2 / 85
2 魔導師は回想する 1
しおりを挟む
※文中に凌辱を匂わせる言葉があります。苦手な方は自衛をお願いします。
とりあえず、祝福は魔法だった、という事にしていつも通りの生活に戻った。
まあ、魔法が使えるからといって何が変わるもんでもない。
大体、魔法の勉強はとっくに終わってるしな!
なので、これからは何かの時の為にって、礼儀作法とかこの国の歴史とか王侯貴族の名前とか派閥とか?
それって必要ある?って事まで事細かに教えて貰った・・・・・・主に神官長に。
しかも毎年シーズン毎に更新される。
常に最新情報・・・凄えな。
ちなみに俺のいる神殿は王都からう---んと離れた辺境地にある、寂れた小さい神殿である。
なのに神官長とはいえ、王都方面詳しくないですか?!
・・・・・・貴方何モンですか?
さすがの俺も疑問に思って、無邪気さを装って聞いてみた。
「神官長様って、もしかしてとっても偉い人だったりする?」
さすがに動揺はしなかったが、苦笑しながら優しく囁いた。
「---秘密、です」
「---!」
なんか色っぽくてドキッとした。
髪の色が同じだったからなんかお父さんみたいだなって勝手に思ってたけど、普通にイケメンな大人の男の人だった。
たぶん大人になっても俺には無理だ。
・・・・・・神官長、怖え。
なんかうやむやにされた感があるが、人それぞれツッコまれたくない過去の一つや二つや五つや六つあってもおかしくない。
俺がそうだもの。
だからそれ以上は聞かなかった。
そうして何事もなく穏やかに時は流れて、俺は14歳になっていた。
濡れ羽色の、青光りする艶やかな黒髪に大きい垂れ目で濃い青紫色の瞳。
筋肉がつきにくいのか細くて色白な肌に中性的な容貌。
神官長曰く、俺は顔と瞳は母親にそっくりだと言う。
実は14歳になったその日に教えてくれた亡き母のこと。
母親---スピカは、この神殿の聖女だったそうだ。
彼女は王都のとある貴族の令嬢だったが祝福を授かって聖女となった。
もともとは王都の神殿で聖女業をやっていたが色々あって、その後、成り行きでこの辺境地の神殿に住むことになったそうだ。
この世界では聖女は特に珍しくもない。
祝福を授かることはけっこうあり、単に聖魔法に特化した人という感じだ。
もちろん男で授かり聖人と呼ばれる人もいる。
大抵は神殿に属し、その神殿周辺の地域の瘴気を払ったり、病や怪我の治療を主にする。
もちろん本人にちゃんと報酬も出るし、聖女・聖人だからといって清らかで純潔が必要ということも無い。
普通に結婚して家庭を持つ者もたくさんいる。
だからスピカもそういう相手がいて、俺を孕んだけど理由があって結婚できなかっただけなんだと思っていたんだけど・・・。
「・・・スピカはね、純潔を奪われたんだ。視察に来ていた王都のとある貴族達に・・・」
スンッと表情が抜けた神官長様---レグルス様が語った内容はこうだ。
王都の神殿で聖女となって勤めていたスピカには第二王子という婚約者がいた。
完全な政略だったが、スピカは聖女業の傍ら、王子妃の教育も頑張って受けていた。
王子を少なからず想っていたからだ。
それが第二王子が学園に入学してすぐに庶子だった男爵令嬢と懇意になり、不貞を犯してスピカを捨てた。
スピカはずっと神殿で聖女業をしていたから、そんなことになっているとは露知らず。
王子の責での婚約破棄だったが、傷心を癒す為にこの辺境地の神殿に異動してきたのだそうだ。
少しずつ傷を癒して笑うようになったスピカだったが、視察団に同行して行った先で・・・。
「その貴族とそいつに同行していたクズどもにも凌辱された。神殿にいれば弾かれる悪意に晒され、何人もの男に・・・!」
「---っそんなことって・・・」
「彼女はぼろ雑巾のように打ち捨てられ、私達が駆けつけたときは言葉に出来ぬような状態だった・・・。当然、私達はアイツらを訴えた。しかし返って来た返事は・・・」
『たかが辺境地の聖女一人、罪に問われる謂れは無い』
「・・・スピカの肉親にも連絡をしたが、『婚約を破棄され辺境地に行くと決まった時に籍は抜いたから、我らとはもはや他人』だと・・・。怒りを通り越して虚しさが心を満たしたね」
「---え、じゃあ、僕は・・・ソイツらの誰かの・・・?」
まさか、そんな、イヤだ・・・そんな最低なヤツらの誰かの血が俺の中に・・・。
「いいえ、違います」
「---へ?」
真っ青になったセイリュウに優しく、でもキッパリと否定したレグルスにキョトンとする。
「お前は私の子だから」
---は?
「はああ---っ?!」
とりあえず、祝福は魔法だった、という事にしていつも通りの生活に戻った。
まあ、魔法が使えるからといって何が変わるもんでもない。
大体、魔法の勉強はとっくに終わってるしな!
なので、これからは何かの時の為にって、礼儀作法とかこの国の歴史とか王侯貴族の名前とか派閥とか?
それって必要ある?って事まで事細かに教えて貰った・・・・・・主に神官長に。
しかも毎年シーズン毎に更新される。
常に最新情報・・・凄えな。
ちなみに俺のいる神殿は王都からう---んと離れた辺境地にある、寂れた小さい神殿である。
なのに神官長とはいえ、王都方面詳しくないですか?!
・・・・・・貴方何モンですか?
