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28 二日酔い再び?
しおりを挟む朝、まだ朝日が昇る前の薄暗い中、どんよりと重たい頭で考えることは『なんでまた二日酔いなんだよ』って事だった。
さすがに吐き気はないが、鈍い頭痛と体の重怠さ。
グラスにたったの一杯だよ?
弱すぎない?
---あーもー、俺、酒飲むの辞めよっかな。
毎回コレじゃ、楽しく飲めないわ。
・・・・・・なんて事を考えながら、はだけた小麦色の胸板に頬を押し付けたまま、なんでアルトに抱き枕にされてんだろうなーって思ってた。
珍しく朝寝坊している。
ああでも今日も休みだって言ってたっけ。
じゃあ良いのか、このまま。
そう思って二度寝を決め込んで、アルトの肌の温もりにほっこりしながら再び目を閉じた。
次に目が覚めたのは太陽が天に近くなった頃。
もうじきお昼だっていう頃だった。
その頃には頭の鈍い痛みはだいぶ和らぎ、体も重怠さが消えていた。
ホッとひと息つく。
アルトは肩肘をついて俺を優しい表情でみつめていた。
ドキドキする。
「おはよう」
もう『遅よう』だけどな。
「うん、おはよう。体調はどう?」
「ああ、うん、ちょっと頭が痛いくらいかな」
「・・・そう。良かった」
オイコラ、あからさまにホッとするな。
「・・・・・・俺、またなんかやらかしたっぽい感じですか?」
「ふはっ、なんで、疚しいことあるときって敬語なの?」
「・・・・・・何となく?」
「まあ、そうだな。俺をぎゅっとして離さなかったな」
「---ええ?! また?! ご、ごめん、また俺、覚えてない・・・はあぁ・・・・・・もう、酒飲むの辞めよう・・・」
「そうだね。それがいいね!」
「えええ? そんなに?!」
とびきりいい笑顔で言い切ったアルト。
ショック!
でも、他人様に迷惑をかけるのは本意ではないので。
「・・・・・・やっぱり、禁酒・・・断酒?」
はあぁ---。
微かに残る鈍い痛みを誤魔化すようにこめかみを押さえる。
「・・・・・・またアレ飲むのか?」
アルトがちょっと引いてる。
うん。
気持ちはもの凄ーく分かる。
「あー・・・アレね、味がねえ・・・改良して美味しくなったら飲もっかな・・・今は、逆に悪化しそうだ・・・」
正直飲みたくない。
このままの方がまだマシ。
「・・・もしかして、もうお昼?」
「ブランチかな? 軽く食べようか。・・・食べられる?」
「・・・多分、飲み物くらい?」
「---ま、仕方ないか。今日はゆっくりする事。分かった?」
「イエッサー」
「いえ・・・何?」
「ああ、いや、分かりましたって意味です」
「・・・・・・ふうん。まあいいや」
危ない。
コッチにはない言葉だよな。
気を付けないと。
あの後、やっぱり飲み物くらいしか入らず、サンルームの寝椅子に横になってぽかぽか。
いつの間にか眠っていたようで、ブランケットがかけられていた。
一人だけど、独りじゃない。
辺りに広がる人の気配。
穏やかな時間。
『ミズチ』
呼べばふわりと現れた、俺の精霊。
《呼んでくれたのね? どうしたの? なんか気持ちが穏やかな感じね。良いことでもあったのかしら》
「そうだな。この家の人達は凄く気持ちのいい人ばかりで・・・・・・嬉しいんだ」
《そう。良かったわ。ジェイドを哀しませたらここら辺一体の水を枯らしてやるところよ》
「---それは止めて欲しいかな。大切な人達だよ」
《・・・・・・そうみたいね。安心したわ。じゃあもう戻るけど、ゆっくり過ごす事ね。じゃあまた》
そういってすうっと消えてしまった。
「・・・・・・君にも感じて欲しかったんだ。・・・ここは、俺には天国だよ」
手に入らないと諦めていたモノがあるんだ。
たとえ零れ落ちてしまうとしても。
アルトとその家族は、護るよ。
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