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49 一時帰国 3
しおりを挟む「・・・・・・あのー」
わいわいと騒ぐ俺達の元に、あちらの商人が声をかけてきた。その後ろを慌てて着いてくる冒険者達。
「はい? あっ、煩くてすみません! すぐに片付けますね」
うっかりしてたと、慌ててサラマンダーをインベントリにしまうと、中で自動で解体され、分類された。
「いえいえ、そうではなくてですね、今のサラマンダー、不要なところがあれば私に買い取らせて欲しいのですが」
「え? はあ、別に構いませんけど、えっと」
「あっ、申し遅れました。私、隣国エーデルシュタインの王都で商会を営んでおります、リーリン・リンと申します。どうぞリンリンとお呼び下さい」
そう言って商人ギルドのギルドカードを見せてくれた。腰までの長い紺色の髪と瞳の優しそうな中性的な顔立ちで着痩せするのか細身の、でも俺より頭半分大きい背の好青年。
「・・・・・・商会長。若いのに凄いんですね」
青年──リーリンはロルフ達くらいのまだ二十代半ばに見える。
それで自分の店の商会長だなんて相当のやり手なのだろう。
「『リン商会』・・・・・・ここ数年で頭角を現してきた今勢いのあるところだな」
「そうなのか?」
「ああ。エーデルシュタイン王家とも取引があるぞ。質と価格が申し分ないらしい。確かフォルセオの街のソマリ殿とも取引してるはずだ。安心していいと思う」
ロルフが聞き覚えがあったらしく、そう言ってきた。ダート達も頷く。
「それなら・・・・・・。俺はセッカ、Aランク冒険者で彼らもAランク冒険者でパーティーを組んでる」
「ロルフだ」
「ダートです」
「スレッドです。改めてよろしくお願いします」
そう挨拶すると、護衛の冒険者パーティーも自己紹介してきた。
「俺はこのパーティーのリーダーでエインスという」
短い黒髪黒目でがっちりムキムキな剣士かな。
「俺はアラートだ。見ての通り盾メインだ」
そう言った彼は焦げ茶色の短髪に薄い水色の瞳。エインスよりも背が高く、胸板も厚い筋肉マンだった。
「俺はユアン」
ボソッと一言そう言う彼はミディアムの茶髪に緑の垂れ目の瞳で俺よりは大きいが全体的に小柄で斥候タイプな体格だ。
「トーリだ。ウチらも四人とも皆Aランクなんだ。よろしくな」
長い金髪を三つ編みしていて、蒼い瞳。ローブで分かりづらいが、俺よりも細い気がする。魔法使いかな。
そう分析しているとコハクの念話が聞こえた。
『おい、我を忘れているぞ!』
コハクがクルルッと鳴いてハッとする。
「そうそう、俺の従魔のコハク。普段はこのサイズで、戦闘時はこのくらいなんで驚かないでくれ」
俺がそう言うと一瞬三メートルくらいになってからまた小さくなった。
「おお、了解。その従魔が狩ってきたのか?」
「今回の獲物はね。自分の食い扶持だよ」
「大森林でな」
「「「えっ!?」」」
「凄いですね! 他にも狩ってきたのですか!?」
「そうみたい」
「・・・・・・従魔がこの大森林で食い扶持を?」
「マジ有り得ないんだが」
「リンリン殿、大興奮だよ」
初対面の時のロルフ達以上に驚き困惑するエインス達を他所に盛り上がる俺とコハクとリンリン。
『ホレ、お次はコレだ!』
「こっ、これはレッドボアの、亜種!?」
「うん。お肉が赤身で食べ応えあるよ。毛皮は正直、ごわごわしてて良いモノじゃないよね」
「ですが、逆にそのごわごわがいい場合もあるのですよ。それも買い取らせて下さい!」
「いいけど、本当に? 損しない?」
「大丈夫です!」
等々、リンリンが書いた書類をしっかり読んでから署名をする。
それから野営の支度だと漸く動き出す。エインス達も途中だった作業を再開した。
「リンリン、素材はエーデルシュタインに着いてから渡せばいい?」
すっかり意気投合してリンリン呼びになっている。
「はい。どのみち商談はキチンと書類を作って行わないとですし、今は仮契約書で交わしただけですので」
「じゃあ、俺達も一緒に移動しようか? いいよね、ルゥルゥ?」
ロルフにお伺いを立てると即答された。
「いいんじゃないか。別に向こうの国で急ぎの用があるわけじゃないし、そもそも関所までは宿もないしな。野営場所はどうせ同じだ」
「じゃあ、そういうわけで。向こうまでよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします!」
一旦別れて、各々、野営の準備を進める。テントを張りながらロルフが言った。
「セッカは飯の支度頼める? 俺達も終わったら手伝うから」
「りょーかい! 早速サラマンダーの肉を使って唐揚げにしようかな」
『唐揚げ! ヒャッハー!』
「なんかコハクがテンション爆上がりしてる」
「サラマンダーの唐揚げだってさ」
「え、それはめちゃくちゃウマそう!」
コハクの念話を聞きそびれたダートにスレッドがそう教えると、ダートもテンション爆上がりした。
それを見てエインス達もなんだなんだとやって来て、結局全員でサラマンダーの唐揚げを食べまくることになるのだった。
「明日はボアをカツにしようかな。生姜焼きもいいよな」
「それはどんな料理なんだ!」
「美味いんだろう!?」
「報酬は払いますから、是非食べさせて下さい!」
「分かった! 作るから、もういい加減寝る支度しろ!」
俺の呟きにまた全員が大騒ぎになり、中々就寝出来ないのだった。
※旅の仲間が増えてしまった。短編で終わらないよう・・・・・・。
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