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19 夜の帝王 2
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※流血表現が入ります。苦手な方は自衛をお願いします。
「───ふふっ、ソイツを見つけて、殺せば、僕の欲しいものが、手に入る・・・ああ、楽しみ」
うっとりするようにそう呟く吸血鬼に、セッカは思わずぞぞっと鳥肌が立った。
『・・・・・・どういう事だ? アシェルを殺そうとした犯人がまだアシェルが生きていることを知って、元アシェルを殺すことと引き換えにアイツの望む何かを手に入れる取引でもしたのか?』
ゾッとした。
だって、そんな方法があるなら、いくら姿を変え名前を変えても、別の国に渡っても・・・追っ手がかかるって事だろう?
『どうやって生死を知ったのかは我も分からんが、アイツの言葉で推測するのであればそうなのだろう。ただ、アイツの望むものが何なのかは想像がつかんが・・・』
コハクもその方法に心当たりが無いらしい。
まあ、いくら長寿でもヒトの生活に詳しいわけじゃないだろうし、俺達が知らないだけで普通なのかも知れないからな。
それにしても、アイツの望むもの・・・か。
『吸血鬼なんだから、好みの血を持つヤツがいて、ソイツが欲しいってんじゃねえの?』
『そうなんだろうが・・・うむ。そうか、自分じゃ手に入れにくい相手なのかもしれんな。・・・例えば聖職者とか・・・』
『あー・・・、もしかして吸血鬼の天敵?』
『真祖や公爵、侯爵辺りはほとんど意味は無いらしいが、神聖な魔力の含まれた血は、死にはしないらしいが不味かろう・・・。あーイヤ・・・稀に悪食・・・偏食?でそういうのが好みの吸血鬼がいると聞いたような・・・?』
『・・・・・・アイツがその変た・・・・・・イヤ、味覚音痴の珍しい吸血鬼だって事か?』
『・・・かもしれんな』
───今、変態って言おうとして言い直したな?
そういう視線をコハクから感じて思わず目を逸らすセッカ。
ともかく、何やら取引をして俺を殺しに来てることは分かった。
『俺を殺る気なら、正当防衛だよな? そもそも討伐依頼を受けてるわけだし。コハクの知り合いには悪いけど』
『いやなに、そんな感情は我の知り合いの吸血鬼には無いぞ。気にするな。お前の敵は我の敵でもあるから容赦はしない』
『ヨシ、袋叩き決定な』
そうと決まれば先手必勝とばかりに、認識阻害魔法をかけたままコハクと駆けだした。
さすがに吸血鬼も爵位持ちだけあって、気付いたらしい。
咄嗟に霧状に散って攻撃を流した。
「───ッチ! コハク、アレの攻略は?」
『広範囲の聖魔法で消し去れ。全ては無理でも霧状の部分はダメージがあるはず。(まあ、お前が全力でやれば一瞬で消えるかもしれんが目立つからな・・・)』
「りょーかい。ん? なんか言ったか?」
『いいや? こまめに攻撃して、散ったら聖魔法でちまちま頑張れ』
「・・・・・・ちまちま、ね。面倒くせえ」
『目立っても良いなら全力で聖魔法───』
「あーあー!! 却下!!」
せっかく目立たず騒がず過ごしてきたのに、今更やってられるかよ!!
「───煩い虫ケラめ、ちょこざいな・・・・・・ん? お前、その魔力・・・そうか、お前がアシェルか!!」
「───はぁ?! 何言って・・・?!」
───何でバレた?!
