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21 お宅訪問当日
しおりを挟む今日は爽やかな目覚めだった。
頭もスッキリしてるし体も軽い。
アルトの魔法が良く効いたみたいだ。
着替えてリビングに行くと、二階からアルトが下りてくるところだった。
「おはよう、アルト」
「ああ、おはよう。よく眠れたようだな」
「うん、アルトの魔法のお陰だな。ぐっすり! 朝御飯の支度しちゃうね」
そういってキッチンへと向かった。
アルトは心なしかホッとしたようだった。
「結構深い眠りの魔法をかけたから、良く眠れたみたいだ。・・・・・・良かった」
そう呟いた。
軽く(アルトはガッツリ)朝食を済ませて身支度を整えると家の外に出る。
「もうじき、上空に俺のワイバーンを連れて来てくれるから、風魔法で上空まで飛んで上がるよ。後、悪いけどローブはしっかり被って顔を出さないで。見られるとマズい」
そう言われて、手持ちの認識阻害効果のあるフードコートを羽織る。
「分かった。一応、認識阻害の魔法を付与してあるんだけど・・・俺自身にも変幻魔法を使った方が良い?」
「いや、そこまでは大丈夫だと思う。それに最小限の人しか知らないから、最悪耳が隠れてれば、可愛い人くらいの認識だと思う」
---可愛いって・・・。
男に言う言葉じゃないだろ。
ちょっとムッとしていたらアルトが視線を上に向けた。
つられて俺も見たら、上空の結界の境界線ぎりぎりにワイバーンが二頭見えた。
あのうちの一頭がアルトのワイバーンなんだろう。
「来たみたいだ。飛ぶけど大丈夫?」
「うん、任せる」
上空まではアルトの風魔法で一緒に行くことにした。
その方がワイバーンも驚かないだろうというアルトにお任せしたのだ。
なのでアルトに横抱きにされてまーす!
・・・・・・これが俗に言う姫抱っこってヤツだな!
まさか自分がされる側になるとは・・・しかも年下男に!
いや女の子にされたらそれはそれで俺の矜持は粉々だけどな!
無事にワイバーンのところに着くと、待ち合わせた人物にアルトが声をかける。
「・・・おはよう御座います。まさか副団長自ら来て下さるとは思いませんでした」
「ああいや、今のところ彼の事を知るヤツが団長と俺しかいないんでね。団長とは腐れ縁だし?」
そんなやり取りをしつつカムイをワイバーンに乗せて固定するアルト。
ワイバーンの背には、翼を避けて騎乗用の鞍が乗っていた。
今回は二人用のを着けたのか単に皆のガタイが良いからなのか・・・・・・前者だと思いたい。
「おはよう御座います、初めまして、ジェイド・カムイです。よろしくお願いします」
カムイが副団長とやらに挨拶をした。
彼も名乗る。
「サカディア王国王立騎士団副団長を務めるエンドルフィンと申します。此度は団長の家への訪問、誠にありがとうございます」
「・・・ご丁寧な挨拶痛み入ります。どうぞ気楽になさって下さい」
「ありがとう、では。早速参ろうか!」
---変わり身早いな、副団長さん?
まあ、硬いのはごめんだからいっか。
そう思っているとアルトが後ろに乗ったので振り向く。
「暴れないで、そのまま俺に背中を預けて。そう、力を抜いて。・・・じゃあ行くよ!」
アルトの合図でワイバーンがひらりと進んだ。
俺、本当にワイバーンに乗って空を飛んでる!
「はは・・・・・・っ」
「カムイ? 平気?」
思わず笑い声をあげた俺にアルトが様子を窺う。
「---うん、凄く・・・凄く楽しいんだ。・・・世界は、こんなに広くて綺麗なんだね」
---こんなの、知っちゃったら。
俺、独りで生きていけないかも・・・。
どうしよう。
アルトとのたった数日が、俺の世界を変えてしまった。
嬉しいのに、涙が零れた。
嬉し涙じゃない。
どうしよう・・・俺・・・・・・。
アルトが好きだ。
---苦しい。
俺、どうしたら良い・・・・・・?
見つめた先には、朝日に照らされた綺麗なお城と大きな街並み。
そこから少し離れた場所にも大きな邸が見えた。
「あの邸が家だよ。このまま邸まで飛んでカムイを下ろしたら一旦騎士団に戻ってワイバーンを置いてくる」
「・・・・・・うん」
「心配するな。直ぐ戻る。父さんもいるから」
「・・・・・・うん、分かった」
つい今しがた自分の想いを自覚してしまったので気恥ずかしい・・・・・・。
そうして着いた邸で俺を下ろすと、アルトは一旦去って行った。
「じゃあ、カムイをよろしく、父さん」
「心配するな」
そういって俺を邸の中の応接室に案内してくれたイケオジ・・・・・・オジサンか?ってくらい若く見えるけど。
早く帰って来てよ、アルト。
居たたまれない・・・・・・。
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