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8 この世界の一般常識
しおりを挟む二階の階段を上がって直ぐの部屋を使って貰おうと開けてみた。
毎日、誰が来てもいいように浄化魔法で綺麗にしてあるから、マットレスと掛け布団、枕。
後は何かいるかな?
お泊まりセットがあった気がする。
パジャマとか歯ブラシとか?
洒落で置いてある物だったけど、使えるんじゃね?
でもまあ、自分で持ってるかもだし、聞いてからかな?
とたたたと一階に戻る。
アルトはお風呂を見ていた。
「ねえ、アルト。お泊まりグッズとかってあるのか? 無ければ用意するけど」
「え? ああ、マジックバッグに入ってるから大丈夫だよ」
「・・・・・・マジックバッグ・・・って」
俺もつかってる空間拡張機能付きのアイテムバッグの事かな?
時間遅延と停止付きで値段がえらく違うやつ。
サイズやバッグの種類でも値段が違ってた。
「ああ、コレだよ。時間停止付きでそれなりの容量の大きいモノだから高いけどね。生き物以外は大抵入る。重さはバッグの重さだけ」
「へえ」
「・・・カムイの持ってるのもそうだろう?」
「・・・・・・これ? 同じ物?」
俺のはインベントリと食糧庫に繋がってるけどこの世界のはバッグはバッグで他にはつながらないよな?
なんて疑問に思っていたのが顔に出てたのか、俺がマジックバッグを知らないと勘違いしたアルトが詳しく説明してくれた。
まあ、長いし専門的な単語がわんさか出て来たので割愛するが。
生産大好きな俺には非常に興味深かったとだけ言っておこう。
マジックバッグはバッグだけで完結してます。
倉庫には繋がりませんでした。
俺だけだったようだ、残念。
アルトにトイレやお風呂、二階の部屋を説明してリビングでこの世界の事を聞く。
この世界の名は、神様の名前を取って『アスガルド』と言うそうだ。
大陸には様々な種族が住んでいるが寿命がとてつもなく長くて繁殖力の低い竜人族と森人族は数が少ない。
竜人族はこの世界では最強なので、子供が少なくても死ににくくて一定数からは減りにくいのに対し、森人族は腕力では他の種族に劣るので捕まって奴隷として売られ、ぼろぼろになって死ぬことが多いそうだ。
「・・・・・・奴隷・・・」
───やっぱりあるんだ、奴隷制・・・。
神様が気を付けてって言ってたのはこれか。
「ただの奴隷じゃなくて、その・・・・・・性奴隷として、慰み者にされる」
「・・・・・・せいどれい・・・なぐさみもの・・・・・・」
たぶん俺の顔は血の気が引いて真っ青、いや通り越して真っ白になっているだろう。
ナニソレコワイ。
・・・・・・俺、一生ここから出ない!
ぼっちはもう我慢する。
そんな悲惨な目に合って死にたくない!
「───ごめんね、怖がらせたね。でも危険だと知ってて欲しかったんだよ」
「───ううん、ありがとう。知れて良かった。だって、森人ってだけでもそうなんだろう? ・・・・・・高位森人だったら、もっと悲惨なんだろ?」
「それはもう、王侯貴族に囲われて籠の鳥・・・長生きは出来るかもしれないけど、犯されながら死ぬまで出られなくなるだろう。───え、まさか・・・」
うん、そのまさかだよ、アルト。
「───カムイ、ハイエルフ・・・なのか?」
「・・・・・・」
無言で頷いた。
長い沈黙に耐えきれずに俺はキッチンへ向かった。
晩御飯を作って気を紛らわす作戦だ。
馬鹿馬鹿しいが、俺には一番合ってる。
作っている間は少なくとも忘れていられるから。
後は食べて風呂に入って寝る!
そう言うわけで、重い空気を払拭するべく御飯を食べ、お腹いっぱいになったら食休みにこの世界の貨幣の価値を教わった。
銅貨、銀貨、金貨、黒貨、白金貨があり、市井で流通するのは大抵が多くて金貨まで。
黒貨と白金貨は領主や国、大きな商会などが主に扱う。
銅貨一枚で黒パン2個買える感じだ。
日本円で100円くらいかも。
100円、1000円、1万円、100万円、1千万円と言う感じらしい。
・・・・・・ん?
神様、俺のゲームのお金も異世界用に変換してあるのか?
マジックバッグに手を突っ込む振りをしてインベントリから白金貨を取り出した。
「───カムイ?」
「これって使える?」
何も考えずに出したが、アルトの目が笑ってない。
「・・・・・・ごめんなさい?」
「───はあ・・・、俺だから良いけど、今後はむやみに取り出さないように!」
「ふぁい」
・・・申し訳ございませんでした。
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