男前で何が悪い!

エウラ

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20 夜の帝王 3(sideロルフ)

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※今回もちょっと流血表現があります。苦手な方は自衛をお願いします。




あの吸血鬼とセッカ達の戦闘が始まった。

俺は出るタイミングを逃した。
そもそも、この討伐依頼はセッカの受けたモノで、他人が勝手に手を出すのはルール違反だ。

トラブル防止の為、助力を乞われて初めて介入出来る。
まあ、セッカに危険が及べば、怒られようとも介入する心づもりだが。

ロルフは仕方なく、なるべく近付きつつ様子を窺っていた。

彼等の会話は狼の聴力で何とか拾えた。

───どうやら吸血鬼は誰かと取引をしてアシェル・・・今はセッカだが、彼の命を狙っているようだ。
しかもアシェルセッカの魔力を入れた魔石を元に探した、だと?

それならば確かに探そうと思えば探せる。
しかし9年も経って、今更?
それとも犯人は執念深く、ずっと探していたのか?
確実に殺すために・・・。

アシェルの魔力の入った魔石なんて・・・俺だってそんな貴重なモノ、持っていないのに。

魔力は一人一人違うものだ。
たとえ親兄弟でも、双子だとしても何処かに違いが必ずある。

だから冒険者ギルドで登録するときは偽造防止に魔力を使うのだ。
だがそれが今回、徒となった。

アシェル・・・セッカは記憶が無い。
だから何時何処で魔石に自分の魔力を籠めて誰に渡したのか、覚えていない。

故に、犯人の特定には至らない。

───だが、おそらくはアシェルの身内・・・。

追加で辺境伯に情報を渡さねば・・・慎重に。

そんな事を考えていたら、魔石の事や自分が命を狙われていることにセッカが動揺して隙を見せてしまった。

そこを突いた吸血鬼がセッカの心臓に剣を───!!

俺は狼のまま素早く体当たりをかましたが、吸血鬼にはあまりダメージは無く、しかしわずかに急所を外してくれた。

だが、セッカは血を吐き、仰向けに倒れていった。

踵を返すと、俺は人型へと変化し、地面に叩きつけられそうなセッカを間一髪で支える。

「───セッカ!」
「───、る・・・ごほっ・・・」

声を出そうとして血を吐くセッカ。
出血が酷い。
俺は慌てて胸の傷を押さえるが、止まらない。
バッグからハイポーションを出して傷口にかけると、何とか塞がったが、血を流しすぎたためか意識が遠退いていってる。

「セッカ!! 気をしっかり持て!!」

慌ててセッカの頬をぺちぺちと叩く。
不意に気配が増えて頭上から声が響いた。

「───おい、そこの若造。其奴をしっかり抱えていろ」
「・・・は?」
『───遅いぞ! コレだから長命種は時間にルーズでいかん!』

コハクがイラッとして叫んでいる。
さっきまでは聞こえなかった念話がロルフにもダダ漏れだった。

セッカに触れているからか。

ロルフは、コハクと急に現れた青年───おそらくかなりの上位の吸血鬼をポカンと見た。

「貴様も長命種だろうが、ったく・・・。・・・・・・おい、お前。俺は前にも言ったよな? 俺の知人の主に手を出すな、と。ちゃんと聞いてたよな? に手を出すな、と」
「───!! しっしししし真祖様・・・?!」

腰まである長い黒髪に深紅の切れ長の瞳の吸血鬼を見たソイツは、ガタガタと震えてどもりながら叫んだ。

───真祖?!
全ての吸血鬼の始まりの、長・・・?!

何でそんな凄いヤツが・・・・・・?
え?
コハクの、知人?!

セッカとコハクはずっと念話で会話をしていたので、ロルフはコハクに吸血鬼の知り合いがいた事を知らない。

「───何故、貴方様が・・・ここに・・・?!」
「先ほども言ったが? お前が殺そうとしたヤツは俺の知人の主だ。手を出すなと言っておいたはずだが? お前の脳ミソはノミ以下だな」
「───そんな、まさか・・・・・・だって、グリフォン・・・・・・?」
『・・・ああ。認識阻害が完璧すぎたか』

真祖の言葉に疑問を浮かべる吸血鬼の青年に、コハクがそう言って一つ頷くと魔法を解除した。

そこには見事な体躯のグリフォンが鎮座していた。

「───ひっ・・・・・・そんな・・・・・・嘘・・・・・・!」
「これしきの魔法も見破れんとはな・・・・・・。だからお前はそこまでの爵位小物なんだよ。処罰はに帰ってからだ。本当は今、この場で消してやりたいが・・・・・・命拾いしたな。・・・ね!」
「───ひ、ひいっ?!」

その場にもう一人吸血鬼が現れ、ソイツに拘束されてアイツは一瞬で消え去った。

「さて、ともかく彼の命が危うい。急ごう」

真祖は振り向きざまにコハクと目を合わせて頷くと、自身の唇をその牙で少し噛みきり、ロルフが抱えているセッカの口に唇を合わせた。

「───!! 何を・・・っ」
『ロルフ、少し我慢しろ。セッカを助けるためだ』
「!! ・・・・・・クソッ」

コハクに制止されて、堪えるロルフ。
一分ほど経っただろうか、真祖が顔を上げながら舌でペロリと血を舐め取って言った。

「俺の血で傷の治癒は格段に上がる。じきに傷痕も消えよう。吸血鬼は自己再生能力がもの凄く高いのでな。さすがに失った分の血は元には戻せんが。・・・何、これくらいの血では吸血鬼化せんよ。案ずるな」

ロルフの不安に気付いてそう言って微笑んだ。

「俺は吸血鬼族の長、真祖で名をアルカードと言う。グリフォン・・・今はコハクか、彼とは古くからの知己でな。・・・此度は俺の一族の者が失礼をした。厳罰に処すると共に出来うる限りの協力を約束しよう」
「───それは、助かります。あの、アイツが取引をしたらしい相手の情報とかセッカの命を狙っていたこととか知りたいのですが・・・」
「───ふむ。尋問して詳しく調査しよう。暫し時間を貰うが・・・」
「構いません」
『我からも頼む。時間がかかってもセッカの為に正確な情報が欲しい』
「あい分かった。───あー、あとな、傷の再生のためとはいえ、吸血鬼の血を取り込んだから、副作用というか・・・・・・その・・・」
「・・・・・・何でしょう?」

変に口籠もるアルカードに、ロルフがイヤな想像をする。
まさか身体に悪いことが・・・?!

『アレだ。吸血鬼の血や唾液、精液などは媚薬の効果があるのだ。セッカも、傷が直り意識が戻れば発情するということだ』
「───は?」
「あーあー、気を使ってぼかしたのに・・・・・・。ま、そういうわけだから、ちゃんと相手してあげると良い。じゃあ俺は帰る。何かあればコレで連絡を寄越せ。こちらも情報が入ったら連絡をする。・・・じゃあ任せたよ
「───っ」

ポイッとコハクに腕輪・・・コハクの足輪のようなものを投げて寄越すと、来たときと同じように唐突に消えたアルカードに呆然としていたロルフだが、コハクに促されて場所を移動することにした。

───何故、俺のを・・・。
いや、長命種の真祖なら知ってても不思議じゃ無いな。
それよりも、副作用が気になる。

物思いに耽るロルフは、意味有り気にロルフを窺っていたコハクに気付かなかった。

森は再び、静寂を取り戻す。

こうして、セッカを抱えて一旦アイスの村に戻るロルフとコハクだった・・・。




















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