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7 初めての来客
しおりを挟むとりあえず、ココで話してるのもなんだし、とアルトをホームに招待した。
隠蔽と結界を解いたら急に現れたロッジに驚いていたけど。
ちょうどおやつの時間だしね。
「・・・嬉しいが、初対面の見ず知らずの男をそんなに簡単に家に上げたら駄目だろう。もう少し警戒心を持ってだな・・・」
ブツブツと苦言を呈するアルト。
「? 家に入れるのはアルトが初めてだし、ここに来た動物以外の生き物もアルトが初めてだよ。それに結界を越えてきたのなら悪い人じゃ無いでしょ?」
「えっ・・・初めてっ・・・いやそれでもだ!」
動揺したのか、真っ赤になったアルト。
めちゃくちゃ心配してくれるのが嬉しくてつい笑ってしまう。
「大丈夫だよ。一応自分の身は自分で守れる。でもありがとう。自分以外の人に会ったの初めてで、心配して貰うのも初めて」
「・・・・・・ここには独りで?」
コホン、と咳をして落ち着いたアルトが神妙に聞いてきた。
「うん、まぁね。気付いたら独りだった。ここから北のかなり遠いところで目が覚めて、周りは薄暗い森で何にも分からなかったから」
ここに辿り着けて良かったよ。
お茶とお菓子をテーブルに出しながら笑って言った。
アルトは何か考えていたようだけど。
お腹が空いた俺は桃のタルトをもっくもっくと食べては紅茶を飲んでいた。
「どうしてこの森にいたのか分からないのか」
アルトがカムイに尋ねた。
それになんと応えようか悩む。
巻き込まれ召喚なんて言えないし。
そもそもこの体ですでにこの世界の住人になってるしなぁ・・・。
うーんうーんと唸っていたらしい。
アルトが、分からないなら無理に話さなくてもいいよ、と言ってくれたのでそれに乗ることにした。
「とにかく知らないことが多すぎて。あの、ヘンなこと聞くけど、ここって何処? なんていう名前の場所なの? 森の外ってどうなってるの? どんな人が住んでるの?」
「・・・・・・カムイ、それって・・・」
アルトが悲痛な顔で聞いてくるけど、ごめんね。
絶対勘違いしてるだろうけど、本当に知らないんだもの。
「森で目覚めたときには何にも分からなくて。自分の名前くらいしか分からなかったから・・・教えてくれる人もいないから、ここから下手に動けずにいたんだ。なあ、アルトは詳しいの?」
せっかくの情報源を逃すものかと、かなり前のめりでアルトに迫っていたようで、若干引かれた。
ショック。
「それはまぁ、一般的な事は当然ね。・・・聞きたい?」
「! 聞きたい! 教えてくれるのか?! なら家に泊まっていって・・・ぁ、でも何か用事があったんだよな? 終わったら帰らないといけないなら・・・また後で・・・来られる・・・・・・?」
興奮してグイグイいっちゃったけど、よく考えたらアルトは森の外から来た人だから、帰る家があるんだよな。
・・・・・・泊まってなんて、無理だよな。
何しに来たのか知らないけど、用事が済んだらいなくなる人だった・・・。
思い至って、段々尻すぼみになっていく。
最初の勢いはどこへやら・・・・・・。
急に萎れたカムイに同情したのか、アルトが言いにくそうにしながらも泊まってやるよ、と約束してくれた。
「───ありがとう。じゃあ、二階の部屋を泊まれるように確認してくる。一階は好きに見てて。お風呂とトイレはそっちね」
そう言って部屋に向かったカムイの足取りは軽かった。
───その後ろ姿を見送った後、アルトが魔導具で何処かに連絡を取っていることには気付かなかった。
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