パライソ~楽園に迷い込んだ華~

エウラ

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「ステータス」

そう言うと目の前に現れる半透明のボード。
俺はボードを確認した。

【名前:ジェイド・カムイ(有原神威)/通称:E・E
性別:男
年齢:26歳
種族:高位森人ハイエルフ
体力:A+
魔力:S+
固有魔法:精霊魔法
称号:異世界人、巻き込まれた者、天涯孤独、精霊王、生産王、魔導王
備考:勇者召喚に巻き込まれた者。詳しくはメールにて確認】


「───やっぱり【パライソの住人】よりも簡素な表示だな」

ゲームでは数値での表示は無かったものの、攻撃力や防御力、俊敏性や知力、幸運値などがあった。
だがここでは体力と魔力位で、スキルの表示も無い。
ただ、体に染みついてるのか自然と使い方が分かるし頭に浮かぶから問題は無いかな。

「あと、なんでか種族がハイエルフになってるんだけど。レベルカンストで進化したってコトかな? そう言えばレベル表示も無いな」

ゲームではレベル制で、上限は999だった。
俺はもちろんカンストだった。
廃人一歩手前までいってたな・・・。
地道に頑張ったんだよ。

「これ、隠蔽魔法使えるかな。色々ヤバいところが・・・おぉ、イケる!」

頭で念じたら称号の異世界人と巻き込まれた者、備考の文言が隠蔽出来た。
本名は最初から隠蔽されてるから、これからはジェイド・カムイが俺の名前だな・・・。
てか、『通称:E・E』って・・・・・・(笑)まさかの公認なのか。

「まあ、親から貰った『カムイ』は使えるし、いっか」

今後、呼んでくれるヤツがいるのか怪しいけどね。

ステータスボードの右上に点滅するメールマークをタッチすると、メール画面に切り替わった。

『有原神威殿

此度は我が世界の愚か者が異世界からの勇者召喚をして其方を巻き込んで申し訳ない。

詫びとして、その容姿の能力をこの世界に合わせて変換しておいた。
その際、ハイエルフとなったがエルフの上位種族なので許してくれ。
アイテムも状態維持で減ったり壊れたりしないようにしたので存分に使って良いぞ。

勇者召喚をした国や彼らとは全く無関係になるように召喚先を変更して縁切り済みなので、もし会うことがあっても異世界人として利用されたり付き纏われたりしないはずじゃ。

この森の結界は元々ここにある聖域を護る為のモノなので、悪しきものは人も動物も通さない。
安心して過ごすと良い。
慣れたら外の世界へ行くと良いぞ。
この世界にはたくさんの種族が住んでいる。

まぁ、ハイエルフはほとんどいないが。
稀少な種族故、十分に気をつけるようにな。

元の世界へ帰すことは出来ぬが、この世界で生を謳歌して欲しい。

アスガルド神より』

「───はあ、巻き込まれ、ねえ。称号になってるからまさかと思ったら・・・。そういや、あの時周りが一瞬光ったような・・・。閃光弾でも誰か使ったのかと・・・」

椅子の背もたれに体を預けて天井を仰ぐ。

「・・・まあ向こうに未練はないし、お詫びがかなりいいものだったし。アイテムが減らないのもこのお陰か。間接的だけどちゃんと神様の説明もあって助かった。何か使命があるとかないとか気になってたんだよね」

さっき神様に感謝したのは間違いじゃなかったな。

勇者召喚なんて、召喚した国に利用されるのがオチだもんなぁ。
勇者の方は召喚特典でなんか強いのかね。
俺は巻き込まれだから何にもなくて、神様がサービスしてくれたっぽいし。

なんにしても助かった。
関わりたくない。
縁切りサイコー!

・・・・・・なんか不穏な事も言っていたが、とりあえずここで暫くスローライフだ。


ステータスボードを消して、食べ終わった食器を浄化魔法で綺麗にしてからインベントリにしまう。

「そうだ、髪紐」

何か無いかなーとインベントリを漁っているとちょうど良い組紐が出て来た。
若草色の紐だ。
ああ、確か刀のこしらえ用に何種類か作っていたな。

ゲーム内では気にならなかったが、現実世界となると長い髪は結構邪魔だ。
だからといって切れないし、面倒だが編み込むか括っておかないと・・・。

この世界が同じかどうか分からないが、【パライソ】でのエルフは髪に魔力が宿るという設定だったので、エルフは総じて長髪だった。

森人はその名の通り、木々や草花など自然からも魔素を吸収するのだ。
髪は長ければ長いほど吸収する面積が多くなるので切り揃えて清潔に保つ程度だ。
短髪はいない。

「さぁて、家の周りを少し探索してくるか。暗くなる前に少しでも状況把握をしておかないとなあ・・・先は長いぜ」

独りごちて、装備を身に付けてローブを羽織ると外へ出た。

相変わらず結界が張ってあるので、おそらくこの世界にもいるであろう魔獣的なモノは近くに気配が無い。
動物たちの気配はあるんだけどなあ。

聖域って言ってたけど、何か奉ってるのかな?
・・・って思ってたら。


───今気付いたけど、背後にデッカイ樹が生えてるんですけど・・・・・・。

無意識に鑑定してしまってから唖然とした。

───世界樹ユグドラシル

・・・・・・まぁじぃかぁ・・・・・・。

異世界あるある。


「なんにせよ、ここはもうゲームの中じゃないんだな。もしも魔物や悪人に遭遇したら、その時俺は命を刈り取れるのか・・・?」

ゲームは作り物だからこそ罪悪感もなく殺せるが、ここは違う。

当分、というか今は覚悟が足りないから遭遇したくない。

だがやらねば死ぬのはこちらだ。
当然、死んだらTHE ENDだろう。

「そういう場面に遭遇したら躊躇していられないな・・・」

万能薬エリクサーはゲーム内では蘇生薬として普通に使われていたが、先ほどアイテムを確認したところ、ただの欠損を回復出来る凄い薬って感じだった。


転移直後に死亡フェードアウト、なんて洒落にならないからな・・・。


この時の俺は、まだまだ認識が甘かったんだと思う。

まだどこか、ゲームの感覚が残っていたんだ。



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