男前で何が悪い!

エウラ

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13 執着もしくは執念?

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セッカが受けた依頼の村に向けて街を後にしてからおよそ7時間後。

ダートとスレッドと一緒に日帰りの護衛任務を終えて宿へ戻ったロルフは、宿主から聞かされた話に、一瞬、意識がトんだ。

「セッカさんが魔獣討伐の依頼で暫く留守にするんだそうだ」
「───・・・・・・っ、どのくらい?」

すぐに復活したが普段は無感情なロルフが目に見えて動揺したことに宿主もダート達も焦った。

「あ、ああ・・・。片道二日で討伐も含めて最長7日のつもりだと言っていたよ」
「・・・7日も・・・」

そう言っていつものロルフらしくなくガックリと項垂れた。

この一年、ロルフとセッカの関係を側でずっと見てきた宿主とダート達はかける言葉が見つからない。

いや、依頼でそれくらいの日数を不在にすることは普通なら幾らでもある。

ただ、ロルフがそう仕向けたのかセッカが無意識に離れないのか、あの一年前の出会いから暫くはロルフとセッカが長時間離れることはほとんど無かった。
精々が一日二日ほどか。

しかしやがて慣れてくるとロルフが依頼で二、三日不在になる事も増え、セッカはちょっとそわそわするものの平静を装ってやり過ごし、その後帰ってきたロルフに無意識に甘えてその日の夜は大いに盛り上がっていた。

二人はそんな日々を過ごしていたのだ。
まるで恋人同士のように・・・。

しかし実はそう思っていたのはロルフ達だけだったのだ。

実際は、セッカはロルフの事をただのセフレだと認識していた。

いや、セッカとしてはセフレ以上の感情もあったのだが、ロルフの態度や自分の事情からそれ以上の気持ちは迷惑だろうと、知らず押し殺していたのである。

これはロルフがはっきりと口にせずに曖昧な関係を続けていた弊害でもあった。

ココにいる全員、よもやセッカのロルフに対する認識がセフレだとは思ってもいなかったのである。

宿主とダート、スレッドは、セッカが初めてヒートを起こしたときに察していて、セッカがオメガだと話している。
セッカもそれを認めたし、宿やロルフ達にも迷惑がかかると思ったのだろう。
それでも受け入れられてホッとしたのを覚えている。

───通常、平民でオメガだと分かると貴族に養子に貰われて蝶よ花よと囲われるものだが、セッカはオメガ性を隠して冒険者として生活している。

これだけで訳ありだと知れた。
だからダート達も口を噤んで秘匿しているのだ。

更にはロルフがセッカと面識があったらしく。
しかしこれにはセッカはどう見ても初対面のような反応しか無く、出会って二度目のヒートの時にロルフがそれとなく誘導して探ってみたが・・・。

ヒートで頭が蕩けているときで、嘘をつく余裕など無いだろうから、真実なのだろうが・・・。

『・・・知らない。覚えてない・・・俺は、8年前・・・より前、は、何も・・・・・・』

---8年前・・・。
ソレは、時期と重なる。
・・・・・・これは調べ直す必要があるな。

そう思ってロルフはツテを使い、セッカには内緒で裏で色々と手を回しだした。


それからはセッカがヒートになる度に、いやそれ以外でもごく自然にロルフが相手をするようになり、ダート達はロルフがアルファだと知っているのでいよいよ番いになるのかと、内心わくわくとしていたのだが・・・。

肝心なところでヘタレなのか、セッカを思ってうやむやにしていたからなのか、ロルフの気持ちはセッカには上手く通じていなかったようだった。

セッカは最近、良く物思いにふけるようになり、辛そうな表情をする事が増えたように思う。

無意識らしく、ダート達が声をかけるとすぐに消え去ってしまうくらいのものだったが・・・。

「・・・ここへ来て、セッカ、まさか別れるなんて事は・・・」
「ええー、うーん、でもなあ・・・なくはないんじゃねえの?」
「・・・・・・確かにセッカさん、ここ数日は思い詰めたような顔をしてたけど」

ダートとスレッドが話す側で宿主も会話に加わった。

「・・・・・・とりあえずは依頼が終われば戻って来るんだよな?」
「そう言っていたよ。だから前払いで部屋代は貰ってるし、延びたら後で請求してくれって」

宿主がそう言ったのでロルフに声をかける。

「───じゃあ、まだ大丈夫なんじゃねえの? ・・・・・・おい、ロルフ! ちゃんと戻ってくるらしいから、しゃんとしろよ!」
「・・・・・・分かった。俺、どんな依頼だったのかギルドで聞いてくる」
「おう・・・せめてシャキッとしていけよ」

スレッドの声に一応背筋を伸ばして手をあげて歩いて行くロルフを苦笑して見送るダート達。

「・・・・・・大丈夫かな?」
「うーん、ロルフさんがあんなになるなんて一年前には想像もつかなかったな・・・」
「変わるもんだねえ・・・」
「一年も過ごしてるのに、セッカ、ロルフに目を付けられてるって気付いてない感じ?」
「セッカは人族だからなあ・・・。獣人族の執着、知らないんだろうな。そんでもって訳ありっぽくて一線を引いているようだし。だからじゃねえの?」
「ロルフの執着具合に気付かないセッカもある意味凄いな」

そんなことを話すダート達だった。

セッカがセフレ認識だと気付いていないせいで、この後、問題が起こるとも知らずに呑気にセッカの帰りを待つのだった・・・。






※遅くなりました。


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