28 / 42
28 二日酔い再び?
しおりを挟む朝、まだ朝日が昇る前の薄暗い中、どんよりと重たい頭で考えることは『なんでまた二日酔いなんだよ』って事だった。
さすがに吐き気はないが、鈍い頭痛と体の重怠さ。
グラスにたったの一杯だよ?
弱すぎない?
---あーもー、俺、酒飲むの辞めよっかな。
毎回コレじゃ、楽しく飲めないわ。
・・・・・・なんて事を考えながら、はだけた小麦色の胸板に頬を押し付けたまま、なんでアルトに抱き枕にされてんだろうなーって思ってた。
珍しく朝寝坊している。
ああでも今日も休みだって言ってたっけ。
じゃあ良いのか、このまま。
そう思って二度寝を決め込んで、アルトの肌の温もりにほっこりしながら再び目を閉じた。
次に目が覚めたのは太陽が天に近くなった頃。
もうじきお昼だっていう頃だった。
その頃には頭の鈍い痛みはだいぶ和らぎ、体も重怠さが消えていた。
ホッとひと息つく。
アルトは肩肘をついて俺を優しい表情でみつめていた。
ドキドキする。
「おはよう」
もう『遅よう』だけどな。
「うん、おはよう。体調はどう?」
「ああ、うん、ちょっと頭が痛いくらいかな」
「・・・そう。良かった」
オイコラ、あからさまにホッとするな。
「・・・・・・俺、またなんかやらかしたっぽい感じですか?」
「ふはっ、なんで、疚しいことあるときって敬語なの?」
「・・・・・・何となく?」
「まあ、そうだな。俺をぎゅっとして離さなかったな」
「---ええ?! また?! ご、ごめん、また俺、覚えてない・・・はあぁ・・・・・・もう、酒飲むの辞めよう・・・」
「そうだね。それがいいね!」
「えええ? そんなに?!」
とびきりいい笑顔で言い切ったアルト。
ショック!
でも、他人様に迷惑をかけるのは本意ではないので。
「・・・・・・やっぱり、禁酒・・・断酒?」
はあぁ---。
微かに残る鈍い痛みを誤魔化すようにこめかみを押さえる。
「・・・・・・またアレ飲むのか?」
アルトがちょっと引いてる。
うん。
気持ちはもの凄ーく分かる。
「あー・・・アレね、味がねえ・・・改良して美味しくなったら飲もっかな・・・今は、逆に悪化しそうだ・・・」
正直飲みたくない。
このままの方がまだマシ。
「・・・もしかして、もうお昼?」
「ブランチかな? 軽く食べようか。・・・食べられる?」
「・・・多分、飲み物くらい?」
「---ま、仕方ないか。今日はゆっくりする事。分かった?」
「イエッサー」
「いえ・・・何?」
「ああ、いや、分かりましたって意味です」
「・・・・・・ふうん。まあいいや」
危ない。
コッチにはない言葉だよな。
気を付けないと。
あの後、やっぱり飲み物くらいしか入らず、サンルームの寝椅子に横になってぽかぽか。
いつの間にか眠っていたようで、ブランケットがかけられていた。
一人だけど、独りじゃない。
辺りに広がる人の気配。
穏やかな時間。
『ミズチ』
呼べばふわりと現れた、俺の精霊。
《呼んでくれたのね? どうしたの? なんか気持ちが穏やかな感じね。良いことでもあったのかしら》
「そうだな。この家の人達は凄く気持ちのいい人ばかりで・・・・・・嬉しいんだ」
《そう。良かったわ。ジェイドを哀しませたらここら辺一体の水を枯らしてやるところよ》
「---それは止めて欲しいかな。大切な人達だよ」
《・・・・・・そうみたいね。安心したわ。じゃあもう戻るけど、ゆっくり過ごす事ね。じゃあまた》
そういってすうっと消えてしまった。
「・・・・・・君にも感じて欲しかったんだ。・・・ここは、俺には天国だよ」
手に入らないと諦めていたモノがあるんだ。
たとえ零れ落ちてしまうとしても。
アルトとその家族は、護るよ。
122
お気に入りに追加
491
あなたにおすすめの小説


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
────────────
※感想、いいね、お気に入り大歓迎です!!

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる