癒しが欲しい魔導師さん

エウラ

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2 魔導師は回想する 1

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※文中に凌辱を匂わせる言葉があります。苦手な方は自衛をお願いします。





とりあえず、祝福は魔法だった、という事にしていつも通りの生活に戻った。

まあ、魔法が使えるからといって何が変わるもんでもない。
大体、魔法の勉強はとっくに終わってるしな!

なので、これからは何かの時の為にって、礼儀作法とかこの国の歴史とか王侯貴族の名前とか派閥とか?
それって必要ある?って事まで事細かに教えて貰った・・・・・・主に神官長に。

しかも毎年シーズン毎に更新される。
常に最新情報・・・凄えな。

ちなみに俺のいる神殿は王都からう---んと離れた辺境地にある、寂れた小さい神殿である。
なのに神官長とはいえ、王都そっち方面詳しくないですか?!

・・・・・・貴方何モンですか?

さすがの俺も疑問に思って、無邪気さを装って聞いてみた。

「神官長様って、もしかしてとっても偉い人だったりする?」

さすがに動揺はしなかったが、苦笑しながら優しく囁いた。

「---秘密、です」
「---!」

なんか色っぽくてドキッとした。

髪の色が同じだったからなんかお父さんみたいだなって勝手に思ってたけど、普通にイケメンな大人の男の人だった。

たぶん大人になっても俺には無理だ。

・・・・・・神官長、怖え。

なんかうやむやにされた感があるが、人それぞれツッコまれたくない過去の一つや二つや五つや六つあってもおかしくない。
俺がそうだもの。

だからそれ以上は聞かなかった。


そうして何事もなく穏やかに時は流れて、俺は14歳になっていた。
濡れ羽色の、青光りする艶やかな黒髪に大きい垂れ目で濃い青紫色の瞳。

筋肉がつきにくいのか細くて色白な肌に中性的な容貌。

神官長曰く、俺は顔と瞳は母親にそっくりだと言う。

実は14歳になったその日に教えてくれた亡き母のこと。

母親---スピカは、この神殿の聖女だったそうだ。
彼女は王都のとある貴族の令嬢だったが祝福を授かって聖女となった。
もともとは王都の神殿で聖女業をやっていたがあって、その後、成り行きでこの辺境地の神殿に住むことになったそうだ。

この世界では聖女は特に珍しくもない。
祝福を授かることはけっこうあり、単に聖魔法に特化した人という感じだ。
もちろん男で授かり聖人と呼ばれる人もいる。

大抵は神殿に属し、その神殿周辺の地域の瘴気を払ったり、病や怪我の治療を主にする。
もちろん本人にちゃんと報酬も出るし、聖女・聖人だからといって清らかで純潔が必要ということも無い。

普通に結婚して家庭を持つ者もたくさんいる。

だからスピカもそういう相手がいて、俺を孕んだけど理由があって結婚できなかっただけなんだと思っていたんだけど・・・。

「・・・スピカはね、純潔を奪われたんだ。視察に来ていた王都のとある貴族達に・・・」

スンッと表情が抜けた神官長様---レグルス様が語った内容はこうだ。


王都の神殿で聖女となって勤めていたスピカには第二王子という婚約者がいた。

完全な政略だったが、スピカは聖女業の傍ら、王子妃の教育も頑張って受けていた。
王子を少なからず想っていたからだ。

それが第二王子が学園に入学してすぐに庶子だった男爵令嬢と懇意になり、不貞を犯してスピカを捨てた。

スピカはずっと神殿で聖女業をしていたから、そんなことになっているとは露知らず。

王子の責での婚約破棄だったが、傷心を癒す為にこの辺境地の神殿に異動してきたのだそうだ。

少しずつ傷を癒して笑うようになったスピカだったが、視察団に同行して行った先で・・・。

「その貴族とそいつに同行していたクズどもにも凌辱された。神殿にいれば弾かれる悪意に晒され、何人もの男に・・・!」
「---っそんなことって・・・」
「彼女はぼろ雑巾のように打ち捨てられ、私達が駆けつけたときは言葉に出来ぬような状態だった・・・。当然、私達はアイツらを訴えた。しかし返って来た返事は・・・」


『たかが辺境地の聖女一人、罪に問われる謂れは無い』


「・・・スピカの肉親にも連絡をしたが、『婚約を破棄され辺境地に行くと決まった時に籍は抜いたから、我らとはもはや他人』だと・・・。怒りを通り越して虚しさが心を満たしたね」
「---え、じゃあ、僕は・・・ソイツらの誰かの・・・?」

まさか、そんな、イヤだ・・・そんな最低なヤツらの誰かの血が俺の中に・・・。

「いいえ、違います」
「---へ?」

真っ青になったセイリュウに優しく、でもキッパリと否定したレグルスにキョトンとする。

「お前は私の子だから」

---は?

「はああ---っ?!」






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