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4 探索一日目にして折れた
しおりを挟むとりあえず暗くなる前に、と世界樹を後にした。
「・・・・・・太陽がこっち。羅針盤はコッチを北に向けてるから、方角は向こうの世界と同じかな?」
羅針盤を頼りに南と思われる方へ歩いてここへ辿り着いたから、最初にいた場所はかなり北の方と思われる。しかし周囲を見回しても木々に覆われていたから深い森には違いない。
「どのくらいの規模の森でどれくらいの範囲を結界で覆って聖域にしているのか、調べられるかな?」
マップとか表示出来れば───って、うわっ!
考えたらいきなり目の前に地図が現れた。
ステータスボードみたいなヤツ。
「いやぁ・・・・・・なんて言うか・・・・・・助かるけどさぁ」
急に出たから心臓に悪いわ。
まぁ、良いけど。
「それより、これは・・・・・・相当広いんだなぁ」
ぱっと見、見渡す限りの森。
全域を結界で覆っているわけではなくて、世界樹を中心に半径10kmほどを囲っているようだ。
世界樹は某TVの『この木なんの木~』みたいな枝振りで、その枝の影に俺はホームを設置しているので空から見ても隠れて見えないはず。
そもそも害意のあるものは結界に弾かれるだろうが、念の為ホームに最初から付属されてる隠蔽と結界魔法を発動させておこうっと。
そして世界樹から南に向かって、今回は走って跳んだ。
今から結界の端っこに向かおうと思ったら歩きじゃあ暗くなる前にホームに戻れない。
結界で危険が無いとはいえ、バリバリの現代っ子で都会っ子だった俺には人工の灯りなど無い真っ暗闇を歩く勇気は無い。
いくらハイスペエルフだって恐いモンは恐いんだよ!
だから走る。跳ぶ。
まぁ、この体の純粋な身体能力を知りたかったってのもあるが。
いやぁ、とんでもなく高性能な器でサイコーッス!
木の枝をひょいひょい跳んでもブレない体幹。
動体視力も半端ないから周りが止まって見えるくらい。
高いところからの着地も軽々で体操選手も真っ青な動きが出来る。
スゲーなんて感動していたらあっと言う間に端っこに到着。
「・・・落ち着いてみると境目が分かるが、俺の能力なのかそれなりの実力があれば分かるのか区別がつかんわ・・・」
やっぱり比較対象になるモノが早急に必要だなあ。
結界の向こうには魔獣だろう殺気が漂っている。
「───やってみないと分からない。いくぞ」
覚悟を決めて足を踏み出す。
自分のスペックなら死なない。
大丈夫、そう言い聞かせて。
───結界から出た瞬間。
マンモス級のイノシシみたいな魔獣が目の前に躍り出ていた。
一瞬、頭が真っ白になり次の瞬間には結界の中に吹き飛ばされていた。
・・・・・・無傷だったけれども。
「───衝撃が半端ねえ。でもほとんど痛くねえ。防具も何もかも新品のまま」
ということは、アレは俺にとっては雑魚って事だな。
「面白え。やってやんよ!」
俺はインベントリから愛用の刀を出すとニタリと笑って再び足を出した。
結果としては俺の勝ちだった。
さっきは目の前にいて焦ったが、今度はちゃんと認識していたから一太刀振り抜けば首と胴体がおさらばだった。
血が噴き出て死体が残っても特に何も感じなかった。
おそらくそういう精神耐性か無効化が付いてるんだろう。
この世界で生き抜くには必要不可欠だな。
状態異常無効化かな?
助かるけどさ。
「なんか急に人間止めちゃったからか、気持ちが追いつかないんだよな・・・・・・」
イノシシもどきをインベントリにしまうと勝手に解体されて収納される。
この辺りもゲーム仕様だ。
助かる。
いくら何も感じなくても、自分で捌きたくはない。
たった今、一つの命を、刈り取ったのだ。
いきなり現実を突きつけられた気分だった。
お前はこれから死ぬまで、こうして生きていかなくちゃいけないと。
───独りで?
無理だ。
独りはイヤだ。
・・・・・・とりあえず帰ろう。
帰って、気の済むまで引き籠もって考えよう。
これから、如何したいのか・・・・・・。
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