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第一章 フォレスター編
病めるときも健やかなるときも
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昨日寝てしまった後に、俺の結婚が決まった。
いや、何言ってるのか分かんないって。
ーーー遡ること2時間前。
朝起きたら、隣にはクラビス。
にこやかな笑顔にクラクラした。
「おはよう」
「お、おはよう」
いつになっても慣れない。眩しい。
いつの間にかずっとクラビスに引っ付いて寝るのが当たり前になってて、この前、ちょっとクラビスに聞いてみたら、至極当然のように『アルカスが離れたくないって言ったから』と言われた。
『魔の一週間』か?! と羞恥に悶えたのは記憶に新しい。
「アルカスが覚えてなくても俺が覚えてるから心配ない」
苦笑して言うが、いやそれ、何の心配?!
てか、朧気ながら何となく覚えてるんだよぉ!
「・・・俺、めちゃくちゃ甘えてた気がするんだけど・・・・・・」
ぽそっと呟いたら、クラビスがソレはいい笑顔で笑っていた。
「うん。凄く可愛くて凄く幸せだった。俺の理性、よく保ったなってくらい」
・・・うん?
イマイチよく分からない。
理性を試すような事したっけ?
頭の上に?マークを浮かべている俺をにこやかに見つめながら支度を整えて朝食を食べに行くと、すでに勢揃いした家族とフェイ、ウィステリアが座っていた。
「おはよう、アルカス。夕べ食べずに寝たからお腹空いたろう? クラビスもおはよう」
「おはよう。うん、さすがに空いた。昨日はごめんなさい」
母さんに挨拶して、昨日のやらかしを謝った。
「悪気がないのは分かってる。ただ、なるべくこれからもクラビスや我らがいるときにしてくれ。・・・不自由かもしれんが」
「はい、大丈夫。もっと色々勉強して、『常識人』目指します!」
たぶん、バレるとかなりヤバい案件なんだろうな。やっぱり常識大事!
そう思って決意表明したんだが。
「ふはっ! 『常識人』!! アルカスが?! 想像つかない!」
・・・フェイが思いっきり吹き出して笑い、つられた皆も笑い出した。
「フェーイー?」
半目で睨んでいたら、クラビスに頭を撫でられた。
「アルカス、頑張ろうな?」
そんな生温かい目で見るのは止めろ。
そして朝食後のお茶の時間。
母さんから告げられた言葉がこれ。
「アルカスとクラビスの婚姻届だ」
「・・・・・・はい?」
これが冒頭に繋がるわけ。
「昨夜お前が寝た後に皆と相談した結果、早急に婚姻を、という結論に達した。クラビスには事後になったが。もちろんイグニス達にも了承を得ておる」
至極真面目な顔の母さん。冗談ではないことがよく分かる。
「・・・・・・昨日の俺のやらかしのせい?」
「それもあるが、神の称号ですでに番扱いになっているのだ。籍だけでも入れておけば外野は黙ろう」
ウィステリアがほのほのと言う。
「・・・王家辺りですか」
クラビスが渋い顔でポツリと零す。
王家って、この国の王族って事?
「そうさの。何か言われても突っぱねる気でおるが、外堀を埋めておくに越した事はない」
「俺のことが漏れるとマズいって事だよね? ・・・俺、やっぱり」
「そこまで。前も言ったよね? 全然問題ないって。迷惑じゃないって。・・・・・・まだ分からない? 信じられないならこれからしっぽり、ガッツリ体に教え込ませようか」
「止めんか! この変態!!」
フェイがクラビスの頭をスパコーンと叩いた。
ありがとう、フェイ!!
そんでクラビス。ソレってボディトークってヤツですか??!
怖え・・・・・・!!
それ絶対監禁されるやつ!!
「ゴホン!」
グラキスの咳払いでハッとする。
皆して居住まいを正す。
「ともかく、式は後で好きにやるなりしてよいから、入籍だけでもすぐにしなさい。書類に記名して教会で受理されたら王都の神殿に送られる。そちらで書類は保管される。控えが出るのでそれを各自保管する感じだ」
なるほど。
でも、こんなにすぐにしなさいって事は厄介ごとがあるって事だよね?
