男前で何が悪い!

エウラ

文字の大きさ
上 下
13 / 54

12 そして冒頭に戻る

しおりを挟む
※やっと回想終わった!


夕御飯を済ませて片付けを終えると、辺りは静寂に包まれた。

セッカは小型化したコハクと共にテントに入る。

本来は不寝番をしたり魔物避けの魔導具を設置するのだが、ウチはコハクの気配でよほどの魔物とかじゃないと近付いてこない。

それに加えてセッカの結界魔法でガッツリ囲ってあるので不法侵入は絶対に出来ない。

これは主に魔物というよりはオメガの自衛としてだ。
元がアルファとはいえ、やはりオメガになってから筋力は落ちたんだと思う。
体重も増えないし、筋肉も付きにくくなり、頑張って鍛えて現状維持をしている感じだ。

・・・もっとも鍛えるのは前世からの趣味だったので苦ではないのだが。

万が一襲われても魔法チートで撃退出来るだろうが、まずは襲われないことが最善だと思うから。

ロルフのように、同意の下、紳士的に扱って抱いてくれる方が珍しいのだ。

「・・・そういえばルゥルゥとは最初っから嫌悪感とか無かったな・・・」

───ロルフに魔力譲渡で抱かれてから一ヶ月後くらいに、今世で初めてヒートになった。

手持ちの抑制剤を飲んだが思ったような効果が無く、一人、部屋で結界魔法を張って堪えていた。
そんな時、ロルフが依頼を終えて戻ってきてセッカのフェロモンに気付き、何とか意識のあったセッカが部屋に入れて、合意の上で避妊して抱いて貰ったのだ。

セッカはあれからロルフの定宿でちょうど空いていた隣の部屋を長期で借りていたので、ロルフもすぐに気付いたんだそう。

ソレからは3ケ月毎にきっちりヒートが来るようになって、もう、ロルフ無しじゃ辛い生活になっていて・・・。

───これ以上、ロルフに依存しちゃいけない・・・。
そう思うも・・・。

「・・・後天性のせいなのか、抑制剤が効かないっていうのはキツいな」

結局、ヒートが近くなるとそれに気付いたロルフがちゃんと避妊をして抱いてくれるようになって。
───まあ、それ以外の日にも抱かれてるけど。
セフレってヤツだよなあ。

そう考えるとちょっと胸がチクリとするから、考えないようにしてる。

「───ソレだけが気がかりなんだよなぁ・・・」

ソレがココに未だに留まっている一番の理由だった。

「・・・・・・ちょっと、リハビリがてら長期で遠出の依頼を受ける数を増やすか・・・」

明日、ギルドでその辺りの依頼を漁ってみよう。
出来れば一人でも受けられるモノを・・・。

そう考えながら眠りに落ちた。


翌日、フォルセオの街に戻ったセッカはその足で冒険者ギルドに向かった。

依頼掲示板クエストボードに向かうと、手頃な依頼が無いか目を通す。

「───うーん・・・これ・・・ココから東の村の魔獣討伐・・・片道二日・・・魔獣は現地で確認、か」
『魔獣の種類や数は分からんのか?』
「ああ、そうみたいだ。行ってから現地で確認しろって。どうだコハク、片道二日なら良いんじゃないか?」
『そうだな・・・魔獣の数にもよるが行き帰りを含めて7日見ておけば余裕があるだろう』
「じゃあ、決まりだな」

コハクと話ながら依頼票を取って受付窓口に移動する。

「この依頼の受注を頼む。あと、この村の情報とかあれば知りたいんだが・・・」

セッカはすっかり顔馴染みになった受付の職員に声をかけてみる。

「───はい、承ります。ああ・・・この村は依頼票の通り、片道二日かかるのでついさっき貼り出したモノです。なので実際の被害は二日より前になりますね。・・・生憎と村の方は依頼の受理を確認して少し前に戻ってしまいまして・・・」
「───そうか、じゃあ仕方がない。でもそれなら早い方が良いな。これから準備をして向かうよ。ありがとう」
「どういたしまして。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

無事に受理されたのを確認して宿に戻ると、宿主に声をかける。

「親父さん、依頼で部屋を数日空けるんだけど、そのまま借りておける? 宿代は前払いするから」

それを聞いた宿主が目を瞠る。
そういえばずっと近場の依頼ばかりで精々が一泊か二泊くらいの留守だったな。

「え? 珍しいね。構わないけどどれくらい留守にするんだい?」
「片道二日で討伐にどのくらいかかるか行ってみないと分からないんだ。予定では最長7日ってところかな? 延びたら帰ってきたときに料金払うよ」

宿の迷惑になっちゃうから、そこはしっかりしておかないと。

「そんなの気にしなくて良いから、怪我をしないようにね。ああそうだ、ロルフさんには?」
「あー、今は依頼でいないみたいだから、後で親父さんから言っておいてくれると助かる」

一応言っておかないと心配するだろうし。
まあそこは宿主に任せた。

「分かった、言っておくよ。セッカさんもくれぐれも気を付けて」
「ああ、ありがとう。じゃあ支度が出来次第発つから、よろしく」

そう言って部屋を片付けると足早に出かけていった。

「───ロルフさん、大丈夫かなぁ・・・」

宿主の親父さんが意味深に呟いたが、誰の耳にも入らなかった・・・。









しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...