パライソ~楽園に迷い込んだ華~

エウラ

文字の大きさ
上 下
23 / 42

23 アイントラハトの家族

しおりを挟む

それから、お茶を飲みながら俺自身が知りうる情報を話した。
もちろん巻き込まれ召喚や有原神威の事は抜いた情報だ。


それはほとんどがアルトがあげた報告と一致していて、その確認のようなモノだった。

「・・・・・・大体、報告通りだな。他に何か気になったこととか思い出したことがあれば何時でも言ってくれて構わない。それと、ジェイドは暫く家に泊まっていくだろう?」
「---え、でも・・・」

俺がエルフ(正確にはハイエルフ)なのって、バレちゃマズいんじゃ?
皆に迷惑がかかる。

「心配するな。この邸の使用人は、皆、他言無用の誓約魔法で契約している。それに昔から我が家に仕えている者達だ。公爵家の敷地から出すことは出来んが、邸内は自由にしていい」

紹介しようと言って、応接室に使用人が数人入ってきた。

「筆頭家令のスチュアート、筆頭執事のロバート、侍従長のダニエル、侍女長のエルサだ」
「「「「よろしくお願いいたします」」」」
「こ、こちらこそよろしくお願いします。ジェイド・カムイです」

慌ててぺこりとお辞儀をした。

「ジェイド様は賓客ですので、我々に頭を下げる必要は御座いません。敬語も無しで大丈夫ですので」

にっこりと笑う家令のスチュアートがそう言ったので、長い物には巻かれろの精神で割り切った。

「・・・うん。分かった、よろしく。分からないことがあったら聞くし、間違ってたら教えてね」
「「「「---喜んで!」」」」

微笑んでそう言ったら、何故か皆、やる気を出した。
返事が居酒屋の店員のノリだったのでびっくりしたが。

疑問符を浮かべて首を傾げると、アルト達も一緒に悶えていた。
何故?
分からん。


こうして暫くこの家に滞在が決まった俺は、使用人達が去った後にアルトの家族を紹介された。

アルトの母親で公爵夫人のマリアさん。
白に近い銀髪に金色の瞳の銀狼。
ちなみにお父さんは黒狼で金色の瞳。
アルトと同じ色だった。

長男のアルフレッドは黒狼で金色の瞳。
何と俺と同じ26歳だった。
ビックリ!
次男のシルヴェスタは銀狼でお母さん譲りの美貌と銀髪金曈。
24歳。
俺より年下だった。

---皆、美丈夫美人なので目が潰れる・・・!
そして息子様方、俺よりデカくて皆、年上に見えるんですが・・・。

羨ましいぞ!

そして改めて知ったアルトの家の爵位。
騎士団長なんて凄いなと思っていたら、公爵家だったのよ!

公爵家って、王様の次に大公家でその次ですよね?
聞くと、今は大公家は無くて実質王様の次に偉いおうちって事だよね?

えええ・・・そんな凄い家柄なのに、爆弾抱えて大丈夫なのって聞いてみたら。

「森人は大陸中で護るべき種族って決まりが出来てて、不当に扱うと極刑に処される。王族だろうと違反行為は首が飛ぶよ(物理的に)」
「・・・・・・へ、へえ・・・」

エンドルフィンがにこやかな笑顔で教えてくれた、が・・・。
なんか物騒な副音声が聞こえたよぉ・・・。

怖いよぉ・・・。
無意識にアルトにしがみついてしまって、皆から温かい目で見られていた。

恥ずかしい!

「それにしてもこんなに可愛らしいのに、アルフレッドと同い年ですって?! しかもシルヴェスタとアイントラハトの方が年下って!」

可愛すぎですわ---!って叫んでるけど、大丈夫なのお母さん?!

皆、呆れてるから何時ものことなんだな。

「あの、お近づきの印に、手土産を持ってきたんですけど」
「ええ? 別に気を遣わなくていいのに」
「いえ、俺が持ってきたかったので・・・ええと、これはお父さんに」

そういってお酒を出したら、皆が固まっていた。
あれ?

「・・・えーと?」
「・・・カムイ、今、父さんの事、って」
「えっ、あ! ごめんなさい。頭の中でそう呼んでたから、つい。失礼でしたよね! フルクベルト様に」

そうだった!
相手は公爵家。
幾らアルトの家族で気さくな感じでもこれは駄目だ。

どうしよう、と涙目になっている俺をどう思ったのか、急にマリアさんが突撃して来てぎゅむっと抱き締めて来た。

「いいのよジェイド君。幾らでもそう呼んで! 私たちの事は家族と思って接して欲しいの! さあ、私の事も呼んでみて!」

---え、いいの?
もうずっと呼ぶことのない言葉だった。

「・・・お母さん・・・」

思わず涙声になってくぐもっていたが、しっかり聞こえたようで、更にぎゅむっと抱き締められて、お胸で窒息死しそうになってアルトに回収された。


一瞬、天国が見えました。



胸って凶器になるんですね。

でもってお母さんくらいの歳の女性からの拘束も外せないんですね、俺。

ステータスの数値は高かったはずなのに、解せぬ。





しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

処理中です...