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5 引き籠もってみた
しおりを挟む結局、その足でホームに戻った俺は装備を外して素っ裸になって風呂に入った。
めちゃくちゃ長風呂した。
ふやけるほど湯船に浸かった。
それで思い知ったことは、この体が本当に今の俺のモノだって事。
ゲームアバターとして動いていたときには感じなかった痛みが、匂いが、体温が。
空腹だって感じるし、何ならさっきトイレにだって行った。
さっきまで、本当は夢じゃないのかって誤魔化していた自分の気持ちに嫌というほど突きつけられて・・・・・・。
この青銀の髪も、翡翠色の瞳も、透けるような白い肌も・・・・・・。
全てがもう俺の肉体で。
浴室の中の鏡に映った俺が、翡翠色の瞳からぽろっと雫を零した。
ぽろぽろ、後から後から溢れてくる。
「───ダメだ。涙腺、壊れた・・・・・・」
独り言を言いながらタオルで体と顔を拭いて着替える。
ネグリジェのように長い真っ白い寝衣を着て、一階の部屋に入るとまたグズグズと泣き出す。
いい大人が、なんて苦言を呈するヤツもいない。
元気出せよ、なんて慰めてくれるヤツもいない。
誰もいない。
この世界に俺独り、なんて事は無いはずなのに人の気配なんて一つも無いから。
無性に泣きたくなった。
今現在、泣いてるけど。
───神様、せめてもう少し人の気配が感じられる場所に連れて来て欲しかったなあ・・・。
そうしてグズグズ引き籠もって三日。
───飽きた。
何もしないでベッドでゴロゴロ、グズグズと怠惰に引き籠もって三日目でもう飽きた!
「考えても結果は一緒。堂々巡りで考えるの疲れた!」
あー、アホらしい。
如何したってここで生きるしかないんだから、最初の目標通りに、慣れたら街かなんか探して他の生き物(笑)を探そう。
それで俺の好きな物作りをして売ったり、珍しい物を買ったり。
この世界の情報も圧倒的に少ないから・・・。
「・・・・・・なんだ、結構やることあんじゃん」
生き甲斐なんて大層な事じゃ無くて良いんだ。
「生きてりゃそれだけで人生ラッキーだな」
そうと決まれば、朝風呂入ってサッパリしよう。
しっかり御飯食べて、また森の探検をしに行こうか。
そう思って実行して朝御飯食べて外に出たら。
もふもふ達が溢れてました。
ナニコレ天国?!
この前には出て来なかった動物たちがわんさか溢れていた。
心無しか俺を気遣うような表情に見える。
「・・・・・・もしかして慰めに来てくれたの?」
嬉しい。
結構いっぱいいっぱいだったんだな、俺。
周りがよく見えてなかった。
人じゃないけど。
もふもふだから良いか。
とりあえず今日は、気が済むまでもふもふ達とゴロゴロしよう!
そうしてもふもふするか森の探検をするかの二択の日々を過ごしてはや半年。
他の土地は知らないが、ここは何時でも常春。
穏やかな気候に咲き乱れる花々、惜しげも無く実る果実は今やカムイの手によって甘味に加工され、食糧庫に大量に保管されている。
瓶詰めのジャムやシロップ煮、タルトになっていたりクッキーやパンに練り込んだりと色々。
この辺は趣味で作った物で、自分一人ではどう頑張っても消費出来ないが、今や容量無制限となったインベントリと食糧庫が繋がっていることが分かったので、いつか外部の生き物と接触出来たら、売るなり配るなりしようと考えて突っ込んでいる。
もちろん毎日のように自分も食べているが。
その日も庭でもふもふ達とゴロゴロ雑魚寝をしていた俺は、暖かい日差しともふもふの天然布団達に囲まれてうたた寝をしていたが、どうやらガチで熟睡していたようだった。
ふと、頬を撫ぜる温もりに意識が浮上した。
・・・何だろう。
何時ももふもふの毛に埋もれているけど、もちっとした肉球っぽくも無い。
ちょっと硬くても肉球はもちもちの弾力があるが、この手はごつごつしている。
節くれだって、なんか剣だこみたいな・・・。
そんな動物、いたっけかな?
「・・・・・・?」
ぼんやりと目蓋を上げると、焦点の合わない目をゆるゆると彷徨わせる。
・・・と、目の前に大きな影があるのを見つけた。
「・・・?」
何だ?
ここにいる大きいヤツは熊か狼くらい。
でも、今ここにいるのはもふもふっぽく無い。
何度かパチパチ瞬きをしていると焦点が合ってきた。
そこでようやく、相手の顔が見えて・・・ん?
───第一異世界人、発見?!
※漸く、脱ぼっち!
思ったよりも長かった。
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