それが一年足らずであの事件・・・返ってきた返答に本気で陛下から王位を簒奪しようかと考えたよ」
ふっふっふっ・・・と黒い笑みが本気で怖い。
「一生結婚はしないつもりだったし、今も独身だけど、お前という愛しい子を残してくれた」
愛おしそうにセイリュウを見つめる。
「スピカには感謝しかない。・・・実は彼女はね、自分の死期を悟っていた。妊娠してから知ったことだが、お前を産むには耐えられない体だったんだ・・・元々そんなに丈夫ではなかったから」
「・・・僕が生まれて、憎くないの?」
そんなに愛してた女性を殺したような子供なのに・・・。
「何故? お前は彼女が生きた証。どうせ産まなくても長くはなかったんだ。寿命は聖魔法でも延ばせない。それに彼女は何より私との子を産みたいと望んでくれた。それだけで十分だ」
そういって笑ったレグルスは格好良かった。
「今はまだお父様とは呼んで貰えないけど、いつか正式に本当の親子の名乗りをあげようね。ちなみに、お前が生まれた直後に養子縁組していて、すでに義理の親子の関係だ」
内緒にしてるんだけどね・・・って。
・・・おいおい、良いのかそれで。
まあ、王位継承問題勃発しても困るか。
なら、まあいいや。
「---うん、よろしく」
それにしても14歳の多感な子供に話す内容じゃなかったよな?
サラッと流してたけど、重すぎるって。
・・・・・・レグルス、もしかして俺の中身薄々勘づいてる・・・?
ジッと見つめていると、ん?ってにこやかに笑う。
・・・駄目だ、全く読めない。
まあ、悪いことにはならないだろう。
とりあえず・・・。
「神殿内だったら、お父様って呼んでも良い?」
ずっと、父親代わりに思っていたから、今更なんだけど・・・って言ったら。
「---うん、嬉しいよ。セイリュウ」
・・・って涙ぐんで嬉しそうに笑ってくれたレグルスに、これからもっともっと、たくさん呼んであげようと思った。
こうして再び穏やかに過ごしていたんだけど・・・運命は何時も悪戯に俺の人生を狂わせる。
---神様、本当に俺【神の愛し子】なの?!
あの日、俺の人生を左右する大事件が起こったのだった。
306
お気に入りに追加
2,833
あなたにおすすめの小説

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。


気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる