男前で何が悪い!

エウラ

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30 真祖の吸血鬼情報網(ヴァンピールネットワーク) 1

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「───そこの、辺境伯殿。コハク達がおらんでの、代わりにロルファングを呼んでくれるか? ・・・無理なら勝手に探すがの」

長い髪を揺らし、ゆるりと言う見目麗しい青年の吸血鬼に言葉を無くしていた辺境伯家の面々だったが、いち早く我に返ったのはスレッドだった。

「───もしかして、コハク殿と知己という吸血鬼の真祖様で御座いますか?」
「ああそうだ。よい、普通に話せ。いやなに、この間の我が吸血鬼族の輩の不始末の詫びで色々と情報を探ってひとまず精査し終えたのでな、連絡をと思って参ったが・・・どうやら訳ありのようだの。ふむ、ちいと遅かったの。すれ違ったか」

思案げにしたあと、そう呟く吸血鬼の青年。

「───おお、そうだった。俺は吸血鬼族の真祖でアルカードという。よろしくな。下位のモノがたまに悪さをするが、俺等も制裁するがそちらで狩って貰っても構わんのでな。気にするな」
「・・・・・・は、あ・・・・・・ソウデスカ」

思わず片言になるスレッド。
ここで漸くオーウェン達も復活した。

「っ、ロルフを呼んでこい」
「分かった!」

ネージュがロルフを呼びに駆けていく。
それを見送ってからアルカードに挨拶をした。

「お初にお目にかかる。ノゥザンフォレット辺境伯当主、オーウェンと申す」
「番いのシルヴィオです」
「長子のレオパルドです。先ほどの者は次男のネージュ、こちらは三男のシュネーで」
「四男のアルスレッドです」
「・・・・・・うむ。よろしくな。ではロルフ達が揃い次第、話をしようかの」

そう言って勝手にその辺のソファに腰を下ろして寛ぎ出すアルカードにポカンとしつつも動き出すオーウェン達。

するとアルカードが一人呟きだした。

「───ふむ。・・・・・・ああ、それは・・・・・・仕方あるまい。・・・む、それは構わんが・・・・・・はあ、分かった。俺も気に入っているからな」

───誰かと念話だろうか、と黙って注視していると、ロルフとダートが駆け足に近い速さでやって来るのが見えた。
そのすぐ後ろを呼びに行ったネージュが追いかけてくる。

「アルカード殿・・・! 何か分かったのですか」
「おう、この間振りだな、ロルファング。いやなに、この間のアレから得た情報を元に色々と探りを入れてな。確実な情報モノだけでもと思って参ったのよ。そうしたら・・・何やらひと悶着あったようだな。とにかく座れ」

辺境伯家なのだが、我が家のように振る舞うアルカードだった。
まあ、格が違うので仕方がないが。

ロルフとダートも揃ったので、アルカードが話し出した。

「俺の持ってきた情報はこの前の、我が同胞だった下位貴族のセッカ殺人未遂な。尋問の結果、アイツと直接取引をした輩はフォルセオの街に来ていた行商人だと分かった」
「行商人? 何故そんなヤツが? そもそも普通に考えてそんな簡単に吸血鬼と接触など出来ないでしょう?」

アルカードの言葉にロルフが疑問を投げかけた。
それに頷くアルカード。

「うむ。その通り。吸血鬼に会うことすら難しい。では何故、接触出来たのか・・・。それは、フォルセオの街の神殿にいる、とある神官のおかげだな。───まあ、おかげとは言わんか。巻き込まれた方だからな」

アルカードは少し考えて言い直した。
ロルフが怪訝そうに聞いた。

「・・・巻き込まれたって、どういう・・・」
「うむ。この前捕らえたアイツは偏食家でな、大好物は神官の血なのよ」
「───私達の常識では、聖なる者の血は吸血鬼には毒だという認識ですが・・・」
「まあ、俺や上位の吸血鬼には、単なる不味い血、くらいだが、下位の者には毒となろうよ」

そう、なんでもないように笑ったアルカード。

「で、どうやらここ最近はその神官の血の薫りに惹かれて、ふらふらと神殿近くを彷徨いていたようだな。だが下位貴族ゆえ、さすがに聖域の神殿内部には踏み込めない。そこで行商人が、取引に応じれば神官を上手く神殿から連れ出してやる、と」
「口車に乗ったんですね?」
「その通り」

ロルフは溜息を吐き、アルカードはニタリと笑った。

「その行商人に唆された訳だ。セッカという冒険者を探し出して殺せば、報酬として神官を差し出すと。結果、セッカは死にかけたが、俺が助けたので死なずに済み、アイツは俺等に捕まって今、死ぬほど辛い目にあっているわけだ」

ぞっとする冷たい瞳でロルフ達を見やったアルカード。
さすが真祖の風格だと息を飲んだ。

しかし、不意に殺伐とした空気を消してアルカードが言った。

「───で、そっちは一旦置いておいて・・・。こちらで起きた事件の話だが・・・・・・」
「・・・・・・辺境伯家ウチの使用人が、ロルフに横恋慕していたらしく、暴走したウチの三男のせいでセッカ殿が毒殺されそうになった事ですね」
「うむ。そのせいでセッカはコハクと共に姿を隠したとな?」

面白そうな顔で情報を追加するアルカードに、先ほどの念話はコハク殿だったかと腑に落ちたオーウェン。

「・・・先ほど、誰かと念話をしていたようですが」
「ああうん、コハクとな。情報を共有せねばいかんだろう? そこで其方らのやらかしを大ざっぱに聞いたのよ。・・・セッカ、だいぶメンタルやられてるらしいぞ?」
「───っ!! 今、どこにいるかは・・・?!」

ロルフが思わず声を荒げたが、アルカードは動じない。

「内緒」

そう言ってにこっと笑った。






※まだ謎解きは終わらない。
もう少々お付き合い下さいませ。





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