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31 真祖の吸血鬼情報網(ヴァンピールネットワーク) 2
しおりを挟むロルフを煽るようににこっとそう言って笑ったアルカード。
・・・絶対、揶揄って楽しんでる。
辺境伯を始め、皆が気付いていた。
長命種は娯楽に飢えているのだろうか・・・。
内心でやれやれと思うロルフ達。
そんなロルフ達を真顔で見据えてアルカードが告げた。
「コハクから少し一人にしてやれ、と言付かっておる。───セッカはああ見えて繊細なのだ。そもそも、理由も知らず9年も逃げ続けて神経を磨り減らしていたところに、立て続けに命を狙われて平気なわけあるまいて」
「───え、9年・・・って?」
アルカードの言葉に思わずシュネーが呟く。
シルヴィオとレオパルド、ネージュも怪訝そうにアルカードを見やった。
アルカードはといえば、チラリとオーウェンに視線を向けていた。
「伝えておらんのか?」
「・・・先日、セッカ殿が命を狙われた後、ロルフとフォルセオの冒険者のギルマスから連絡を受け取った際に、何処からか情報が漏れている可能性を指摘されたので、俺のところで一時止めていたのです」
「・・・・・・どういう事?」
シルヴィオがオーウェンに問い詰めた。
オーウェンはシルヴィオ達に話し始める。
「・・・前回、吸血鬼を使ったセッカ殿の殺害計画は、おそらく冒険者ギルドから魔力を元にリークされた情報で練られたということだ。幸い、フォルセオのギルドはウチの息がかかっているため関わりは無かったが・・・」
「大体、登録された冒険者の魔力をホイホイと他人には教えない。個人情報だ。ギルドの信用に関わる。ソレを相手は隠れてやってのけたということだ」
ロルフが補足する。
例え相手の魔力を元に聞かれても、はいそうですかと応えることはギルドの規範に抵触する行為だ。
だが今回、何処かの冒険者ギルドがソレをやらかしたのだろう。
その特定には至っていないが。
「そしてそのやらかした冒険者ギルドは、ご丁寧に、セッカがフォルセオで活動中なことを相手に伝えた。結果、命を狙われて・・・」
「ちょっと待って、そこまでしてセッカさんの命を狙う理由は? 単にロルフと良い仲だったから嫉妬したとかじゃ無いのか? 今回みたいにちょっと脅すくらいの・・・実際は命を狙われた訳だが」
ネージュが疑問に思ってそう言うと・・・。
「アシェルなんだ」
「───え?」
「セッカはアシェルなんだよ。記憶喪失で本人は覚えていないが・・・」
ロルフがそう告げると、オーウェンも頷いた。
「本人から聞き出したそうだ。ブレスレットに名前が刻まれていたと。壊れた馬車を見て状況判断で命の危険を察知して、魔獣に襲われて死んだように偽装したそうだ。それを今回、皆に知らせようと思って、ココに呼んだんだ」
「・・・・・・え? でも、セッカさん・・・・・・オメガだって・・・聞いたよ? アシェル殿はアルファだったはず」
戸惑うシルヴィオにロルフが言う。
「おそらく馬車の事故・・・いやそう見せかけた事件だろうが、その時に記憶喪失になり、後天的にオメガになったらしい。髪もその時に黒髪から白髪になったようだ」
「───まさか、死にかけたショックで?」
「稀にだが、アルファからオメガになることもある」
成り行きを見守っていたアルカードがポツリと言った。
「───おそらく、絶望したのだろう。死を望まれて、アルファの自分は皆に望まれていないのだと。存在を否定された結果、アルファ性を消そうとして・・・」
───一緒に記憶も消したのかもな。
アルカードの言葉に沈黙が落ちる。
「───え、じゃあ、セッカさんは・・・記憶喪失のまま、狙われる理由も分からず、いるかも分からない追っ手を9年も警戒してたって事? 俺、そんな人に、勝手に囮のように・・・」
呆然と呟くシュネー。
「いい加減、セッカも緊張の糸がキレたのだろう。今は抜け殻のようになって眠っているそうだぞ。現実逃避とも言うな」
トドメのように追い撃ちするアルカード。
シュネーは床に埋まりそうなほど項垂れた。
皆も沈黙する。
「───さて、そんなお主らに朗報だ」
パンッと手を鳴らして空気を変えたアルカードが、にっこり笑って言った。
「アイスの村での一件と辺境伯家の今回の殺害未遂は繋がっておる」
・・・・・・いやそれ、朗報って言うのか?
思わずアルカード以外の全員がスンッて顔になった・・・。
※ちょっと短めですが、切り良いところで。
シリアスが過ぎる・・・。書くのが疲れるので筆が重いです。
ちょっと補足というか・・・。
強制発情後のギルド訪問でギルマスに会って事情を話す描写が抜けてましたので25話に追加修正しました。PT登録の辺りです。すみません。今気付きました。
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