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14 王都にドナドナ 2
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俺の言葉にアビスは頷きつつ渋い顔をして言った。
「それはまあ、あとでいくらでも教わるとして……魔力足りるの?」
「──ぅ」
アビスに痛いところを突かれた。何をどうやって知ったのか、どうやらアビスは俺の魔力量も把握しているようだ。当たり前のようにそう言われて俺は口篭もった。
そう、俺は異世界転生にあるあるの知識チートや魔法チートはあったけど、肝心の魔力が物凄く少ない。
じゃあ剣の腕とか体力はといえば、こちらも平凡かそれ以下。
前世の記憶が甦ったときに魔法の存在を自覚してからずっと、前世の物語に出てくるような『ギリギリまで使うと次の日に少し増える』方法を自己流で続けて魔力総量を増やそうとした。
しかしこれがなぜかほとんど増えない。
やり方が違うのかと思っても他には思いつかず、続けてはいたんだが。
その後、魔法の知識を手に入れてみると増やすやり方は合っていた。それでも増えにくいということは、俺の魔力量はチートではなかったんだなと無理矢理割り切った。
でも割り切ったからといっても魔力を増やしたい気持ちは消せなくて、今もギリギリまで使ってから眠っているんだが。
そんな俺の魔力量は、転移一回分。
どう頑張ってもそれ以下の魔力量では発動しない。そして転移を一度使えば俺の魔力は空っ穴になってしまう。
何で分かるかって?
確認のために何度か街の外から泊まってる宿の部屋に転移したんだよね。部屋の中ならぶっ倒れても何とかなるかなって。
案の定、ぶっ倒れて床で一晩寝て身体中バキバキだったけど。そのときに距離は関係なく俺の今ある魔力一回分が必要だと分かったんだ。
そういうわけで本当にピンチのときの最終手段として取っておいたモノだから、普段の生活でもなるべく魔力を消費しないようにしているわけで。
だからあの洞窟でも物理的に火を熾して乾かしたりしてたわけだ。
念のため魔力回復ポーションは持っているが、ソレを使う前にぶっ倒れると思う。
「──だから転移先でアビスに飲ませて貰おうかな、なんて……へへ」
そう言って苦笑したらアビスは眉間に物凄いシワを寄せて言った。
「ねえノヴァ、そこまでして馬車での移動はイヤ? いや、それよりも謁見がイヤなのか?」
「ぅ、や……うーん。まあ正直、馬車移動がイヤなんじゃなくて謁見が避けられないならサッサと済ませていつも通りの生活に戻りたくて……。道中色々と考えちゃうと思うし」
図太そうに見えるかもだけど、けっこう繊細な俺は絶対にストレスで胃がやられそう。
そう言ったらアビスは少し考えてから予想外のことを言った。
「もし、もしもノヴァのその魔力量が増やせると言ったらどうする?」
「……は?」
アビスの言葉に今度は俺が唖然とした。
増やせる?
あんなに頑張ってたのに増えなかった魔力を?
