28 / 30
小島箱庭帰省中 1
しおりを挟む
誘拐騒ぎの翌日、俺とサイファは静養という名目で二人きりで俺が最初に降り立ったあの小島に転移でやって来ていた。
あの誘拐事件はやっぱりサイファに怨みを持つ輩の仕業だとちょっと説明された。
ただ冒険者としてのサイファを逆恨みしたのか王子様としてのサイファを妬んだのかはコレから色々と調査をするそうで。
その間、俺の身の安全を確保するためにこの小島に身を隠そうということになったわけ。
確かにここなら誰も来ないし、いないし。
魔獣とかもいないからそういう危険もないし。
「まあ、俺は慣れ親しんだ島だけど。でも何もなさ過ぎてサイファは退屈なんじゃないの?」
「いや、たまにはこういう時間もいいモンだよ。それにこの島全体には結界が張ってあるから安心だ」
サイファにそう言われて疑問符を浮かべる。
「───結界?」
「ああ、気付いていなかったのか。初見でラトナが逃げた先の大きな樹があるだろう? アレを中心にけっこうな範囲で結界がある」
「・・・・・・え? マジ?」
そんなの、一年も過ごしていて気が付かなかったわ。
「あの樹は世界樹という神木で、この世界に数本存在する。神が降臨するといわれる聖なる樹の若木だ」
そう言われてギョッとする。世界樹ってことよりも何よりも───。
「え、アレで若木なの!?」
「ああ。俺が見たことのある世界樹はあの木の何十倍も大きく枝を広げていた。・・・・・・まあ要するに一種の聖域なんだよ。世界樹自体が結界を作っているらしい」
「・・・・・・はあ・・・・・・凄いねぇ。でもそれならなおさら安全だね」
詳しい仕組みは分からないけど安全ってことはよく分かった。
それなら普通に生活してても問題ないね。
「じゃあ久しぶりにレッツ、スローライフ!」
「すろーらいふ?」
聞き慣れない言葉だったようでヘンな言い方のサイファにクスッと笑う。
「ようするにのんびり過ごそうってこと。まあ人によってのんびりの定義は違うだろうけど」
そう言ったらキョトンとしたあとサイファが聞いてきた。
「ラトナの『のんびり』とは?」
「そりゃあ、好きなときに寝て起きて、お腹が空いたらそこら辺の果物をかじって・・・・・・島をウロウロ散歩?」
・・・・・・言ってて気付いたが、いやこれ、スローライフっていうよりもただの堕落したヤツじゃん。
「・・・・・・ごめん。今のナシ。えっと、田舎で自給自足してゆったり過ごすこと?」
「そうか。別にラトナとなら日がな一日、ゴロゴロと寝転んで過ごしても構わないが」
何かもの凄く熱のこもった目を向けられて居心地が悪い。
アレですよね? ピーなこととかピーなことしてダラダラと過ごすんでしょ!?
アレだ! 爛れた生活ってヤツ!
いやいや、さすがに連日ソレはご勘弁願います!
俺は首を横にぶんぶんと振ってお断りした。
「ところで寝床はどうしよう?」
俺は元々カーバンクルだしどこでも寝れるけど、さすがにあの洞にサイファは無理だろう。
結界があるって知った今なら外で寝てもいい気はするけど、いかせんここには何もなさ過ぎて・・・・・・。
「俺、何もないけど。サイファの寝床とかなーんにも考えてなくて、ごめんなさい」
「ああ、収納魔法で色々と持ってきているから心配ないよ」
「・・・・・・えっ!? あ、そういえばそんなのあったっけ・・・・・・」
「それに冒険者だからな、野営も慣れてる」
そう言って平らな場所にポンと大きなテントを出した。
いやテントって言うのかコレ?
俺の目の前には、前世で言うところのグランピング施設の五、六人は泊まれるサイズの三角形のテントだった。
しかも中にはベッドが見えたぞ。
「・・・・・・」
ポカンとしている俺に気付いたサイファが苦笑した。
「さすがに冒険者用じゃないぞ。普段は一人用の一般的なモノよりは質がいいテントだ。これは父達が俺とラトナ用に作ってくれた特別製」
「・・・・・・だよねぇ。マジビビったわ」
でも快適そうなテントで嬉しいな。
人と過ごして普通の部屋で寝るのに慣れちゃった今の俺にはまさに最高の逸品です!
人も獣も快適な環境を提供されたら自堕落になっちゃうのは仕方ないよね?
※ご無沙汰しております。
あの誘拐事件はやっぱりサイファに怨みを持つ輩の仕業だとちょっと説明された。
ただ冒険者としてのサイファを逆恨みしたのか王子様としてのサイファを妬んだのかはコレから色々と調査をするそうで。
その間、俺の身の安全を確保するためにこの小島に身を隠そうということになったわけ。
確かにここなら誰も来ないし、いないし。
魔獣とかもいないからそういう危険もないし。
