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波乱の箱庭 2
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四阿に移動してサイファの膝の上に横抱きで座る俺。
もうすっかり違和感なく慣れた体勢だな。
おかしいな。サイファともまともに付き合った時間は短いんだけど。
「───はぁ、いい匂い」
俺の旋毛に鼻先を埋めてクンクンと匂いを嗅ぐサイファ。
変態っぽいから止めてくれるかな?
なんとなく護衛騎士達の生温かい視線が気まずい。
「ねぇ、さっきの声の主のこと心当たりあるのか?」
「っ・・・・・・」
俺がおもむろに聞くと、サイファは一瞬ピクッとした。が、またスーハーと俺を吸いだした。
誤魔化すというより気持ちを落ち着けてる感じ?
「・・・・・・サイファ?」
「・・・・・・ああ、うん・・・・・・ちょっと待ってくれるか? もうじきナージュが戻るだろうから」
「・・・・・・おけ」
どうも言いたくなさそうだったからそう頷いてひたすらサイファに吸われていた。
俺はその間暇だったから、四阿から見える景色をキョロキョロと目だけ動かして眺めていた。
───そういえば、お城の外・・・・・・城下街とかってどんな感じなんだろ?
サイファと一緒なら街歩きとかって出来るかな?
お城が中世のヨーロッパっぽい作りだから街の建物もレンガ造りとかカントリー風なのかな?
小島に一人で住んでたときは全くそんな気はなかったのに、一度、外を知っちゃうともの凄く気になる。
そんなことをつらつらと考えていたらナージュと護衛騎士が戻ってきたようだ。
「お待たせいたしました」
「・・・・・・どうだった?」
「───ぅひゃっ、ちょ、サイファ!」
ナージュの声にチラッと目線だけ向けて俺のモコモコのケモ耳辺りで話すサイファ。
擽ったいから止めろ。
俺の抗議の声をまるっと無視してスーハーしながらぎゅっと抱き付くサイファ。
更に文句を言おうとしたけど、その不機嫌な様子に溜め息を吐いて口を噤み、黙って話を聞く姿勢になる。
コレ、絶対にいい話じゃないよな。
案の定、トラブルの話だった。
「サイファ様のはとこにあたられますルモイ侯爵令嬢が無許可でこの王族のプライベートの区画に入り込み、なおかつサイファ様の離宮へも立ち入ろうとなさってます」
ナージュの言葉に俺は確認の意味で聞いてみた。
「はとこっていうと、えーとサイファのお祖父さんかお祖母さんの兄弟の孫ってこと?」
「そうだ。祖母──前王妃の妹の孫で父とは従兄弟になるルモイ侯爵家の令嬢だな。だが王族の血は入っていない部外者だ」
ふんふん。すると、王家とは外戚関係で王家の血筋ではないってことか。
それなのにこの区画に勝手に入って騒いでるってこと?
「ソレって警備の観点から見てもヤバい案件」
俺が思わずそう呟くと、サイファ達も渋い顔で頷いた。
「だろう? 一体どうやって潜り込んだんだ。陛下も徹底的に警備は見直したはずだが?」
「早急に原因究明にあたっておられるそうですが、もうしばらくは離宮へ近付かない方がよろしいかと」
「・・・・・・そうだな。アレは以前から思い込みが激しくて被害妄想も酷いから接触しない方がいいな」
何やら不穏な発言があるが、俺に出来ることは何もないのでここは黙っておこう。
・・・・・・あ。
「ねえねえ、離宮に行かないなら城下街を見に行きたいんだけど・・・・・・ダメかな?」
ちょうどさっき思ってたことを提案してみた。
もちろん八割くらいは却下される前提だけど。
だって急に言っても警備だとか何だとか難しいよね?
だからダメ元だったんだけど・・・・・・。
「・・・・・・ふむ。そういえば城以外、見せたことないな」
「そうですね。獣人姿なら額の宝玉を隠せば正体はバレないでしょうし」
「俺が常に抱き上げていれば迷子になることもないし護れるな」
「私服でこっそり護衛を配置して・・・・・・」
・・・・・・もしもーし、おーい?
何やらサイファ達が乗り気で話し始めちゃったんだが?
いいのか、そんなにホイホイ決めちゃって?
てか、俺がサイファに抱っこ移動、すでにデフォルトなんだね?
別に楽だからいいけど、そんなに甘やかしちゃダメだろう?
そんな俺の心の声は誰にも届かず、こうしていきなりの外出が決まったのだった。
もうすっかり違和感なく慣れた体勢だな。
おかしいな。サイファともまともに付き合った時間は短いんだけど。
「───はぁ、いい匂い」
俺の旋毛に鼻先を埋めてクンクンと匂いを嗅ぐサイファ。
変態っぽいから止めてくれるかな?
なんとなく護衛騎士達の生温かい視線が気まずい。
「ねぇ、さっきの声の主のこと心当たりあるのか?」
「っ・・・・・・」
俺がおもむろに聞くと、サイファは一瞬ピクッとした。が、またスーハーと俺を吸いだした。
誤魔化すというより気持ちを落ち着けてる感じ?
「・・・・・・サイファ?」
「・・・・・・ああ、うん・・・・・・ちょっと待ってくれるか? もうじきナージュが戻るだろうから」
「・・・・・・おけ」
どうも言いたくなさそうだったからそう頷いてひたすらサイファに吸われていた。
俺はその間暇だったから、四阿から見える景色をキョロキョロと目だけ動かして眺めていた。
───そういえば、お城の外・・・・・・城下街とかってどんな感じなんだろ?
サイファと一緒なら街歩きとかって出来るかな?
お城が中世のヨーロッパっぽい作りだから街の建物もレンガ造りとかカントリー風なのかな?
小島に一人で住んでたときは全くそんな気はなかったのに、一度、外を知っちゃうともの凄く気になる。
そんなことをつらつらと考えていたらナージュと護衛騎士が戻ってきたようだ。
「お待たせいたしました」
「・・・・・・どうだった?」
「───ぅひゃっ、ちょ、サイファ!」
ナージュの声にチラッと目線だけ向けて俺のモコモコのケモ耳辺りで話すサイファ。
擽ったいから止めろ。
俺の抗議の声をまるっと無視してスーハーしながらぎゅっと抱き付くサイファ。
更に文句を言おうとしたけど、その不機嫌な様子に溜め息を吐いて口を噤み、黙って話を聞く姿勢になる。
コレ、絶対にいい話じゃないよな。
案の定、トラブルの話だった。
「サイファ様のはとこにあたられますルモイ侯爵令嬢が無許可でこの王族のプライベートの区画に入り込み、なおかつサイファ様の離宮へも立ち入ろうとなさってます」
ナージュの言葉に俺は確認の意味で聞いてみた。
「はとこっていうと、えーとサイファのお祖父さんかお祖母さんの兄弟の孫ってこと?」
「そうだ。祖母──前王妃の妹の孫で父とは従兄弟になるルモイ侯爵家の令嬢だな。だが王族の血は入っていない部外者だ」
ふんふん。すると、王家とは外戚関係で王家の血筋ではないってことか。
それなのにこの区画に勝手に入って騒いでるってこと?
「ソレって警備の観点から見てもヤバい案件」
俺が思わずそう呟くと、サイファ達も渋い顔で頷いた。
「だろう? 一体どうやって潜り込んだんだ。陛下も徹底的に警備は見直したはずだが?」
「早急に原因究明にあたっておられるそうですが、もうしばらくは離宮へ近付かない方がよろしいかと」
「・・・・・・そうだな。アレは以前から思い込みが激しくて被害妄想も酷いから接触しない方がいいな」
何やら不穏な発言があるが、俺に出来ることは何もないのでここは黙っておこう。
・・・・・・あ。
「ねえねえ、離宮に行かないなら城下街を見に行きたいんだけど・・・・・・ダメかな?」
ちょうどさっき思ってたことを提案してみた。
もちろん八割くらいは却下される前提だけど。
だって急に言っても警備だとか何だとか難しいよね?
だからダメ元だったんだけど・・・・・・。
「・・・・・・ふむ。そういえば城以外、見せたことないな」
「そうですね。獣人姿なら額の宝玉を隠せば正体はバレないでしょうし」
「俺が常に抱き上げていれば迷子になることもないし護れるな」
「私服でこっそり護衛を配置して・・・・・・」
・・・・・・もしもーし、おーい?
何やらサイファ達が乗り気で話し始めちゃったんだが?
いいのか、そんなにホイホイ決めちゃって?
てか、俺がサイファに抱っこ移動、すでにデフォルトなんだね?
別に楽だからいいけど、そんなに甘やかしちゃダメだろう?
そんな俺の心の声は誰にも届かず、こうしていきなりの外出が決まったのだった。
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