男前で何が悪い!

エウラ

文字の大きさ
上 下
14 / 54

13 執着もしくは執念?

しおりを挟む

セッカが受けた依頼の村に向けて街を後にしてからおよそ7時間後。

ダートとスレッドと一緒に日帰りの護衛任務を終えて宿へ戻ったロルフは、宿主から聞かされた話に、一瞬、意識がトんだ。

「セッカさんが魔獣討伐の依頼で暫く留守にするんだそうだ」
「───・・・・・・っ、どのくらい?」

すぐに復活したが普段は無感情なロルフが目に見えて動揺したことに宿主もダート達も焦った。

「あ、ああ・・・。片道二日で討伐も含めて最長7日のつもりだと言っていたよ」
「・・・7日も・・・」

そう言っていつものロルフらしくなくガックリと項垂れた。

この一年、ロルフとセッカの関係を側でずっと見てきた宿主とダート達はかける言葉が見つからない。

いや、依頼でそれくらいの日数を不在にすることは普通なら幾らでもある。

ただ、ロルフがそう仕向けたのかセッカが無意識に離れないのか、あの一年前の出会いから暫くはロルフとセッカが長時間離れることはほとんど無かった。
精々が一日二日ほどか。

しかしやがて慣れてくるとロルフが依頼で二、三日不在になる事も増え、セッカはちょっとそわそわするものの平静を装ってやり過ごし、その後帰ってきたロルフに無意識に甘えてその日の夜は大いに盛り上がっていた。

二人はそんな日々を過ごしていたのだ。
まるで恋人同士のように・・・。

しかし実はそう思っていたのはロルフ達だけだったのだ。

実際は、セッカはロルフの事をただのセフレだと認識していた。

いや、セッカとしてはセフレ以上の感情もあったのだが、ロルフの態度や自分の事情からそれ以上の気持ちは迷惑だろうと、知らず押し殺していたのである。

これはロルフがはっきりと口にせずに曖昧な関係を続けていた弊害でもあった。

ココにいる全員、よもやセッカのロルフに対する認識がセフレだとは思ってもいなかったのである。

宿主とダート、スレッドは、セッカが初めてヒートを起こしたときに察していて、セッカがオメガだと話している。
セッカもそれを認めたし、宿やロルフ達にも迷惑がかかると思ったのだろう。
それでも受け入れられてホッとしたのを覚えている。

───通常、平民でオメガだと分かると貴族に養子に貰われて蝶よ花よと囲われるものだが、セッカはオメガ性を隠して冒険者として生活している。

これだけで訳ありだと知れた。
だからダート達も口を噤んで秘匿しているのだ。

更にはロルフがセッカと面識があったらしく。
しかしこれにはセッカはどう見ても初対面のような反応しか無く、出会って二度目のヒートの時にロルフがそれとなく誘導して探ってみたが・・・。

ヒートで頭が蕩けているときで、嘘をつく余裕など無いだろうから、真実なのだろうが・・・。

『・・・知らない。覚えてない・・・俺は、8年前・・・より前、は、何も・・・・・・』

───8年前・・・。
ソレは、時期と重なる。
・・・・・・これは調べ直す必要があるな。

そう思ってロルフはツテを使い、セッカには内緒で裏で色々と手を回しだした。


それからはセッカがヒートになる度に、いやそれ以外でもごく自然にロルフが相手をするようになり、ダート達はロルフがアルファだと知っているのでいよいよ番いになるのかと、内心わくわくとしていたのだが・・・。

肝心なところでヘタレなのか、セッカを思ってうやむやにしていたからなのか、ロルフの気持ちはセッカには上手く通じていなかったようだった。

セッカは最近、良く物思いにふけるようになり、辛そうな表情をする事が増えたように思う。

無意識らしく、ダート達が声をかけるとすぐに消え去ってしまうくらいのものだったが・・・。

「・・・ここへ来て、セッカ、まさか別れるなんて事は・・・」
「ええー、うーん、でもなあ・・・なくはないんじゃねえの?」
「・・・・・・確かにセッカさん、ここ数日は思い詰めたような顔をしてたけど」

