男前で何が悪い!

エウラ

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50 一時帰国 4

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何だかんだと大騒ぎしながら、あの後野営地で二泊した。

リンリン達はどうやらセッカに胃袋を掴まれたようで・・・・・・。

「荷馬車に一緒に乗って下さい! その方が効率的です」
「ああ、うん。じゃあそのお礼にご飯は俺が用意するよ」
「いえ、対価を支払ってセッカ殿を隣国に着くまで料理人として雇います!」
「・・・・・・料理人・・・・・・アレ? 俺って料理人?」
「まあ、気持ちは分かる」
「でも半分合ってるんじゃね?」
「・・・・・・確かに」

リンリンがキッパリ言うので、俺は戸惑ってロルフ達に確認してしまった。だが苦笑いで流された。

「まあ・・・・・・うん。もういいや。じゃあそれで。三食作ればいい? おやつもいる?」
「おやつ!! 是非!!」

嬉々としてそう言うリンリンとエインス達に呆れながらも、俺は悪い気がしなかった。

「落ち着いたら屋台とか小さい食事処とかもいいなあ」

スローライフ憧れる。

「いいと思うが、ゆっくりは無理じゃないかな?」
「いやいや、一日限定何組までとかにすれば・・・・・・」
「たぶん何年待ちって予約で埋まるな」
「うんうん。たぶんのんびりとは無縁になるね」
「・・・・・・じゃあ、止めとくか」
「お菓子とかなら日保ちするものを作り置きしてウチの商会で取り扱えますよ」

不意に話に入ってきたリンリンに、あっと気付く。

「そっか、別に俺が売らなくてもいいんだよな。リンリンに卸して売って貰えばいいんだ。じゃあその辺も相談しよう! ルゥルゥ、いい?」
「セッカのしたいようにしたらいい。俺はサポートするだけだ。まあ、あんまりなときは止めるけどな」
「よっしゃ!」

俺がガッツポーズをするのを見て、リンリン達が不思議そうにしていた。

「思ってたんですけど、どうしてセッカ殿はロルフ殿にいつも確認を取るのです?」
「あー、ルゥルゥが俺の番いだから?」

そう言うとロルフが俺の腰を抱き寄せた。

「手ぇ出すなよ」

ちょっと睨んでいる。番っているんだから大丈夫だって。

「・・・・・・はあ!?」
「えっ、セッカ、番ってたんだ!?」
「えっえっ? ロルフと!? え? どっちがどっち!?」
「そこ聞くんだ? 俺がオメガで嫁だよ」

そう言うとリンリンが驚いて言った。

「セッカ殿、オメガだったんです!? てっきりアルファかと・・・・・・」
「アルファっぽくしてたからな。元々、俺強いし」
「───はあ・・・・・・セッカ殿達といると驚くことばかりですね」
「退屈しなくていいぞ」

リンリンの言葉にダート達が笑って言った。

そんなこんなで俺の料理を堪能しながら三日目の昼前に辿り着いた関所。
国境だからか、物々しい警備で衛兵がたくさんいた。

「私達は商人用の門に並ぶんですけど、セッカ殿達は冒険者用の門ですか?」

リンリンがそこそこ長い列の商人用の門に向かうというので俺達は手前で降ろして貰う。

「いや、俺達はアッチ」
「ダート、頼む」
「了解。ちょっと待て」
「アッチって?」

ロルフが顔を向けた方向にある門にダートが向かった。
アレは何の門?

「貴族用の門だ。そんなに待たないで入れるからこういうとき便利だな」
「そんなのあるんだ?」
「国境だからな」

俺とロルフがそんな会話をしていると、リンリンが顔を青ざめさせていた。

「・・・・・・え、セッカ殿達は御貴族様だったので?」
「え? 俺は違うよ?」
「・・・・・・俺と番ったんだから一応、貴族だが?」
「そうなの? 面倒臭いな」
「まあ、俺は基本、冒険者だから社交は免除されてるから心配しなくていい」
「そうなんだ。やりぃ!」

貴族面倒臭いから、もうやりたくない。
そう言っているとダートが衛兵を一人連れて戻ってきた。

「ロルファング第三王子殿下、無事の御帰還喜ばしく思います」
「あぁ、久し振りだな。ご苦労、衛兵隊長。話は聞いたと思うが、俺の番いのセッカだ」
「セッカと申します。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願い致します! ささ、あちらからどうぞ中へ。陛下にも報せを送っております」
「すまない。・・・・・・あぁ、彼は王室御用達のリン商会の商会長のリン殿だ。道中知り合った。丁重に持てなしてくれ」
「畏まりました」

リンリンとエインス達も唖然としているウチにあれよあれよと門の中に招き入れられて詰め所の応接室に通された。

「・・・・・・ロルフ殿が、第三王子殿下・・・・・・」

呆然としたリンリンの声にダート達が苦笑した。

「黙ってて悪かったな。ちなみに俺はロンダートという。ここの大公家の三男」
「私はそこのノゥザンフォレット辺境伯家の四男でアルスレッドといいます」
「俺は訳あって今はただの平民で元貴族。名前はそのままセッカでいいよ」
「俺は幼いときから城を離れていて公式の場には出てないから知らなくても無理はない。別に不敬だとか言わないから安心しろ」
「いや無理だろう」

俺は彼らの代わりにツッコんだ。コハクはいつも通りの鷲に擬態しているが何となくそわそわしている。

───前に言ってた『やらかし』が気になるのか?

これからひと悶着ありそうだなと内心で溜息を吐くのだった。





※コハクはやらかしとは言っていないと思うよ、セッカ。やらかし前提で考えるほどコハクはおっちょこちょい?





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