「まあ、俺は慣れ親しんだ島だけど。でも何もなさ過ぎてサイファは退屈なんじゃないの?」
「いや、たまにはこういう時間もいいモンだよ。それにこの島全体には結界が張ってあるから安心だ」
サイファにそう言われて疑問符を浮かべる。
「───結界?」
「ああ、気付いていなかったのか。初見でラトナが逃げた先の大きな樹があるだろう? アレを中心にけっこうな範囲で結界がある」
「・・・・・・え? マジ?」
そんなの、一年も過ごしていて気が付かなかったわ。
「あの樹は世界樹という神木で、この世界に数本存在する。神が降臨するといわれる聖なる樹の若木だ」
そう言われてギョッとする。世界樹ってことよりも何よりも───。
「え、アレで若木なの!?」
「ああ。俺が見たことのある世界樹はあの木の何十倍も大きく枝を広げていた。・・・・・・まあ要するに一種の聖域なんだよ。世界樹自体が結界を作っているらしい」
「・・・・・・はあ・・・・・・凄いねぇ。でもそれならなおさら安全だね」
詳しい仕組みは分からないけど安全ってことはよく分かった。
それなら普通に生活してても問題ないね。
「じゃあ久しぶりにレッツ、スローライフ!」
「すろーらいふ?」
聞き慣れない言葉だったようでヘンな言い方のサイファにクスッと笑う。
「ようするにのんびり過ごそうってこと。まあ人によってのんびりの定義は違うだろうけど」
そう言ったらキョトンとしたあとサイファが聞いてきた。
「ラトナの『のんびり』とは?」
「そりゃあ、好きなときに寝て起きて、お腹が空いたらそこら辺の果物をかじって・・・・・・島をウロウロ散歩?」
・・・・・・言ってて気付いたが、いやこれ、スローライフっていうよりもただの堕落したヤツじゃん。
「・・・・・・ごめん。今のナシ。えっと、田舎で自給自足してゆったり過ごすこと?」
「そうか。別にラトナとなら日がな一日、ゴロゴロと寝転んで過ごしても構わないが」
何かもの凄く熱のこもった目を向けられて居心地が悪い。
アレですよね? ピーなこととかピーなことしてダラダラと過ごすんでしょ!?
アレだ! 爛れた生活ってヤツ!
いやいや、さすがに連日ソレはご勘弁願います!
俺は首を横にぶんぶんと振ってお断りした。
「ところで寝床はどうしよう?」
俺は元々カーバンクルだしどこでも寝れるけど、さすがにあの洞にサイファは無理だろう。
結界があるって知った今なら外で寝てもいい気はするけど、いかせんここには何もなさ過ぎて・・・・・・。
「俺、何もないけど。サイファの寝床とかなーんにも考えてなくて、ごめんなさい」
「ああ、収納魔法で色々と持ってきているから心配ないよ」
「・・・・・・えっ!? あ、そういえばそんなのあったっけ・・・・・・」
「それに冒険者だからな、野営も慣れてる」
そう言って平らな場所にポンと大きなテントを出した。
いやテントって言うのかコレ?
俺の目の前には、前世で言うところのグランピング施設の五、六人は泊まれるサイズの三角形のテントだった。
しかも中にはベッドが見えたぞ。
「・・・・・・」
ポカンとしている俺に気付いたサイファが苦笑した。
「さすがに冒険者用じゃないぞ。普段は一人用の一般的なモノよりは質がいいテントだ。これは父達が俺とラトナ用に作ってくれた特別製」
「・・・・・・だよねぇ。マジビビったわ」
でも快適そうなテントで嬉しいな。
人と過ごして普通の部屋で寝るのに慣れちゃった今の俺にはまさに最高の逸品です!
人も獣も快適な環境を提供されたら自堕落になっちゃうのは仕方ないよね?
※ご無沙汰しております。
504
お気に入りに追加
642
あなたにおすすめの小説

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

消えたいと願ったら、猫になってました。
15
BL
親友に恋をした。
告げるつもりはなかったのにひょんなことからバレて、玉砕。
消えたい…そう呟いた時どこからか「おっけ〜」と呑気な声が聞こえてきて、え?と思った時には猫になっていた。
…え?
消えたいとは言ったけど猫になりたいなんて言ってません!
「大丈夫、戻る方法はあるから」
「それって?」
「それはーーー」
猫ライフ、満喫します。
こちら息抜きで書いているため、亀更新になります。
するっと終わる(かもしれない)予定です。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。


転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる