箱庭

エウラ

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小島箱庭帰省中 1

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誘拐騒ぎの翌日、俺とサイファは静養という名目で二人きりで俺が最初に降り立ったあの小島に転移でやって来ていた。

あの誘拐事件はやっぱりサイファに怨みを持つ輩の仕業だとちょっと説明された。

ただ冒険者としてのサイファを逆恨みしたのか王子様としてのサイファを妬んだのかはコレから色々と調査をするそうで。
その間、俺の身の安全を確保するためにこの小島に身を隠そうということになったわけ。

確かにここなら誰も来ないし、いないし。
魔獣とかもいないからそういう危険もないし。

「まあ、俺は慣れ親しんだ島だけど。でも何もなさ過ぎてサイファは退屈なんじゃないの?」
「いや、たまにはこういう時間もいいモンだよ。それにこの島全体には結界が張ってあるから安心だ」

サイファにそう言われて疑問符を浮かべる。

「───結界?」
「ああ、気付いていなかったのか。初見でラトナが逃げた先の大きな樹があるだろう? アレを中心にけっこうな範囲で結界がある」
「・・・・・・え? マジ?」

そんなの、一年も過ごしていて気が付かなかったわ。

「あの樹は世界樹イルミンスールという神木で、この世界に数本存在する。神が降臨するといわれる聖なる樹の若木だ」

そう言われてギョッとする。世界樹ってことよりも何よりも───。

「え、アレで若木なの!?」
「ああ。俺が見たことのある世界樹はあの木の何十倍も大きく枝を広げていた。・・・・・・まあ要するに一種の聖域なんだよ。世界樹自体が結界を作っているらしい」
「・・・・・・はあ・・・・・・凄いねぇ。でもそれならなおさら安全だね」

詳しい仕組みは分からないけど安全ってことはよく分かった。

それなら普通に生活してても問題ないね。

「じゃあ久しぶりにレッツ、スローライフ!」
「すろーらいふ?」

聞き慣れない言葉だったようでヘンな言い方のサイファにクスッと笑う。

「ようするにのんびり過ごそうってこと。まあ人によってのんびりの定義は違うだろうけど」

そう言ったらキョトンとしたあとサイファが聞いてきた。

「ラトナの『のんびり』とは?」
「そりゃあ、好きなときに寝て起きて、お腹が空いたらそこら辺の果物をかじって・・・・・・島をウロウロ散歩?」

・・・・・・言ってて気付いたが、いやこれ、スローライフっていうよりもただの堕落したヤツじゃん。

「・・・・・・ごめん。今のナシ。えっと、田舎で自給自足してゆったり過ごすこと?」
「そうか。別にラトナとなら日がな一日、ゴロゴロと寝転んで過ごしても構わないが」

何かもの凄く熱のこもった目を向けられて居心地が悪い。
アレですよね? ピーなこととかピーなことしてダラダラと過ごすんでしょ!?
アレだ! 爛れた生活ってヤツ!

いやいや、さすがに連日ソレはご勘弁願います!

俺は首を横にぶんぶんと振ってお断りした。

「ところで寝床はどうしよう?」

俺は元々カーバンクルだしどこでも寝れるけど、さすがにあの洞にサイファは無理だろう。
結界があるって知った今なら外で寝てもいい気はするけど、いかせんここには何もなさ過ぎて・・・・・・。

「俺、何もないけど。サイファの寝床とかなーんにも考えてなくて、ごめんなさい」
「ああ、収納魔法で色々と持ってきているから心配ないよ」
「・・・・・・えっ!? あ、そういえばそんなのあったっけ・・・・・・」
「それに冒険者だからな、野営も慣れてる」

そう言って平らな場所にポンと大きなテントを出した。
いやテントって言うのかコレ?

俺の目の前には、前世で言うところのグランピング施設の五、六人は泊まれるサイズの三角形のテントだった。
しかも中にはベッドが見えたぞ。

「・・・・・・」

ポカンとしている俺に気付いたサイファが苦笑した。

「さすがに冒険者用じゃないぞ。普段は一人用の一般的なモノよりは質がいいテントだ。これは父達が俺とラトナ用に作ってくれた特別製」
「・・・・・・だよねぇ。マジビビったわ」

でも快適そうなテントで嬉しいな。
人と過ごして普通の部屋で寝るのに慣れちゃった今の俺にはまさに最高の逸品です!

人も獣も快適な環境を提供されたら自堕落になっちゃうのは仕方ないよね?







※ご無沙汰しております。
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