パライソ~楽園に迷い込んだ華~

エウラ

文字の大きさ
上 下
21 / 42

21 お宅訪問当日

しおりを挟む

今日は爽やかな目覚めだった。

頭もスッキリしてるし体も軽い。
アルトの魔法が良く効いたみたいだ。

着替えてリビングに行くと、二階からアルトが下りてくるところだった。

「おはよう、アルト」
「ああ、おはよう。よく眠れたようだな」
「うん、アルトの魔法のお陰だな。ぐっすり! 朝御飯の支度しちゃうね」

そういってキッチンへと向かった。
アルトは心なしかホッとしたようだった。

「結構深い眠りの魔法をかけたから、良く眠れたみたいだ。・・・・・・良かった」

そう呟いた。


軽く(アルトはガッツリ)朝食を済ませて身支度を整えると家の外に出る。

「もうじき、上空に俺のワイバーンを連れて来てくれるから、風魔法で上空まで飛んで上がるよ。後、悪いけどローブはしっかり被って顔を出さないで。見られるとマズい」

そう言われて、手持ちの認識阻害効果のあるフードコートを羽織る。

「分かった。一応、認識阻害の魔法を付与してあるんだけど・・・俺自身にも変幻魔法を使った方が良い?」
「いや、そこまでは大丈夫だと思う。それに最小限の人しか知らないから、最悪耳が隠れてれば、可愛い人くらいの認識だと思う」

---可愛いって・・・。
男に言う言葉じゃないだろ。

ちょっとムッとしていたらアルトが視線を上に向けた。
つられて俺も見たら、上空の結界の境界線ぎりぎりにワイバーンが二頭見えた。

あのうちの一頭がアルトのワイバーンなんだろう。

「来たみたいだ。飛ぶけど大丈夫?」
「うん、任せる」

上空まではアルトの風魔法で一緒に行くことにした。
その方がワイバーンも驚かないだろうというアルトにお任せしたのだ。
なのでアルトに横抱きにされてまーす!

・・・・・・これが俗に言うってヤツだな!

まさか自分がされる側になるとは・・・しかも年下男に!
いや女の子にされたらそれはそれで俺の矜持は粉々だけどな!


無事にワイバーンのところに着くと、待ち合わせた人物にアルトが声をかける。

「・・・おはよう御座います。まさか副団長自ら来て下さるとは思いませんでした」
「ああいや、今のところ彼の事を知るヤツが団長と俺しかいないんでね。団長とは腐れ縁だし?」

そんなやり取りをしつつカムイをワイバーンに乗せて固定するアルト。
ワイバーンの背には、翼を避けて騎乗用の鞍が乗っていた。
今回は二人用のを着けたのか単に皆のガタイが良いからなのか・・・・・・前者だと思いたい。

「おはよう御座います、初めまして、ジェイド・カムイです。よろしくお願いします」

カムイが副団長とやらに挨拶をした。
彼も名乗る。

「サカディア王国王立騎士団副団長を務めるエンドルフィンと申します。此度は団長の家への訪問、誠にありがとうございます」
「・・・ご丁寧な挨拶痛み入ります。どうぞ気楽になさって下さい」
「ありがとう、では。早速参ろうか!」

---変わり身早いな、副団長さん?
まあ、硬いのはごめんだからいっか。

そう思っているとアルトが後ろに乗ったので振り向く。

「暴れないで、そのまま俺に背中を預けて。そう、力を抜いて。・・・じゃあ行くよ!」

アルトの合図でワイバーンがひらりと進んだ。
俺、本当にワイバーンに乗って空を飛んでる!

「はは・・・・・・っ」
「カムイ? 平気?」

思わず笑い声をあげた俺にアルトが様子を窺う。

「---うん、凄く・・・凄く楽しいんだ。・・・世界は、こんなに広くて綺麗なんだね」

---こんなの、知っちゃったら。
俺、独りで生きていけないかも・・・。

どうしよう。
アルトとのたった数日が、俺の世界を変えてしまった。

嬉しいのに、涙が零れた。

嬉し涙じゃない。

どうしよう・・・俺・・・・・・。

アルトが好きだ。

---苦しい。

俺、どうしたら良い・・・・・・?


見つめた先には、朝日に照らされた綺麗なお城と大きな街並み。
そこから少し離れた場所にも大きな邸が見えた。

「あの邸が家だよ。このまま邸まで飛んでカムイを下ろしたら一旦騎士団に戻ってワイバーンを置いてくる」
「・・・・・・うん」
「心配するな。直ぐ戻る。父さんもいるから」
「・・・・・・うん、分かった」

つい今しがた自分の想いを自覚してしまったので気恥ずかしい・・・・・・。


そうして着いた邸で俺を下ろすと、アルトは一旦去って行った。


「じゃあ、カムイをよろしく、父さん」
「心配するな」

そういって俺を邸の中の応接室に案内してくれたイケオジ・・・・・・オジサンか?ってくらい若く見えるけど。


早く帰って来てよ、アルト。

居たたまれない・・・・・・。












しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

処理中です...