箱庭

エウラ

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箱庭の外の世界 2

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───というわけで街に近付くまでは馬車の中で窓のカーテンも閉めたまま移動になった。
万が一見られて大騒ぎになっても困るからね。
護衛騎士達は少し離れた前後を護るように騎馬で進むそうだ。

「そういえばサイファって転移魔法でひとっ飛びじゃなかったっけ? ソレなら早いんじゃないの?」

だから俺のいた小島にも好きなときに転移で行けるって言ってたよね?

「ああ・・・・・・王城内は転移や攻撃系の魔法は基本的には使用禁止で、そもそも王城内は発動できないように魔導具が設置されてるんだ」
「へー、そうなんだ。じゃあ仕方ないね」
「(ラトナを連れて転移してきたことは俺にとっては緊急事態だった)」
「ん? 何か言った?」
「イヤ?」

詳しく聞くと、掃除や料理に使う生活魔法という一般的な小さな魔法はオッケーなんだって。
魔導具が是否を判定しているらしい。

ついでにそのお城や街のことも聞いてみた。

サイファが言うには、お城は高台にあって城の裏側は主に城勤めの騎士や兵士、使用人達の宿舎があるそうだ。
もちろん通いの人達もいるが、基本的には宿舎で寝泊まりしているそうだ。

「城への出入りも厳しくチェックされるから、大概の者は敷地内に住み込みだ。外出や外泊は手続きすれば可能だからそこまで不便はない」
「確かに出入りのチェックの方が防犯の面でも面倒そうだもんね。ソレに夜間勤務とかあったらいちいち出入りするの大変だろうし」

そして城の正面側に広がるのが城下街、王都というわけだ。
城をぐるっと囲って高い塀があり、そこを抜けると王都の街並みが広がる。

城に一番近い区域は貴族街で、多数の貴族家の邸があり、その次に貴族街で主に商売をする高級な店が建ち並び、更にその先が一般的な住人の生活区域となるそうだ。

更にその街並みごとぐるっと高い塀で囲ってあって、魔物や敵が入り込めないようになっている。

「区域ごとに分かりやすい姿で警備の騎士達や自警団などが見廻っているから、揉め事があればそちらの騎士達に声をかけるといい」

着いたらまず顔合わせをしておこう、とサイファが真面目な顔でそう言った。
そうだね。顔を知っておいて貰うの大切だね!

「うん。ないとは思うけど万が一逸れたりしたら助けを求めるよ。あっじゃあ、もし迷子になったときのルールも決めておかない?」
「ルール? まぁ護衛騎士も影の者もいるし、ラトナが一人になることはないと思うが」
「その護衛騎士達にも逸れた場合は○○に行って待つとかそういうのあった方がいいと思って。俺、自慢じゃないけど逸れたら絶対にサイファを探せない自信があるし」

聴力解放したら最悪頭が割れそうになって気絶するだろうし、嗅覚もたぶん鼻がおかしくなると思う。
それでパニックになってカーバンクルの姿になっちゃったら速攻で誘拐監禁、下手したら危害を加えられて殺されるかも・・・・・・。

「だから確実に『ココなら安全』っていう場所を決めて欲しいな」
「───そうか、そうだな。用心するに越したことはないな。顔合わせをする予定の建物を待ち合わせ場所にしよう」
「俺でも分かりやすい場所?」

全く知らない街だから目立つ建物だといいな。

「ああ。俺が最初に冒険者登録した場所で拠点にしているだ」
「───っ! 冒険者ギルド!!」

異世界で定番中の定番! サイファがやってる冒険者達の元締め(言い方がヘンかもしれないが)!

「なんか嬉しそうだな? そんなに凄い場所ではないと思うが・・・・・・」

俺の食いつきに若干引き気味のサイファ。でも構わずグイグイいかせて貰うぜ!

「いやもう、冒険者とか冒険者ギルドとかって響きがいい! ね、俺も冒険者になれる!?」
「・・・・・・え? いや・・・・・・うーん、どうだろう? そもそも幻獣って冒険者の規定に当てはまるのか?」

サイファがブツブツと何やら考え込んでしまったが、俺はウキウキしまくって妄想をしだしたので気にならなかった。

───まぁたぶん無理だろうけどね。でも中を見学するくらいはいいよね?

「・・・・・・おい、馬車の中で暴れるな! 危ないぞ!」

着いたら一番最初に見廻るところが決まったとはしゃぐ俺を宥めながら抱きしめるサイファ。
あとで聞いたら護衛騎士達は不自然に揺れる馬車を見てちょっとあらぬコトを想像したらしいですよ。

・・・・・・すっごい恥ずかしい!
あらぬコトってピーなことやピーなことですよね!?
蜜月だから? 当たり前? マジっすか!

教訓。
馬車では大人しくしてましょう。

俺、学んだよ。
すぐ忘れると思うけどね!


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