セッカは動揺を隠して赤の他人を貫く。
「ははっ・・・探す手間が省けたわ! 飛んで火に入るなんとやら・・・。これで殺せば僕はアイツを手に入れられる・・・ふふっ、恨むなよ?」
「何のっ、話か・・・分からねえな!! 死ぬのはてめえだ!」
その間もセッカは攻撃して聖魔法で消して、と地道にダメージを与え続ける。
「これくらい、髪の毛ほどのダメージしか無いわ。ほれ、こちらからも行くぞ!」
そう言って吸血鬼は自分の手の甲を切り裂くと、己の血を操ってセッカに攻撃を仕掛けた。
その手に血の剣を持ち、空中には無数の針のような形の武器を浮かべて向かってくる。
「ッチ」
聖魔法でも消えないその血は、さすが爵位持ちの吸血鬼というところだろう。
もっと聖魔法の威力を上げないと不味いかもしれない。
『セッカ! もっと魔力を籠めろ!!』
「分かってるよ! クソッ!!」
魔力を数倍籠めて放てば、さすがに怯んだ。
見れば針が半数ほど消えている。
「───ッ、貴様!!」
「ハッ!! お望みならもっと魔力を籠めてやるぜ!」
「───殺す!!」
「どうせそのつもりなんだろ! だが俺はアシェルなんて名前じゃねえよ! 人違いだ!!」
「いいや? お前はアシェルだ。魔力が同じなんだからな」
「───魔力?」
戦闘をしながらそんな会話をしていると、吸血鬼は確信を持ってセッカをアシェルだと言い切った。
「・・・ああ、知らんのか。お前の魔力が籠められた魔石で確認したのだ。アシェルがまだ生きていると。その魔力は冒険者ギルドで登録されたとあるヤツと同じだとな」
そう言ってニヤッと笑った。
「───そんなの、何時、何処で・・・? 知らない。覚えてない。・・・アシェル・・・?」
そんなのでバレるなら、俺は何処まで逃げても何時かは・・・・・・。
そんなセッカの動揺を好機とみた吸血鬼は、一瞬の隙を突いてセッカに肉薄した。
「!!」
「終わりだ。死ね」
『セッカ!!』
コハクが叫ぶが、セッカは対応が遅れ、そして・・・・・・。
吸血鬼の持つ剣がセッカを貫いた───。
吸血鬼が剣を抜くと、セッカはごふっと血を吐き、ゆっくりと仰向けに倒れていった・・・。
「───ふふっ、ソイツを見つけて、殺せば、僕の欲しいものが、手に入る・・・ああ、楽しみ」
うっとりするようにそう呟く吸血鬼に、セッカは思わずぞぞっと鳥肌が立った。
『・・・・・・どういう事だ? アシェルを殺そうとした犯人がまだアシェルが生きていることを知って、元アシェルを殺すことと引き換えにアイツの望む何かを手に入れる取引でもしたのか?』
ゾッとした。
だって、そんな方法があるなら、いくら姿を変え名前を変えても、別の国に渡っても・・・追っ手がかかるって事だろう?
『どうやって生死を知ったのかは我も分からんが、アイツの言葉で推測するのであればそうなのだろう。ただ、アイツの望むものが何なのかは想像がつかんが・・・』
コハクもその方法に心当たりが無いらしい。
まあ、いくら長寿でもヒトの生活に詳しいわけじゃないだろうし、俺達が知らないだけで普通なのかも知れないからな。
それにしても、アイツの望むもの・・・か。
『吸血鬼なんだから、好みの血を持つヤツがいて、ソイツが欲しいってんじゃねえの?』
『そうなんだろうが・・・うむ。そうか、自分じゃ手に入れにくい相手なのかもしれんな。・・・例えば聖職者とか・・・』
『あー・・・、もしかして吸血鬼の天敵?』
『真祖や公爵、侯爵辺りはほとんど意味は無いらしいが、神聖な魔力の含まれた血は、死にはしないらしいが不味かろう・・・。あーイヤ・・・稀に悪食・・・偏食?でそういうのが好みの吸血鬼がいると聞いたような・・・?』
『・・・・・・アイツがその変た・・・・・・イヤ、味覚音痴の珍しい吸血鬼だって事か?』
『・・・かもしれんな』
───今、変態って言おうとして言い直したな?
