男前で何が悪い!

エウラ

文字の大きさ
上 下
54 / 54

53 御対面 3

しおりを挟む

バーンと開いた扉の向こうからキラキラしいイケオジがズカズカと入ってきた。
アイスブルーの切れ長の瞳をにっこり垂れさせて長い銀髪を緩く縛ったガタイのいい美中年。白い軍服みたいなかっちりした服に、表地は白く裏地が紅い豪奢なマントを肩に引っかけている。

「やっと帰ってきたかロルフ! 待ちきれずに来てしまったぞ!」

そう言って両手を広げて近付いてきたので、俺は正面から抱き付いていたロルフから思わず距離を取ろうとして───失敗した。

一応離れたのだが、素早くロルフに右腕で腰を拘束されてロルフの右側にガッツリ引っ付く形になっただけだった。

「それ以上近付かないで下さい、父上」
「なんでだ! せっかくの親子の感動の対面だというのに!」
「そのまま抱き付いてきたらセッカも巻き込まれます。潰れます。そもそもセッカに触れないで下さい」

ガーンという顔で手を広げたまま立ちすくんだ推定ロルフパパ。
そこに素早くやって来た綺麗な美人さんがハリセンでスパーンとその後頭部を張り倒した。
・・・・・・この世界にもあるんだ、ハリセンって。

「貴方は! 何時も言ってるでしょ! 落ち着きなさいって!」
「ごっごめんなさいごめんなさい!」

美人さんは長い銀髪に金色の瞳でほっそり儚げなのに容赦なくバンバン張り倒している。

───なにこのカオス。

「・・・・・・すまない。うちの親が・・・・・・」
「えーっと?」
「張り倒されてる方がこの国の王で、張り倒している方が王妃だ」
「煩くてすまない」
「はあ・・・・・・何となくそうかなって───え? 誰?」

ロルフが申し訳なく謝ったあとに初めて聞く声がして、ぽけっと返事をしたあと気付いてハッとした。
ロルフ達は苦笑している。

「兄上達、お久しぶりです」
「アドルフォ殿下、アマロック殿下。御無沙汰しております」
「お久しぶりです。お元気そうですね」

ロルフが兄上達と呼び、スレッドが現れた二人をそう呼んで、ダートが割と軽い感じで声をかけた。
ということは、ロルフの上のお兄さん達───つまりは第一と第二王子殿下ってことか。

「セッカ、紹介するよ。第一王子のアドルフォ兄上と第二王子のアマロック兄上だ。兄上達、彼が私の番いのセッカです」
「初めまして。セッカと言います」
「うん、初めまして。アドルフォだ。アルファで一応、王太子やってる。ここでは堅苦しい挨拶はなしでね」
「初めまして、セッカ。アマロックだよ。私も気楽に話して欲しいな。同じオメガだし」

ロルフの紹介のあと気さくに話しかけられて、俺もホッとした。
ていうか、アッチは放って置いて大丈夫なのか?

俺の視線がチラッと向いたのに気付いたアドルフォが笑って言った。

「国王のウルリケと王妃のフロスティだ。私達の両親だが・・・・・・何時もこんな感じだからねぇ。気にしないで」

そう言われても気になるんですけど!

「はあ、えっと、はい。あ、こちらは私の従魔のコハクです」
『・・・・・・よろしくな』

俺の紹介で仕方なくクルルと鳴くが、どうにも居心地悪そうだ。本当にお前、何したの?

「従魔・・・・・・ふーん。あとで姿を見せてくれる?」
「えっと・・・・・・?」
「あぁ、アドルフォ兄上は魔力感知に優れているから、擬態を見破っているんだと思う」

ロルフにコソッと耳打ちされて思わずアドルフォを見るとニコッとされた。

「マジ? あー、ちょっとコハクと要相談で・・・・・・」
「ふふ、期待してるよ」

若干、黒いオーラを醸しだすアドルフォにコハクはぎこちなく顔を逸らす。
俺もちょっとビビりながら曖昧に頷くに留まった。

アドルフォ殿下、怖え・・・・・・。

俺は癒しを求めて、未だにバシバシやり合ってる国王夫夫を思わず見つめるのだった。






しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(74件)

いぬぞ~
2024.04.27 いぬぞ~

王妃元気がいいなぁ。

エウラ
2024.04.27 エウラ

セッカみたいな戦闘力はありませんが、精神的にやり込めます😆
ハリセンは攻撃力低いので、王妃でもバシバシ出来ますw

解除
四葩(よひら…紫陽花の別名です)

私もガラケー時代は涙を飲んでました。そしてある日、ガラケーがアプリ読書は出来てもかかってきた電話がとれず💧←すでに電話として使えてないw
なのでスマホデビュー……と同時にアプリ読書開始。

アルファさんで素敵な小説を見つけ、そこで発掘開始……で今に至りますw

王妃様、とても素敵な武器をお持ちで(笑)
いいですよね、ハリセンは音は派手だけどダメージ少なくて🤣

それを当たり前にスルーする息子達……なるほど、バカップル両親でしたか💡子供の立場としては羨ましいですね、仲良し両親で✨

それにしても、来て早々目をつけられてますが、コハクはかつて何をやりかしたのか(笑)→やらかしてる前提での意見w

エウラ
2024.04.26 エウラ

ありがとうございます😄
日々ウェブ小説漁ってます(笑)

ロルフの家族も個性的に😅
何処の世界もオカンは強い・・・・・・と思ってw
そしてコハクさん・・・・・・何やらかしたw
王太子に身バレしてそう!?

解除
いぬぞ~
2024.04.24 いぬぞ~

ここも息子(弟)大好き一家か。

エウラ
2024.04.24 エウラ

わははw
不仲よりもいいでしょう😆

解除
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄された転生令嬢はレベルアップする

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:7,714

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:31,489pt お気に入り:1,387

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:5,978pt お気に入り:4,173

癒しが欲しい魔導師さん

BL / 連載中 24h.ポイント:312pt お気に入り:2,726

父は迷いを捨てて息子を愛する

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:44

真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

BL / 完結 24h.ポイント:1,847pt お気に入り:5,143

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。