「いや、ちょっと言い方が違うな。元々の魔力量に戻すんだ」
「……それこそ何言ってんの? だって俺、元々が少ないんだって──」
「その傷」
俺が怪訝そうに言ったらアビスは俺の胸を指差した。そこには幼い頃に魔物に付けられた傷がある。
「傷?」
「そう。胸に残る魔物のかぎ爪痕……そのせいで魔力の流れが遮られているって言ったら?」
「──コレの、せい?」
俺は思わず右手を心臓の辺り、その傷痕に持っていった。
「おそらくね。たぶん魔力回路が傷付いてしまったまま治癒したんだろうね。だから巡る魔力が細くて不活性なんだろう」
それが本当なら──。
「──直せる? そうしたら増える?」
「王都に、いや王宮の魔導師なら確実に魔力回路を診て貰えるから、今よりはよくなる可能性が高いよ。だから──」
「行く! 俺、王都に行くわ!」
思わず椅子から立ち上がり、そう叫んだ。アビスは驚いてポカンとしたが、すぐに破顔して笑った。
※めちゃくちゃ誤字ってました。修正してます、すみません。
「それはまあ、あとでいくらでも教わるとして……魔力足りるの?」
「──ぅ」
アビスに痛いところを突かれた。何をどうやって知ったのか、どうやらアビスは俺の魔力量も把握しているようだ。当たり前のようにそう言われて俺は口篭もった。
そう、俺は異世界転生にあるあるの知識チートや魔法チートはあったけど、肝心の魔力が物凄く少ない。
じゃあ剣の腕とか体力はといえば、こちらも平凡かそれ以下。
前世の記憶が甦ったときに魔法の存在を自覚してからずっと、前世の物語に出てくるような『ギリギリまで使うと次の日に少し増える』方法を自己流で続けて魔力総量を増やそうとした。
しかしこれがなぜかほとんど増えない。
やり方が違うのかと思っても他には思いつかず、続けてはいたんだが。
その後、魔法の知識を手に入れてみると増やすやり方は合っていた。それでも増えにくいということは、俺の魔力量はチートではなかったんだなと無理矢理割り切った。
でも割り切ったからといっても魔力を増やしたい気持ちは消せなくて、今もギリギリまで使ってから眠っているんだが。
そんな俺の魔力量は、転移一回分。
どう頑張ってもそれ以下の魔力量では発動しない。そして転移を一度使えば俺の魔力は空っ穴になってしまう。
何で分かるかって?
確認のために何度か街の外から泊まってる宿の部屋に転移したんだよね。部屋の中ならぶっ倒れても何とかなるかなって。
案の定、ぶっ倒れて床で一晩寝て身体中バキバキだったけど。そのときに距離は関係なく俺の今ある魔力一回分が必要だと分かったんだ。
そういうわけで本当にピンチのときの最終手段として取っておいたモノだから、普段の生活でもなるべく魔力を消費しないようにしているわけで。
だからあの洞窟でも物理的に火を熾して乾かしたりしてたわけだ。
念のため魔力回復ポーションは持っているが、ソレを使う前にぶっ倒れると思う。
「──だから転移先でアビスに飲ませて貰おうかな、なんて……へへ」
そう言って苦笑したらアビスは眉間に物凄いシワを寄せて言った。
「ねえノヴァ、そこまでして馬車での移動はイヤ? いや、それよりも謁見がイヤなのか?」
「ぅ、や……うーん。まあ正直、馬車移動がイヤなんじゃなくて謁見が避けられないならサッサと済ませていつも通りの生活に戻りたくて……。道中色々と考えちゃうと思うし」
図太そうに見えるかもだけど、けっこう繊細な俺は絶対にストレスで胃がやられそう。
そう言ったらアビスは少し考えてから予想外のことを言った。
「もし、もしもノヴァのその魔力量が増やせると言ったらどうする?」
「……は?」
アビスの言葉に今度は俺が唖然とした。
増やせる?
あんなに頑張ってたのに増えなかった魔力を?
「いや、ちょっと言い方が違うな。元々の魔力量に戻すんだ」
「……それこそ何言ってんの? だって俺、元々が少ないんだって──」
「その傷」
俺が怪訝そうに言ったらアビスは俺の胸を指差した。そこには幼い頃に魔物に付けられた傷がある。
「傷?」
「そう。胸に残る魔物のかぎ爪痕……そのせいで魔力の流れが遮られているって言ったら?」
「──コレの、せい?」
俺は思わず右手を心臓の辺り、その傷痕に持っていった。
「おそらくね。たぶん魔力回路が傷付いてしまったまま治癒したんだろうね。だから巡る魔力が細くて不活性なんだろう」
それが本当なら──。
「──直せる? そうしたら増える?」
「王都に、いや王宮の魔導師なら確実に魔力回路を診て貰えるから、今よりはよくなる可能性が高いよ。だから──」
「行く! 俺、王都に行くわ!」
思わず椅子から立ち上がり、そう叫んだ。アビスは驚いてポカンとしたが、すぐに破顔して笑った。
※めちゃくちゃ誤字ってました。修正してます、すみません。
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