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第四章 エルフの里編
森の賢者 その2
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同じ所を歩いているような気がするが、進んでいるのだろうか?
アルカスが時間の感覚がわからなくなってきた頃、ふっと膜を抜けたような感覚があった。
そこを抜けた途端に広がった景色に目を瞠った。
「・・・すげ・・・」
エルフの里だろう、一面の緑の真ん中に、大きな、それはそれは大きくて見事な大木がそびえ立っていた。
アルカスの顔くらいあるキラキラと輝いている葉っぱは緑色だけど、透けて葉脈が見えた。
「あれはの、世界樹だ」
「はええ---ん? どこかで聞いたような言葉が・・・」
「俺達の住む国の名前がユグドランだからな」
フェイが教えてくれた。
そうだ、ソレソレ!
「あ、じゃあ国の名前ってこの木からとったの?」
「そうじゃ。この国が出来る前からここにあるでの」
へえ、ビックリ仰天!
「ひとまず我の邸へ向かうとしようかの」
「ウィステリアの家ってここから見える?」
「見えるぞ。あそこだ」
そう言って指差した方向を見ると、他の家からけっこう離れた場所に、ぽつんとツリーハウスがあった。
見ると他の家もほとんどツリーハウスになっている。
エルフの里ではこれがデフォルトらしい。
可愛らしいサイズだけど。
「もしかして皆、空間魔法で拡張してるの?」
「そうさの。木の上にそんなに大きなものは建てられん。木も傷むしの。里もさほど広くないし、自然とこうなった」
「緑と共存関係にあるんだね。凄い」
そんな会話を交わしているうちに、里の中へ入ったようだ。
門番らしきエルフがこちらに気付いて声をかけてきた。
「ウィステリア様、ご無沙汰しております。お帰りなさいませ。この方達は?」
「我の連れだ。フォレスター家の方々と親しい友人よ」
「お邪魔します」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますね」
ぶふっ!
フェイが急にしおらしい。
余所行きになった。
思わず噴き出したのでフェイに見えないところを叩かれた。くそう!
「一応規則なので、身分証を見せて下さい」
「はい、どうぞ」
「これです」
「俺はこれです!」
順番に確認していき、アルカスがギルドカードを門番さんに見せた。
ソレを見て門番さん固まる。
・・・・・・残り3人が噴き出す。
「・・・君はエルフだったのか?」
「ちっがーう!! お爺ちゃん、違うって言ってやって!」
「しかしのう・・・」
「・・・・・・お爺ちゃん? ウィステリア様のお孫様?!」
アルカス達の会話に唖然として、門番さんが叫んだ。
「---ウケる!」
「笑っちゃいけないけど・・・ふふっ」
「そこ! 笑ってないで何とかしてよぉ!!」
本日、新たな黒歴史がここに刻まれた。
大騒ぎになって、普段静かな里にアルカス達の笑い声が響き渡る。
なんだなんだと家や畑から顔を出してくるエルフ達。
ウィステリアを見つけると懐かしそうに近寄ってきて、次にアルカス達に気付いてまた騒いだりと、暫く門の辺りはぎゅうぎゅうだった。
最終的に、大勢の大きな体格に囲まれたアルカスがぐったりしてクラビスに抱え上げられてお開き?になった。
結局疲れて寝落ちしたアルカスを抱えてウィステリアの家へと入り、客間に寝かせて落ち着いた。
「ウィステリア様、すみません。ありがとうございます。」
「何、構わんよ。アルカスは大丈夫かの」
「少し休めば大丈夫でしょう」
「それにしても凄かったな。アルカス、もみくちゃにされてたよ」
フェイがキッチンを借りてお茶を入れてきてくれたので受け取る。
「まぁの。エルフは子が出来にくいから、子供を見ると無性に可愛がりたくなるんだよ」
ウィステリアが苦笑して先ほどの様子を思い出す。
自分に気付いてやって来たのに、アルカスを見た途端に構い倒していたエルフ達。
アルカスはアレでも成人しているのだが、見た目が庇護欲をそそる為、分かっていてもつい揶揄ってしまうのだ。
「これから質問攻めにあうだろうな」
今はただ呑気に眠っているアルカスが笑ったり焦ったり拗ねたりする様子が目に浮かぶようだった。
アルカスが時間の感覚がわからなくなってきた頃、ふっと膜を抜けたような感覚があった。
そこを抜けた途端に広がった景色に目を瞠った。
「・・・すげ・・・」
エルフの里だろう、一面の緑の真ん中に、大きな、それはそれは大きくて見事な大木がそびえ立っていた。
アルカスの顔くらいあるキラキラと輝いている葉っぱは緑色だけど、透けて葉脈が見えた。
「あれはの、世界樹だ」
「はええ---ん? どこかで聞いたような言葉が・・・」
「俺達の住む国の名前がユグドランだからな」
フェイが教えてくれた。
そうだ、ソレソレ!
