男前で何が悪い!

エウラ

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26 ノゥザンフォレット辺境伯

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翌日、予定通りに朝日の昇らぬうちにフォルセオの街を出たセッカ達は、暫く歩いて森の陰に入るとコハクに大きくなって貰い、ロルフ達は獣化をしてそこからは駆けていくことになった。

なお、ロルフにコハクが幻獣グリフォンだとバレていたこともあり、ロルフのお目付役だというダートとスレッドにもコハクの正体を明かし、なおかつ二人にも念話を繋いだ。

「「良かったのか?」」
「うん。ルゥルゥから二人の役目も聞いたし、俺の事情も聞かされただろ? その、もうルゥルゥの元から逃げようとは思ってないから・・・俺も、頼らせて、貰う・・・」

ダート達の声にセッカは気まずそうに呟いた。

「・・・ああ、やっぱり・・・」
「・・・・・・逃げ出そうとしてたんだ?」
「う、いや・・・その・・・スマン」
「良いって事よ。とにかく纏まってくれて良かった!」
「ああ・・・・・・逃げられてたら・・・監き・・・」

二人は有り得たかもしれない未来に一瞬死んだ目をした。

「───まあ、俺達の詳しい事情も辺境伯邸アッチに行ってからになるんで申し訳ないが・・・」
「良いよ。今更だし、一年後とかじゃ無いから」
「───いつも思うけど、セッカって、男前だよな・・・」
「顔は可愛いのに」

ダートとスレッドがポツリと言うと、セッカはムッとした。

「そこ、余計だよ!」
「可愛い」
「ルゥルゥのが可愛い!」

ロルフにも可愛い言われて、思わず言い返すと三人にめちゃくちゃ驚かれた。

「「「はああっ?!」」」

何処が───?!
そう叫んでるのを聞き流してコハクに騎獣するセッカ。

───ルゥルゥが可愛いって、惚れた欲目?

苦笑するセッカだった。

『お前ら、早く獣化しろ。行くぞ!』

痺れを切らしたコハクに言われるまでわいわいがやがやと騒がしい一行だった。



途中で昼休憩をした以外はずっと駆け通し、翔び通しだったおかげか、夕方には辺境伯家に到着したセッカ達。

邸の少し手前で獣化を解き、セッカも降りてコハクに小型化して貰い、徒歩で邸に向かった。

「今回は早かったな」
「やっぱり昼休憩以外に時間を取らなくて済んだからかな。魔物とかにも会わなかったし」
「コハクが威圧して寄りつかせなかったからな」
「いやあ、楽だった」
「・・・・・・ずっと駆け通しで楽って・・・獣人って凄いんだな・・・」

驚けば良いのか呆れれば良いのか・・・。

幾らセッカも強いとはいえ、これだけの強行軍はさすがに堪える。
それをケロッとやってのけるのだから、自分オメガの発情期に余裕で付き合えるだけのロルフの絶倫具合にも納得してしまうセッカだった。

───つい思い出してしまい、ちょっと耳を赤くするセッカだったが・・・。

「───セッカ」
「・・・っひゃいっ!!」

そんなことを考えてたせいでロルフの声に驚いてヘンな声が出て、更に顔を赤くするセッカ。

「・・・・・・ひゃい? 緊張してるのか? 心配要らない。辺境伯は気さくな方だから」
「・・・あっ、ウン・・・・・・ありがとう」

違う意味でドキドキだったセッカだが、ロルフの気遣いで何とか落ち着いたのだった。

何処ぞの要塞のような高くて頑丈そうな塀に、数人がかりで開けるような分厚い門扉。
実際は魔法で軽くしているのだろうが、威圧的な門構えに唖然とするセッカ。

「驚くだろう? 初見のヤツは大抵そういう反応をするモンだ」
「生まれてからずっと見ていると、コレが普通だと思うけどね」
「へえ、・・・ん? 生まれてから?」

ダートの後に言ったスレッドの言葉に違和感を感じたが、中から大きな声が響いてきて、そっちに気を取られる。

「おお───!! よくぞ帰った、ロルフ達!! それでそちらがロルフの番いのセッカ殿か!!」

そう言われて見ると、ロルフ達よりも大柄で筋骨隆々としたイケオジが大きな門扉を片手で軽く押し広げて現れた。

「ご無沙汰してます、卿」
「ただいま戻りました」
「お久しぶりですね」

ロルフ達がそれぞれ挨拶を交わす。
セッカは慌てて自己紹介をする。

「は、初めまして。セッカと申します。こちらは従魔のコハクです」
「・・・・・・うむ。よろしくの。オーウェン・ケイオス・ノゥザンフォレットという。・・・・・・本当に記憶が無いんだな・・・」
「───え?」
「いや、疲れたろう。ささ、中に入られよ。まずは旅の疲れを癒してからじゃ! マーカス! 客人を案内せよ!」
「畏まっております。さあセッカ殿、コハク殿。こちらへどうぞ」

そう言われてロルフ達を窺うと頷かれたので、マーカスと呼ばれた執事の後に付いていった。

その後のオーウェンとロルフ達の会話はセッカには聞こえていなかった。

「───ロルフから受けた報告通りだな」
「ええ。ほぼ記憶はないようです」
「コハク殿が幻獣というのも・・・」
「間違いありません」
「・・・8年、いやもう9年か・・・。あちらが漸く尻尾を出してきたが、こちらも慎重に動かねばな」
「ええ。今度こそ、犯人を・・・」

ふふふ、と黒い笑みで笑う4人に、門衛達はまた何か企んでると苦笑するのだった。





※遅くなりました。
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