男前で何が悪い!

エウラ

文字の大きさ
上 下
40 / 54

39 閑話 ウェイバー侯爵家次男リアム視点 2

しおりを挟む
※続きなので忘れないうちに連投、本日二回目です。
こちらを先に見た方は一つ前の「1」を先にお読み下さいませ。






何とも微妙な空気になった侯爵家に、空気を読まない人物が現れた。

「あーあ、ショボい『魅了チャーム』にかかってんなあ・・・」

艶やな黒髪に深紅の瞳の吸血鬼ヴァンピール・・・その真祖であるアルカードだった。

「───っな、吸血鬼?! どうしてここにっ!! こんな昼日中に何故動ける?!」

王宮騎士団を始めリアム達も身構えたが、当の吸血鬼本人はなんてことないようにケラケラと笑った。

「あー、うん。ええと俺、吸血鬼の真祖だから。そしてあの子アシェルの友人だから。───うん? どっちかというと爺様枠? まあいいか、どっちでも。それよりもコッチ。面倒臭いから『魅了』解除しておくぞ」

そう言って指パッチンすると、邸中に魔法が広がっていき、侯爵家の者達が次々に意識をはっきりとさせていく。

「・・・これは一体・・・?」
「・・・・・・何が・・・・・・?」

リアム達が呆然としているうちにアルカードがルカに迫っていた。

「お前は。人の身にこの『魅了』は毒だ。故に封じさせて貰う」

そう言うと、指先で何かを描いて額に押し付けた。
するとポワンと光ってから消えて、ルカが急に慌てだした。

「───え? うそ、ヤだ! 何で?! 使えない!!」

キャンキャン吠えているルカを尻目にアルカードはふわりと翔んで、騎士団に紛れていたロルファングの所へやって来ると囁いた。

「じゃあ俺はこれで。やることやったからな、ロルファング。後は頑張れよ」
「───助かった」

ボソッとお礼を言うと、にこっと笑って霧となり消えたアルカード。


───後は憑き物が落ちたような侯爵家の面々と、最後の悪足掻きとばかりに喚くルカが残された。



───結果、ルカが『魅了』で皆を操り、全く落ち度のないアシェルを貶め、事故に見せかけて殺し・・・・・・。
実際は生きていたらしいが、記憶喪失で冒険者として生きていたと。

それに気付いたルカが『悪魔の吐息』で秘密裏に、記憶の無いアシェル義兄上を殺そうとしていたなんて・・・・・・。

───逢いたい・・・・・・。

でも、今更どの面下げて逢えるんだ?
実の家族にぞんざいな扱いを受けて、更には命を狙われて・・・・・・。

───私は、項垂れるしか無かった。

結局、ウェイバー侯爵家は爵位剥奪、領地没収で平民落ちに。

王宮錬金術師への文書偽造だけでも大罪なのだが、『魅了』のせいなのとルカ以外はほとんど殺害計画に関わっていないからとの温情を受けた。
普通なら一族郎党、極刑だった。

義父達は田舎の片隅に小さな邸をあてがわれて質素に住まう事になり。
私・・・いや俺は、幼い頃に入るはずだった孤児院で子供達に勉強を教えたり手伝いをしつつ、冒険者登録をしてランクアップを目指している。

───いつか、アシェル義兄上だという冒険者に逢うために・・・。

当然、それが誰かなんてのは教えて貰えないので、情報収集をしつつ。
義父達にも育てて貰った恩があるので少ない稼ぎから少しでもと仕送りをする。

・・・・・・大丈夫。

俺にはまだ、ネックレスがある。

アシェル義兄上の魔力で仄かに光るそれを胸にしまうと、今日の依頼の魔物の討伐に向かう。

いつか、頑張ってもっとランクアップして、この街を出てアシェル義兄上を探すんだ。

そして謝りたい。
どんなに自分が世間知らずで愚かだったか。
それはきっと自己満足だけど。

あと一つ・・・・・・。

絶対叶わないと思うけれど。

「───好きだ」

コレだけは伝えたい。

「迷惑だろう。コレこそ自己満足だろう。・・・けど」


───けじめだから。




蒼く澄んだ空を見上げる。


遠く、険しい道のりだけど。


これはきっと、俺の贖い・・・・・・。






しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

一日の隣人恋愛~たかが四日間、気がつけば婚約してるし、公認されてる~

荷居人(にいと)
BL
「やっぱり・・・椎名!やっと見つけた!」 「え?え?」 ってか俺、椎名って名前じゃねぇし! 中学3年受験を控える年になり、始業式を終え、帰宅してすぐ出掛けたコンビニで出会った、高そうなスーツを着て、無駄にキラキラ輝いた王子のような男と目が合い、コンビニの似合わない人っているんだなと初めて思った瞬間に手を握られ顔を近づけられる。 同じ男でも、こうも無駄に美形だと嫌悪感ひとつ湧かない。女ならばコロッとこいつに惚れてしまうことだろう。 なんて冷静ぶってはいるが、俺は男でありながら美形男性に弱い。最初こそ自分もこうなりたいと憧れだったが、ついつい流行に乗ろうと雑誌を見て行く内に憧れからただの面食いになり、女の美人よりも男の美人に悶えられるほどに弱くなった。 なぜこうなったのかは自分でもわからない。 目の前のキラキラと俺を見つめる美形はモデルとして見たことはないが、今まで見てきた雑誌の中のアイドルやモデルたちよりも断然上も上の超美形。 混乱して口が思うように動かずしゃべれない。頭は冷静なのにこんな美形に話しかけられれば緊張するに決まっている。 例え人違いだとしても。 「男に生まれているとは思わなかった。名前は?」 「い、一ノ瀬」 「名字じゃない、名前を聞いているんだよ」 「うっ姫星」 イケメンボイスとも言える声で言われ、あまり好きではない女のような名前を隠さずにはいられない。せめて顔を離してくれればまだ冷静になれるのに。 「僕は横臥騎士、会えて嬉しいよ。今回は名前だけ知れたら十分だ。きあら、次こそはキミを幸せにするよ」 「はい・・・おうが、ないと様」 「フルネーム?様もいらない。騎士と呼んで」 「騎士・・・?」 「そう、いいこだ。じゃあ、明日からよろしくね」 そう言って去る美形は去り際までかっこいい姿に見惚れて見えなくなってから気づいた。美形男のおかしな発言。それと明日?? まさかこれが俺の前世による必然的出会いで、翌日から生活に多大な変化をもたらすとは誰が思っただろう。 執着系ストーカーでありながら完璧すぎる男と平凡を歩んできた面食い(男限定)故、美形であればあるほど引くぐらいに弱い平凡男の物語。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...