ダートとスレッドが話す側で宿主も会話に加わった。

「・・・・・・とりあえずは依頼が終われば戻って来るんだよな?」
「そう言っていたよ。だから前払いで部屋代は貰ってるし、延びたら後で請求してくれって」

宿主がそう言ったのでロルフに声をかける。

「───じゃあ、まだ大丈夫なんじゃねえの? ・・・・・・おい、ロルフ! ちゃんと戻ってくるらしいから、しゃんとしろよ!」
「・・・・・・分かった。俺、どんな依頼だったのかギルドで聞いてくる」
「おう・・・せめてシャキッとしていけよ」

スレッドの声に一応背筋を伸ばして手をあげて歩いて行くロルフを苦笑して見送るダート達。

「・・・・・・大丈夫かな?」
「うーん、ロルフさんがあんなになるなんて一年前には想像もつかなかったな・・・」
「変わるもんだねえ・・・」
「一年も過ごしてるのに、セッカ、ロルフに目を付けられてるって気付いてない感じ?」
「セッカは人族だからなあ・・・。獣人族の執着、知らないんだろうな。そんでもって訳ありっぽくて一線を引いているようだし。だからじゃねえの?」
「ロルフの執着具合に気付かないセッカもある意味凄いな」

そんなことを話すダート達だった。

セッカがセフレ認識だと気付いていないせいで、この後、問題が起こるとも知らずに呑気にセッカの帰りを待つのだった・・・。






※遅くなりました。


しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

一日の隣人恋愛~たかが四日間、気がつけば婚約してるし、公認されてる~

荷居人(にいと)
BL
「やっぱり・・・椎名!やっと見つけた!」 「え?え?」 ってか俺、椎名って名前じゃねぇし! 中学3年受験を控える年になり、始業式を終え、帰宅してすぐ出掛けたコンビニで出会った、高そうなスーツを着て、無駄にキラキラ輝いた王子のような男と目が合い、コンビニの似合わない人っているんだなと初めて思った瞬間に手を握られ顔を近づけられる。 同じ男でも、こうも無駄に美形だと嫌悪感ひとつ湧かない。女ならばコロッとこいつに惚れてしまうことだろう。 なんて冷静ぶってはいるが、俺は男でありながら美形男性に弱い。最初こそ自分もこうなりたいと憧れだったが、ついつい流行に乗ろうと雑誌を見て行く内に憧れからただの面食いになり、女の美人よりも男の美人に悶えられるほどに弱くなった。 なぜこうなったのかは自分でもわからない。 目の前のキラキラと俺を見つめる美形はモデルとして見たことはないが、今まで見てきた雑誌の中のアイドルやモデルたちよりも断然上も上の超美形。 混乱して口が思うように動かずしゃべれない。頭は冷静なのにこんな美形に話しかけられれば緊張するに決まっている。 例え人違いだとしても。 「男に生まれているとは思わなかった。名前は?」 「い、一ノ瀬」 「名字じゃない、名前を聞いているんだよ」 「うっ姫星」 イケメンボイスとも言える声で言われ、あまり好きではない女のような名前を隠さずにはいられない。せめて顔を離してくれればまだ冷静になれるのに。 「僕は横臥騎士、会えて嬉しいよ。今回は名前だけ知れたら十分だ。きあら、次こそはキミを幸せにするよ」 「はい・・・おうが、ないと様」 「フルネーム?様もいらない。騎士と呼んで」 「騎士・・・?」 「そう、いいこだ。じゃあ、明日からよろしくね」 そう言って去る美形は去り際までかっこいい姿に見惚れて見えなくなってから気づいた。美形男のおかしな発言。それと明日?? まさかこれが俺の前世による必然的出会いで、翌日から生活に多大な変化をもたらすとは誰が思っただろう。 執着系ストーカーでありながら完璧すぎる男と平凡を歩んできた面食い(男限定)故、美形であればあるほど引くぐらいに弱い平凡男の物語。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

処理中です...