パライソ~楽園に迷い込んだ華~

エウラ

文字の大きさ
上 下
8 / 42

8 この世界の一般常識

しおりを挟む

二階の階段を上がって直ぐの部屋を使って貰おうと開けてみた。

毎日、誰が来てもいいように浄化魔法で綺麗にしてあるから、マットレスと掛け布団、枕。
後は何かいるかな?

お泊まりセットがあった気がする。
パジャマとか歯ブラシとか?
洒落で置いてある物だったけど、使えるんじゃね?

でもまあ、自分で持ってるかもだし、聞いてからかな?

とたたたと一階に戻る。
アルトはお風呂を見ていた。

「ねえ、アルト。お泊まりグッズとかってあるのか? 無ければ用意するけど」
「え? ああ、マジックバッグに入ってるから大丈夫だよ」
「・・・・・・マジックバッグ・・・って」

俺もつかってる空間拡張機能付きのアイテムバッグの事かな?
時間遅延と停止付きで値段がえらく違うやつ。
サイズやバッグの種類でも値段が違ってた。

「ああ、コレだよ。時間停止付きでそれなりの容量の大きいモノだから高いけどね。生き物以外は大抵入る。重さはバッグの重さだけ」
「へえ」
「・・・カムイの持ってるのもそうだろう?」
「・・・・・・これ? 同じ物?」

俺のはインベントリと食糧庫に繋がってるけどこの世界のはバッグはバッグで他にはつながらないよな?

なんて疑問に思っていたのが顔に出てたのか、俺がマジックバッグを知らないと勘違いしたアルトが詳しく説明してくれた。

まあ、長いし専門的な単語がわんさか出て来たので割愛するが。

生産大好きな俺には非常に興味深かったとだけ言っておこう。
マジックバッグはバッグだけで完結してます。
倉庫には繋がりませんでした。

俺だけだったようだ、残念。


アルトにトイレやお風呂、二階の部屋を説明してリビングでこの世界の事を聞く。

この世界の名は、神様の名前を取って『アスガルド』と言うそうだ。

大陸には様々な種族が住んでいるが寿命がとてつもなく長くて繁殖力の低い竜人族と森人族は数が少ない。

竜人族はこの世界では最強なので、子供が少なくても死ににくくて一定数からは減りにくいのに対し、森人族は腕力では他の種族に劣るので捕まって奴隷として売られ、ぼろぼろになって死ぬことが多いそうだ。

「・・・・・・奴隷・・・」

───やっぱりあるんだ、奴隷制・・・。
神様が気を付けてって言ってたのはこれか。

「ただの奴隷じゃなくて、その・・・・・・として、慰み者にされる」
「・・・・・・せいどれい・・・なぐさみもの・・・・・・」

たぶん俺の顔は血の気が引いて真っ青、いや通り越して真っ白になっているだろう。

ナニソレコワイ。

・・・・・・俺、一生ここから出ない!
ぼっちはもう我慢する。
そんな悲惨な目に合って死にたくない!

「───ごめんね、怖がらせたね。でも危険だと知ってて欲しかったんだよ」
「───ううん、ありがとう。知れて良かった。だって、森人エルフってだけでもそうなんだろう? ・・・・・・高位森人ハイエルフだったら、もっと悲惨なんだろ?」
「それはもう、王侯貴族に囲われて籠の鳥・・・長生きは出来るかもしれないけど、犯されながら死ぬまで出られなくなるだろう。───え、まさか・・・」

うん、そのまさかだよ、アルト。

「───カムイ、ハイエルフ・・・なのか?」
「・・・・・・」

無言で頷いた。


長い沈黙に耐えきれずに俺はキッチンへ向かった。
晩御飯を作って気を紛らわす作戦だ。

馬鹿馬鹿しいが、俺には一番合ってる。
作っている間は少なくとも忘れていられるから。

後は食べて風呂に入って寝る!




そう言うわけで、重い空気を払拭するべく御飯を食べ、お腹いっぱいになったら食休みにこの世界の貨幣の価値を教わった。

銅貨、銀貨、金貨、黒貨、白金貨があり、市井で流通するのは大抵が多くて金貨まで。
黒貨と白金貨は領主や国、大きな商会などが主に扱う。

銅貨一枚で黒パン2個買える感じだ。
日本円で100円くらいかも。
100円、1000円、1万円、100万円、1千万円と言う感じらしい。

・・・・・・ん?
神様、俺のゲームのお金も異世界用に変換してあるのか?

マジックバッグに手を突っ込む振りをしてインベントリから白金貨を取り出した。

「───カムイ?」
「これって使える?」

何も考えずに出したが、アルトの目が笑ってない。

「・・・・・・ごめんなさい?」
「───はあ・・・、俺だから良いけど、今後はむやみに取り出さないように!」
「ふぁい」


・・・申し訳ございませんでした。







しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

処理中です...