男前で何が悪い!

エウラ

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14 魔獣討伐依頼 1

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フォルセオの街を出て途中で野営して一泊。

次の日は探索魔法で人がいないのを確認しながらコハクに騎獣して翔び、時間短縮をしたセッカとコハクは昼過ぎには討伐依頼の村に到着した。


実は村に向かう途中、依頼を出しに来て帰る途中の村人の荷馬車を見かけて、コハクから降りて声をかけた。

「すみません。もしかして貴方はこの先のアイスの村の人ですか? 昨日ギルドに討伐依頼を出した・・・」

急に現れたセッカに驚きながら、その村人は応えてくれた。

「えっ?! あ、はい、そうです。・・・あの、貴方は・・・?」
「フォルセオの冒険者ギルドで依頼を受けたセッカと言います。今、村に向かっているところで・・・」

セッカがそう言ってギルドカードを見せると、目に見えて表情が明るくなった。

「───っ本当ですか?! ありがとうございます! 助かります!! こんなに早く・・・」
「それで、差し支えなければ詳しい話を聞きたいと思って・・・話しながら一緒に向かうか、先に俺だけ行くか、どうしましょうか? 急ぐなら先に行くんですけど。俺の従魔は鳥型なんで乗って翔んで行けるので・・・」

セッカがそう提案すると、その人は少し考えてから言った。

「・・・先に、と言いたいですが、詳しい話を聞く時間を考えたらここからなら一緒に行っても変わらないでしょうから、良かったら乗って下さい。行きながら話しましょう。あ、私はユーマと言います。後、言葉は普通で良いですよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて、よろしくユーマ」

そうして小型化したコハクと馬車に乗って詳しく話を聞くと・・・。

「・・・フォレストウルフとジャイアントフラワー?」
「そうです。その二つの魔獣や魔物がほとんどで、他に魔物を見たという村人の話ではトレントやドレインフラワーもいたと」

どうやら村に隣接している森からやって来たらしい。
だからまあ、ソレは有り得るから良いんだけど・・・。

「・・・うん、まあ森に近いし、いても不思議では無いんだけど・・・これまで何年もそんな被害は無かったんだよね?」

確認のためにユーマに聞いてみる。

「そうなんです。あっても精々数体とかで、村でも何とか倒したり出来てました。だからこの前、集団で押し寄せてきたときは驚いて・・・。咄嗟に避難場所にしている村の集会所に逃げ込んで、何とか無事だったんですけど」
「その集会所には魔物避けの魔導具とかあったんだ?」
「はい。簡易的ですが結界魔法が張れます。ただ、なにぶん貧しい村なので村全体を覆うほどの魔導具は置けません。でも集会所くらいなら何とか置けたので・・・」

そのおかげで皆、軽い怪我くらいで済みました。
そう言ってユーマは笑った。

「村全体を囲まなくても今まではそんなに被害は無いくらい穏やかだったんだな。・・・そうすると何か森に異変があったのかもな・・・」
「かも知れません。でも私達では森に調査にも行けないので、思い切ってギルドに討伐依頼を出したんです。・・・・・・正直、報酬額がかなり低くて受けてくれる冒険者はいないんじゃ無いかって、ダメ元だったんですけど・・・」

ユーマの言うことも分かる。

冒険者だって危険と隣り合わせで稼いでいるのだから、依頼に見合った金額が提示されていないと受けようとは思わないだろう。
同情で関わって、死んだらそれこそ終わりだ。

俺だって最初、報酬額の低さには驚いたが今回は遠出が目的だったし、村としてはこれでもぎりぎり出しているんだと思う。

ヤバい案件だったら出来るだけのことはしてギルドに報告して丸投げ・・・げふんっ、対策を取って貰うつもりでいるし。

「まあ、行ってみないと分からないけど、出来るだけのことはするから。後、報酬は低くても気にしてない。だからこれ以上出そうとかしなくて良いから」

そう言って笑ってやると、ユーマは涙ぐみながらお礼を言って、馬車を走らせた。


───そうしてユーマと合流してから数時間後、件の村に到着したのだった。


「ようこそお越し下さった! よもやこんなに早く・・・ユーマと一緒に来て下さるとは・・・」

アイスの村の村長だという40代後半らしいサクマさんに挨拶を受け、セッカも名乗る。

「フォルセオの冒険者ギルドから来ました、セッカと申します。Aランク冒険者です。彼はコハクと言って、俺の従魔です。普段はこのサイズですが、有事にはかなり大きくなるので、危険なので近付かないで下さい。・・・コハク」
おうクルル

そう言って一度3mのサイズになって貰う。
周りでざわめきが起こったが、小型化して貰うと落ち着いた。

そして村長や他の人にも見えるようにギルドカードを提示すると、ホッと安心したようだった。

「こんな少ない報酬でAランク冒険者の方が・・・よくぞ受けて下さいましたな・・・。ありがとうございます」

サクマ村長がそう言って頭を下げたので、慌てて上げて貰う。

「いえ。受付で聞いたら、数日前の被害だと言うので、急いだ方が良いかと思いまして・・・。ちょうど彼に追いついたので、話を聞きながら一緒に来ました。おおまかな事は彼に聞きましたが、他に何か不審な点や気付いたことがあれば何でも良いので教えて下さい」

そう言って村人から聞いた話は、ユーマから聞いた情報とほとんど一緒だった。

「───一度、コハクに上空から見て貰うか。頼めるか?」
お安いご用だクルルル
「じゃあ頼む。俺はその間に、村の周辺を見廻って結界を張る」

コハクと会話をしていると、サクマ村長が驚いていた。

「・・・? 何か?」

セッカが首を傾げると、村長は戸惑いながら尋ねた。

「その・・・見廻りは良いのですが、結界を張る、とは?」
「───ああ。文字通り、村を囲む結界を張るということです。ちょうど魔石が余ってるので、結界魔法陣を常時発動出来るように刻んで設置すれば魔物や魔獣は弾かれるので・・・」
「えっ?!」
「え?」

セッカは何に驚かれているのか分からず、再び首を傾げた。

「───それって結界の魔導具って事ですか?」
「そうですね。盗まれたり破壊されたりしないように魔法付与エンチャントしますから心配ないですよ?」
「・・・・・・はぁ・・・」

───いやいやそういう事じゃ無いんですけど?!
・・・というツッコミは、さすがに村長には無理だった。


村長が呆然としているうちに、セッカは誰か手の空いてる人に村の境界付近を案内して貰えるように頼むとサクッと魔石に魔法陣を刻んで結界の魔導具を作ってしまった。

「村長さん、俺がセッカさんに付いていって案内してくるよ」

ヨウと名乗った10歳くらいの子が案内を買って出たので、村長の許可を得てヨウと村の外に出て行った。

それを見送って、村長はユーマに言った。

「───お前、とんでもなく凄い冒険者殿を連れて来たの・・・・・・」
「・・・・・・それ、俺も思いました・・・・・・」

あんな、討伐依頼に見合わない端金はしたがねで来てくれただけでも凄いのに、それがAランクで、あんな簡単に魔導具を作れちゃうって・・・。

「これなら、討伐も案外早く済むのでは・・・?」

期待に胸膨らむ村長達だった。






※遅くなりました。






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