さすがの俺も疑問に思って、無邪気さを装って聞いてみた。
「神官長様って、もしかしてとっても偉い人だったりする?」
さすがに動揺はしなかったが、苦笑しながら優しく囁いた。
「---秘密、です」
「---!」
なんか色っぽくてドキッとした。
髪の色が同じだったからなんかお父さんみたいだなって勝手に思ってたけど、普通にイケメンな大人の男の人だった。
たぶん大人になっても俺には無理だ。
・・・・・・神官長、怖え。
なんかうやむやにされた感があるが、人それぞれツッコまれたくない過去の一つや二つや五つや六つあってもおかしくない。
俺がそうだもの。
だからそれ以上は聞かなかった。
そうして何事もなく穏やかに時は流れて、俺は14歳になっていた。
濡れ羽色の、青光りする艶やかな黒髪に大きい垂れ目で濃い青紫色の瞳。
筋肉がつきにくいのか細くて色白な肌に中性的な容貌。
神官長曰く、俺は顔と瞳は母親にそっくりだと言う。
実は14歳になったその日に教えてくれた亡き母のこと。
母親---スピカは、この神殿の聖女だったそうだ。
彼女は王都のとある貴族の令嬢だったが祝福を授かって聖女となった。
もともとは王都の神殿で聖女業をやっていたが色々あって、その後、成り行きでこの辺境地の神殿に住むことになったそうだ。
この世界では聖女は特に珍しくもない。
祝福を授かることはけっこうあり、単に聖魔法に特化した人という感じだ。
もちろん男で授かり聖人と呼ばれる人もいる。
大抵は神殿に属し、その神殿周辺の地域の瘴気を払ったり、病や怪我の治療を主にする。
もちろん本人にちゃんと報酬も出るし、聖女・聖人だからといって清らかで純潔が必要ということも無い。
普通に結婚して家庭を持つ者もたくさんいる。
だからスピカもそういう相手がいて、俺を孕んだけど理由があって結婚できなかっただけなんだと思っていたんだけど・・・。
「・・・スピカはね、純潔を奪われたんだ。視察に来ていた王都のとある貴族達に・・・」
スンッと表情が抜けた神官長様---レグルス様が語った内容はこうだ。
王都の神殿で聖女となって勤めていたスピカには第二王子という婚約者がいた。
完全な政略だったが、スピカは聖女業の傍ら、王子妃の教育も頑張って受けていた。
王子を少なからず想っていたからだ。
それが第二王子が学園に入学してすぐに庶子だった男爵令嬢と懇意になり、不貞を犯してスピカを捨てた。
スピカはずっと神殿で聖女業をしていたから、そんなことになっているとは露知らず。
王子の責での婚約破棄だったが、傷心を癒す為にこの辺境地の神殿に異動してきたのだそうだ。
少しずつ傷を癒して笑うようになったスピカだったが、視察団に同行して行った先で・・・。
「その貴族とそいつに同行していたクズどもにも凌辱された。神殿にいれば弾かれる悪意に晒され、何人もの男に・・・!」
「---っそんなことって・・・」
「彼女はぼろ雑巾のように打ち捨てられ、私達が駆けつけたときは言葉に出来ぬような状態だった・・・。当然、私達はアイツらを訴えた。しかし返って来た返事は・・・」
『たかが辺境地の聖女一人、罪に問われる謂れは無い』
「・・・スピカの肉親にも連絡をしたが、『婚約を破棄され辺境地に行くと決まった時に籍は抜いたから、我らとはもはや他人』だと・・・。怒りを通り越して虚しさが心を満たしたね」
「---え、じゃあ、僕は・・・ソイツらの誰かの・・・?」
まさか、そんな、イヤだ・・・そんな最低なヤツらの誰かの血が俺の中に・・・。
「いいえ、違います」
「---へ?」
真っ青になったセイリュウに優しく、でもキッパリと否定したレグルスにキョトンとする。
「お前は私の子だから」
---は?
「はああ---っ?!」
303
お気に入りに追加
2,827
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
【完結】暁の騎士と宵闇の賢者
エウラ
BL
転生者であるセラータは宮廷魔導師団長を義父に持ち、自身もその副師団長を務めるほどの腕のいい魔導師。
幼馴染みの宮廷騎士団副団長に片想いをしている。
その幼馴染みに自分の見た目や噂のせいでどうやら嫌われているらしいと思っていたが・・・・・・。
※竜人の番い設定は今回は緩いです。独占欲や嫉妬はありますが、番いが亡くなった場合でも狂ったりはしない設定です。
普通に女性もいる世界。様々な種族がいる。
魔法で子供が出来るので普通に同性婚可能。
名前は日本名と同じくファミリーネーム(苗字)・ファーストネーム(名前)の表記です。
ハッピーエンド確定です。
R18は*印付きます。そこまで行くのは後半だと思います。
※番外編も終わり、完結しました。
箱庭
エウラ
BL
とある事故で異世界転生した主人公と、彼を番い認定した異世界人の話。
受けの主人公はポジティブでくよくよしないタイプです。呑気でマイペース。
攻めの異世界人はそこそこクールで強い人。受けを溺愛して囲っちゃうタイプです。
一応主人公視点と異世界人視点、最後に主人公視点で二人のその後の三話で終わる予定です。
↑スミマセン。三話で終わらなかったです。もうしばらくお付き合い下さいませ。
R15は保険。特に戦闘シーンとかなく、ほのぼのです。
釣った魚、逃した魚
円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。
王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。
王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。
護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。
騎士×神子 攻目線
一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。
どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。
ムーンライト様でもアップしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる