【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

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第二章 王都編

王都観光(side憲兵隊隊長)

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その連絡を貰ったのは今朝早くだった。

夜勤明けで今日、明日は非番。
家でゆっくり寝るかと甲冑を脱いで身軽になった頃、急に詰め所にある伝達魔導具が震えた。

事務方が対応に出る。

「こちらは王都中央憲兵隊詰め所です」
《朝早くから申し訳ございません。王都邸のフォレスター家執事でございます。憲兵隊隊長殿はいらっしゃいますでしょうか?》
「は、はい! 少々お待ち下さい!」

事務方が慌てて私を呼んだ。
「隊長に、フォレスター家から、ご指名ですっ!!」
「・・・は?」
「フォレスター家の執事殿から隊長にご指名ですって!」
「・・・何でまた?」

そろりと魔導具へ向かい、用件をうかがうと、三男のアルカス様が夫のクラビス殿を伴って王都に繰り出すそうで、出来れば気にかけてやって欲しいとのこと。
魔導具でお二人の容姿も確認し、了承の旨を伝えると、最後に爆弾をぶち込んできた。

《王都の有名菓子店を最初に訪れる事になっております。クラビス殿は大層な美丈夫ですので、大物が釣れると思いますよ? 記録結晶を携帯なさるとよろしいかと》
「・・・は」
では、と言って通信は切られた。

・・・・・・は?

ソレってそういう事だよな?

・・・ドコまで知ってるんだ。怖い。

「・・・隊長。どうされるので?」
「どうもこうもあるか。休み返上でやるしかないだろう。・・・ったく、強制じゃないところがらしいっちゃらしいが」
はあーっと溜息を吐いて、汚れを落とす為に一度家に戻ることにした。

「昼番のヤツにも連絡してくれ。何かあったときの為にすぐに動けるようにしておくようにと」
「了解です」
手をひらっと振ると詰め所を後にした。

家に戻ると、婚約者が待っていた。朝御飯の用意をしてくれていたらしい。
「お帰りなさい。お疲れ様」
「ああ、ただいま。何時もありがとう」
婚約者で幼馴染みの彼は、例の菓子店で店員をしている。今日もこれから仕事の筈だ。

「帰って早々忙しないが、急用が出来てな、非番だが出かけなくてはいけなくて」
朝食を取りながら簡単に説明する。

隊長という役職柄、わりとこういう事があるため、彼も割り切ってくれて助かるが。
「ただ、今回はちょっと面倒な事になりそう何だ。・・・今日はお前、イートイン担当だよな?」
「ええ、そうですが、それが何か・・・」

キョトンとした顔も可愛いな・・・って違う!

「その面倒ごとが店で起きそうなんだよ」
詳しくは言えないから、注意を促す。
うち(憲兵隊)に連絡して来るくらいだ。菓子店でも同じように連絡が入る筈だ。
「おそらく、店でも何か言われると思うが、俺も店内に入っておくから心配するな」
「・・・分かりました。頼りにしてますね」

ニコッと笑う顔に癒された。

風呂に入って私服に着替え、ひとまず彼を職場である菓子店へ送る。
ついでに何かあったときの為に、退路や危険な物などを素早くチェックしておいた。

一旦広場に戻り、これから来るであろう2人を遠目から探す。

・・・いた。

・・・・・・めちゃくちゃ目立ってんだが。
何だアレ。
王子と美少女、いや美少年。
片手に縦抱っこって。
事前に人相は確認していたが、歳の離れた兄弟か、ロリコンにしか見えない。

ヤバい。犯罪臭がする・・・・・・。

俺の婚約者、普通に可愛い子でよかった!



気配を追うと、影っぽいのが3人か?
見た感じ、あからさまに護衛ってヤツはいないな。
まあS級冒険者が旦那様って、護衛は要らんな。
・・・・・・俺も要らんだろう?

アレか、揉め事の後始末係。

知らんぷりして後を追う。
アルカス様は気付かないが、クラビス様は当然分かっている。
さっきチラッと目が合ってビビった。

そうして、菓子店で仲睦まじい様子を見て、俺の婚約者も見て、ほのぼのとした空気の中に、予想通り割り込んできた女二人。

早速、記録結晶を作動させる。

お前らおよびじゃねえっての。素気なく追い払われているのに、なぜ気付かないのか。

止めろ!
それ以上はクラビス様がキレる!


・・・・・・何とか落ち着いたが、結局、お二人は店を出て行ってしまった。
去り際、クラビス様がぽそっと、
「悪いが後始末を頼みます」
と言っていた。

やっぱりかーーー!
いや、仕事だからいいんだけれども!

さっさと片付けて家に帰ろう。
婚約者も、オーナーに話をして、連れて帰ろう!



そうして宣言通り、ちゃっちゃと終わらせて、婚約者と一緒に再びアルカス様達を追っていくと、影が気配無く耳元で囁いた。
『後は大丈夫とのことです。お疲れ様でしたと』
そう言って去って行った。

またかよ! ビビったわ!

彼は気付かなかったようで、キョトンとしながら
「お腹空いたね。予定外だったから、屋台で買っていって、家でゆっくり食べようか」

そう言ったので、俺も耳元で囁いた。
「そうだな。家で、ゆっくり、食べたいな?」

お前を。

途端に耳まで真っ赤になった婚約者をこれでもかと可愛いがる俺だった。

こんな日も悪くない。




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