「あ、じゃあ国の名前ってこの木からとったの?」
「そうじゃ。この国が出来る前からここにあるでの」
へえ、ビックリ仰天!
「ひとまず我の邸へ向かうとしようかの」
「ウィステリアの家ってここから見える?」
「見えるぞ。あそこだ」
そう言って指差した方向を見ると、他の家からけっこう離れた場所に、ぽつんとツリーハウスがあった。
見ると他の家もほとんどツリーハウスになっている。
エルフの里ではこれがデフォルトらしい。
可愛らしいサイズだけど。
「もしかして皆、空間魔法で拡張してるの?」
「そうさの。木の上にそんなに大きなものは建てられん。木も傷むしの。里もさほど広くないし、自然とこうなった」
「緑と共存関係にあるんだね。凄い」
そんな会話を交わしているうちに、里の中へ入ったようだ。
門番らしきエルフがこちらに気付いて声をかけてきた。
「ウィステリア様、ご無沙汰しております。お帰りなさいませ。この方達は?」
「我の連れだ。フォレスター家の方々と親しい友人よ」
「お邪魔します」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますね」
ぶふっ!
フェイが急にしおらしい。
余所行きになった。
思わず噴き出したのでフェイに見えないところを叩かれた。くそう!
「一応規則なので、身分証を見せて下さい」
「はい、どうぞ」
「これです」
「俺はこれです!」
順番に確認していき、アルカスがギルドカードを門番さんに見せた。
ソレを見て門番さん固まる。
・・・・・・残り3人が噴き出す。
「・・・君はエルフだったのか?」
「ちっがーう!! お爺ちゃん、違うって言ってやって!」
「しかしのう・・・」
「・・・・・・お爺ちゃん? ウィステリア様のお孫様?!」
アルカス達の会話に唖然として、門番さんが叫んだ。
「---ウケる!」
「笑っちゃいけないけど・・・ふふっ」
「そこ! 笑ってないで何とかしてよぉ!!」
本日、新たな黒歴史がここに刻まれた。
大騒ぎになって、普段静かな里にアルカス達の笑い声が響き渡る。
なんだなんだと家や畑から顔を出してくるエルフ達。
ウィステリアを見つけると懐かしそうに近寄ってきて、次にアルカス達に気付いてまた騒いだりと、暫く門の辺りはぎゅうぎゅうだった。
最終的に、大勢の大きな体格に囲まれたアルカスがぐったりしてクラビスに抱え上げられてお開き?になった。
結局疲れて寝落ちしたアルカスを抱えてウィステリアの家へと入り、客間に寝かせて落ち着いた。
「ウィステリア様、すみません。ありがとうございます。」
「何、構わんよ。アルカスは大丈夫かの」
「少し休めば大丈夫でしょう」
「それにしても凄かったな。アルカス、もみくちゃにされてたよ」
フェイがキッチンを借りてお茶を入れてきてくれたので受け取る。
「まぁの。エルフは子が出来にくいから、子供を見ると無性に可愛がりたくなるんだよ」
ウィステリアが苦笑して先ほどの様子を思い出す。
自分に気付いてやって来たのに、アルカスを見た途端に構い倒していたエルフ達。
アルカスはアレでも成人しているのだが、見た目が庇護欲をそそる為、分かっていてもつい揶揄ってしまうのだ。
「これから質問攻めにあうだろうな」
今はただ呑気に眠っているアルカスが笑ったり焦ったり拗ねたりする様子が目に浮かぶようだった。
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