そういう視線をコハクから感じて思わず目を逸らすセッカ。
ともかく、何やら取引をして俺を殺しに来てることは分かった。
『俺を殺る気なら、正当防衛だよな? そもそも討伐依頼を受けてるわけだし。コハクの知り合いには悪いけど』
『いやなに、そんな感情は我の知り合いの吸血鬼には無いぞ。気にするな。お前の敵は我の敵でもあるから容赦はしない』
『ヨシ、袋叩き決定な』
そうと決まれば先手必勝とばかりに、認識阻害魔法をかけたままコハクと駆けだした。
さすがに吸血鬼も爵位持ちだけあって、気付いたらしい。
咄嗟に霧状に散って攻撃を流した。
「───ッチ! コハク、アレの攻略は?」
『広範囲の聖魔法で消し去れ。全ては無理でも霧状の部分はダメージがあるはず。(まあ、お前が全力でやれば一瞬で消えるかもしれんが目立つからな・・・)』
「りょーかい。ん? なんか言ったか?」
『いいや? こまめに攻撃して、散ったら聖魔法でちまちま頑張れ』
「・・・・・・ちまちま、ね。面倒くせえ」
『目立っても良いなら全力で聖魔法───』
「あーあー!! 却下!!」
せっかく目立たず騒がず過ごしてきたのに、今更やってられるかよ!!
「───煩い虫ケラめ、ちょこざいな・・・・・・ん? お前、その魔力・・・そうか、お前がアシェルか!!」
「───はぁ?! 何言って・・・?!」
───何でバレた?!
セッカは動揺を隠して赤の他人を貫く。
「ははっ・・・探す手間が省けたわ! 飛んで火に入るなんとやら・・・。これで殺せば僕はアイツを手に入れられる・・・ふふっ、恨むなよ?」
「何のっ、話か・・・分からねえな!! 死ぬのはてめえだ!」
その間もセッカは攻撃して聖魔法で消して、と地道にダメージを与え続ける。
「これくらい、髪の毛ほどのダメージしか無いわ。ほれ、こちらからも行くぞ!」
そう言って吸血鬼は自分の手の甲を切り裂くと、己の血を操ってセッカに攻撃を仕掛けた。
その手に血の剣を持ち、空中には無数の針のような形の武器を浮かべて向かってくる。
「ッチ」
聖魔法でも消えないその血は、さすが爵位持ちの吸血鬼というところだろう。
もっと聖魔法の威力を上げないと不味いかもしれない。
『セッカ! もっと魔力を籠めろ!!』
「分かってるよ! クソッ!!」
魔力を数倍籠めて放てば、さすがに怯んだ。
見れば針が半数ほど消えている。
「───ッ、貴様!!」
「ハッ!! お望みならもっと魔力を籠めてやるぜ!」
「───殺す!!」
「どうせそのつもりなんだろ! だが俺はアシェルなんて名前じゃねえよ! 人違いだ!!」
「いいや? お前はアシェルだ。魔力が同じなんだからな」
「───魔力?」
戦闘をしながらそんな会話をしていると、吸血鬼は確信を持ってセッカをアシェルだと言い切った。
「・・・ああ、知らんのか。お前の魔力が籠められた魔石で確認したのだ。アシェルがまだ生きていると。その魔力は冒険者ギルドで登録されたとあるヤツと同じだとな」
そう言ってニヤッと笑った。
「───そんなの、何時、何処で・・・? 知らない。覚えてない。・・・アシェル・・・?」
そんなのでバレるなら、俺は何処まで逃げても何時かは・・・・・・。
そんなセッカの動揺を好機とみた吸血鬼は、一瞬の隙を突いてセッカに肉薄した。
「!!」
「終わりだ。死ね」
『セッカ!!』
コハクが叫ぶが、セッカは対応が遅れ、そして・・・・・・。
吸血鬼の持つ剣がセッカを貫いた───。
吸血鬼が剣を抜くと、セッカはごふっと血を吐き、ゆっくりと仰向けに倒れていった・・・。
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