男前で何が悪い!

エウラ

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29 辺境伯家、全員集合!(side辺境伯家)

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「───で?」
「・・・・・・やらかしたんだって? シュネー」
「お前さあ・・・いっつも言ってんじゃん。大事って。意味分かってねえの? 報告・連絡・相談って意味なんだけど」

上から順に、シルヴィオ・レオパルド・ネージュとなる。

シルヴィオはオーウェンの番い、レオパルドは長男、ネージュは次男である。

そして縮こまって針のむしろ状態のシュネーは辺境伯家の三男だ。
今回やらかした張本人である。

ちなみにスレッド・・・本名はアルスレッドというが、彼は実は辺境伯家の四男、末っ子である。

ロルフとダートはこの場にはいない。

事件の関係者ではあるが、関わった者の中にいたのは辺境伯家の三男。
自分達部外者が口を出す気はなかった。
・・・・・・いや口よりも手が出てフルボッコする未来しかないので。


シルヴィオ達三人は、ロルフ達がセッカを連れて帰省予定の日時に泊まりでどうしても外せない領地の視察があったために、シルヴィオがレオパルド、そして補佐としてネージュを連れて出かけていたのだ。

すでに一泊して視察を終えていたが、時間も遅いのでもう一泊して朝イチに辺境伯邸に向かう予定だった。
それが緊急の報せに慌てて自分達の宿泊をキャンセルし、御者は馬車があったのでそのまま泊まって翌日帰るように言い置いて、自分達は獣化してトップスピードで駆けてきたのだ。

そして着いてみれば、邸中大騒ぎで今に至る。

辺境伯家ウチの問題児・・・シュネーがやらかした事を知ったわけだ。

「すでに事情聴取は済んでいるが・・・セッカ殿が行方を眩ませた」

苦い顔でオーウェンが言う。

「───まさか本人はおろか誰にも一言も了承も得ずにセッカ殿を囮にするなんて・・・」
「一言言ってくれたら・・・」
「絶対に止めさせてたな」

全員に冷たく見据えられて、普段、楽天的で陽気なシュネーもさすがに居心地が悪そうだった。
ガッツリ土下座をしている。

「・・・・・・本当にすみませんでした・・・・・・」

オーウェンが深い溜息を吐く。

「・・・俺は事前情報で、セッカ殿が先日命を狙われて瀕死だったと告げなかったか?」
「・・・・・・それは、はい。・・・聞いてました」
「なのに何故、再び命を狙われそうなときにこんな馬鹿げたことを・・・・・・」
「───単純に、犯人ホシの手がかりが掴めそうだと・・・・・・。まさか辺境伯家ウチの中で凶行に及ぶなんて思わなくて・・・。精々が、ヤツの言うとおり媚薬的なモノだろうと、楽観視してました」
「・・・・・・だが、結果・・・使われた薬は『悪魔の吐息』だった」
「「「っ!!」」」

訥々と話すシュネーの言葉を聞いていたシルヴィオ達は、オーウェンの言葉に息を飲んだ。

「───『悪魔の吐息』って・・・」
「本当なの、オーウェン?!」
「何処からそんなの、手に入れたんだ」

ネージュは息を飲み、シルヴィオは信じられないと目を見開き、レオパルドは冷静に応えた。

「それを今、探らせている。半年ほど前に雇ったパンテルという侍従が誰かのコネで得たらしいが、本人も媚薬だと思っていたそうだ」
「・・・彼が・・・? 彼は確か信頼のおける貴族家の紹介状を持っていたはずだが・・・」

シルヴィオも困惑している。

「ああ。感情を面に出さずに淡々と仕事を熟していたから、問題無さそうだと思っていたが・・・どうやらロルフ目当てだったらしい。事件直後、媚びて泣いて言い訳をつらつらと言う様は酷く醜く、普段からは想像もつかん。・・・滑稽だったな・・・」

オーウェンが苦い顔でそう言い捨てた。
信頼を裏切られたのだ。

───そしてそれはセッカにも言えることで・・・。

「ウチでさえこうなのだ。セッカ殿は・・・やっと心を開いてくれたところだった。ロルフ達に頼ると、やっと一線を越えてくれたところにこの仕打ち・・・。その心労は如何ほどか・・・計り知れん」
「───逃げ出す気持ちも分かる」
「・・・ロルフも、見ていられんほど憔悴している。せっかく念話出来ていた幻獣コハク殿にも拒否されてしまい、魔力も完全に隠されてしまったようで、見つけられないそうだ・・・」

スレッドが同意していると、オーウェンの魔力の単語で思い出したように言った。

「魔力っていえば、パンテルアイツ、セッカのネックレスを盗んでいたな」
「───何?! 聞いてないぞ!」

オーウェンが初耳だと驚いた。
よもや自分の家で雇い入れた使用人が、客の荷物を漁って盗むとは思うまい。

コレは本当に辺境伯家のミスだ。
シルヴィオ達も渋い顔で聞いている。

「俺達もセッカの魔力を微かに感じてさっき気付いたから・・・。おそらく入浴中にでもマジックバッグを漁ったんだろう。アイツは自分のモノだと主張したが、見事な細工で大きな魔石だけでもかなりの価値のもの。ただの侍従がおいそれとは手が出せない額だ。何より魔法付与された魔力はセッカのものだ。間違いない」
「───なんて事だ・・・。俺達は、そんな屑をセッカの世話役に付けたのか・・・・・・。そりゃあ信頼は地に落ちるよな・・・」

一同、ガックリと肩を落とし、当事者のシュネーは更に縮こまった。

───そこに空間が揺らいで、ナニかが現れた。

全員が一斉に警戒する中、ゆらりと現れたのは───。

「───アレ? コハクは? セッカは? おらんのか? ・・・・・・じゃあ、ロルファングは?」

首を傾げる、長い黒髪に深紅の瞳の吸血鬼ヴァンピールの真祖・・・アルカードだった。





※言い訳をさせて貰えるなら、シュネーは短絡的で思考が浅く、良かれと思って一人で暴走してやったことが、丸っきり空回りで余計に拗れる・・・という性質なんです。
悪人では無いんです。
悪人の一味では無いんです!

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