42 / 42
42 とりあえず常識を学ぼう 2
しおりを挟む珍しく、もう無理っていうほど食べたカムイは、再び本の山に挑んだ。
それはお昼まで続き、同じように侍女さんにゆさゆさ揺さぶられるまで続いた。
「ジェイド君、聞いたわよ。お茶休憩でたくさん食べたんですって?」
「お母さん、うん。お菓子もサンドイッチも美味しくて、バクバク食べちゃって・・・」
おかげで昼食は軽ーくして貰った。
料理人さんも分かってるからか、何時もよりも少な目。
正直助かる。さすがに食べ過ぎた。
「アレかしら、少しの量をこまめに摂る方が食べられるのかしら?」
「うーん、どうだろう? 元々、そんなに食べないよ、俺。皆が気にすること無いと思うけど・・・。でもお腹空いたら、その時は言うね」
「そうしてちょうだいな」
そんな風に和やかにお昼を食べて、午睡だと部屋に押し込まれて。
気が付いたら爆睡してたっていう・・・。
目が覚めたらもう三時のおやつの時間だった。
「よくお眠りでしたので起こさずにいたのですが」
「ああ、うん、ありがとう。おかげでスッキリした」
朝からずっと本読んでたから、それなりに疲れていたみたいだ。
そんなことを言ったあとに、お昼が軽めだったからかお腹がクウッとなった。
それを聞いた侍女さんがふふっと笑ってお茶の用意をしてくれる。
そうして美味しいお茶とケーキを食べて再び本を読み漁り。
アルトとお父さん達が帰ってくるまで書庫に入り浸った。
「ただいま」
「お帰りなさい」
夕方になり、お父さん達が帰ってきて出迎える。
何かまだたった数日なのにめちゃくちゃ馴染んでるなあ、俺。
「ただいま、カムイ! 何もなかった?」
「お帰り、アルト! うん、特には何も。あ、でもだいぶ本読めたよ。あとめちゃくちゃおやつ食べた」
俺にハグして頬にチュッと口付けるアルトに照れながらそう言うと、お父さん達が反応した。
「えっ! いつもあんなに少ないのに!?」
「ジェイドの食べたはかなり少ないんだけど」
「そうそう。小鳥の餌レベル」
「むう! 失礼な! 適量!」
「あら、本当にかなり多かったのよ。おかげでお昼が少な目になっちゃったくらい」
ぷうっと膨れるとお母さんが助け船を出してくれた。
「へえ。じゃあ夕ご飯も少な目にするの?」
そうアルトに聞かれてちょっと考える。
「うーん、夕ご飯はいつもの量食べられそうな気はする。でもムリして食べないから大丈夫だよ」
「うん、そうして。食べられる分でね。コレでもう少し増えたら嬉しいけど」
苦笑してそう言われたけど……。
「……あれ、もしかしてガリガリで抱き心地悪い?」
「───っぶ!?」
「はあ!?」
そう言ったら皆が吹き出したり焦って、俺はキョトンとする。
「いいいいや、そういう意味じゃなくて」
アルトが一番焦ってるな。大丈夫?
「え、だってよく抱きついてるじゃん、俺達。俺、ほっそいからゴリゴリ骨が当たって痛いかなって?」
「……ああ……そういう……」
がっくりと肩を落として安心したような、でも残念そうな様子のアルトとお父さん達に首を傾げるが苦笑が帰ってきただけだった。
「さあさあ、ここでいつまでも喋ってないでご飯にしましょう! 早く着替えてきてね!」
「はい」
「うむ」
お母さんの鶴の一声でバッと動き出すお父さん達に笑って俺もアルトと一緒に一度部屋に戻る。
アルトの部屋に一緒に入って、俺はアルトに神様から告げられた言葉を思い切って言った。
「あのっアルト、昨日、世界樹のところに戻ったときに神様から言われたんだけど」
「うん?」
「……俺と番ってくれる人には、特別に俺と同じ寿命になるようにしてくれるって」
「───うん」
「でもね、その、相手の気持ちが……俺と同じで、自分から本当に、そうなりたいっていう場合に限るんだって。あの、無理強いじゃなくてね」
「うん、いいよ」
ためらいがちにそう言うと、最後まで言う前に即答したアルトに唖然とする。
「え? だって俺と一緒だよ? めちゃくちゃ長生きになるんだよ? その……お父さん達とも生きる時間が違っちゃうんだよ?」
俺の方が戸惑ってそう言うと、アルトは笑って言った。
「分かってる。でも俺はカムイと生きる方が大事だから。一生一緒だって決めてるから。嫌いになることもないから」
「……っ、そ……んな、いいのかな?」
俺、自分に都合よく受け取っちゃうよ?
俺とずっと一緒でいいんだって、そう言ってるんだよな?
「もちろんいいに決まってる。俺の愛するただ一人の運命の番い」
そう言って抱きしめてくれるアルトに、嬉しくて俺もぎゅっと抱きしめ返す。
「……ありがとう、アルト」
「こちらこそ。愛してるよ、カムイ」
「俺も……愛してる」
お母さんが言ったとおりだった。アルトも喜んでくれた。
俺は幸せを噛みしめながら、使用人が呼びに来るまでアルトに抱き付いていたのだった。
*明けましておめでとうございます。
書き初めというんですかね。
今年もよろしくお願いいたします。
一月中は諸々あって難しいですが、他のもたまに更新したいです。
252
お気に入りに追加
491
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(14件)
あなたにおすすめの小説

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
小動物の食事風景と言われたり、小鳥の餌レベルと言われたり(笑)
カムイくんのもぐもぐタイムはそうとう、使用人さん達の癒しになっていそうwww
裏でし烈なじゃんけんが繰り広げられてたり🤣→平和的戦闘www
すっかり癒しの小動物w
ジャンケンで決着がつくなら平和的解決ですが、どうでしょうかw
夢中になってすぐに読み終わっちゃいました。続きがとても気になりました。
ありがとうございます!😆
だいぶ色々止まっちゃってすみません!という気持ちです😅
他のも含めてちまちま更新頑張るのでお待ちいただけたら嬉しいです😄
小動物の食事風景w
これは皆可愛くて見守りますね💦カメラもしあったら、皆こっそり写真とりまくってるかもですね( *´艸`)💕
後でアルトが聞いて悔しがりそうw
見たかったーって😆
小動物がカリカリしてるの可愛いですよね😄