チラッとクラビスを見るが、しれっと笑顔で流された。
今は言うことじゃないのかな?
仕方ない。俺にはどうすることも出来ないし、取りあえず記名してしまおう。
「ここにアルカスの名前を。俺はここに書くから」
そう言われて、届の用紙を頭から終わりまで隅々読んだ。
うん。普通の婚姻届だ。
特別変わったところもヘンな文言もない。
「・・・・・・言われたところに記入だけかと思ってたが、しっかりしてんな。上から下まで全部読んで確認してるよ」
フェイが意外そうに呟いている。
当然。
詐欺まがいの契約とか普通にあるんだから、そこは身内でも確認するに決まってる。
俺は警戒心強いのよ?
てな事を言ったら、皆に微妙な顔をされたけど、ソレってどういう意味の顔なんだ?
記入し終えた届けを教会に持っていって、すぐに受理されて控えを渡された。
俺とクラビスと、フォレスター家とフォルター家に1部ずつ。
「そういえば、俺、クラビスのお父さんにまだ一度も会ってないんだけどいいの? 結婚が先になっちゃったけど『息子さんを俺に下さい』って言う気満々だったんだけど?」
「ぶはっ」
・・・・・・そこかしこで吹き出す音が聞こえる。
「アルカスはそのままでいい。そうだな、近いうちに顔を出すか」
クラビスが微笑みながら言った。
「ん、分かった。なあ、こっちの結婚式って、神様の前で誓いの言葉とか言うの?」
「まあ、決まった文言はないかな? 結婚しましたって報告するような感じだ。向こうでは違うのか?」
「誓う神様によってちょっと違うかな。でもわりと多いチャペル、えと、教会での式の時は確か神父さんが新郎新婦に『病めるときも健やかなるときも、共に歩んでいく事を誓いますか?』って事を聞いて、2人とも『誓います』って答えるの」
それで、お互いの薬指に結婚指輪を嵌めあってキスするんだよ。
恋愛結婚で、子供も望まれて産まれてくる。皆に愛されて幸せに暮らすんだ。
この世界に還ってきて、スローライフが一番の望みだったけど、ソレって好きな人がいて周りに愛されて、自分も愛して。だからこその望みだったんじゃないかなって思う。
「クラビス?」
クラビスが抱きしめてきた。
「アルカス。愛してるよ。病めるときも健やかなるときも、死んでも愛している」
・・・・・・クラビスが言うと別な意味で『病めるとき』が過ぎるから。
ギュッと抱きしめてくれるの嬉しいけど。
周り見て!
皆、引いてるから!!
いや、何言ってるのか分かんないって。
ーーー遡ること2時間前。
朝起きたら、隣にはクラビス。
にこやかな笑顔にクラクラした。
「おはよう」
「お、おはよう」
いつになっても慣れない。眩しい。
いつの間にかずっとクラビスに引っ付いて寝るのが当たり前になってて、この前、ちょっとクラビスに聞いてみたら、至極当然のように『アルカスが離れたくないって言ったから』と言われた。
『魔の一週間』か?! と羞恥に悶えたのは記憶に新しい。
「アルカスが覚えてなくても俺が覚えてるから心配ない」
苦笑して言うが、いやそれ、何の心配?!
てか、朧気ながら何となく覚えてるんだよぉ!
「・・・俺、めちゃくちゃ甘えてた気がするんだけど・・・・・・」
ぽそっと呟いたら、クラビスがソレはいい笑顔で笑っていた。
「うん。凄く可愛くて凄く幸せだった。俺の理性、よく保ったなってくらい」
・・・うん?
イマイチよく分からない。
理性を試すような事したっけ?
頭の上に?マークを浮かべている俺をにこやかに見つめながら支度を整えて朝食を食べに行くと、すでに勢揃いした家族とフェイ、ウィステリアが座っていた。
「おはよう、アルカス。夕べ食べずに寝たからお腹空いたろう? クラビスもおはよう」
「おはよう。うん、さすがに空いた。昨日はごめんなさい」
母さんに挨拶して、昨日のやらかしを謝った。
「悪気がないのは分かってる。ただ、なるべくこれからもクラビスや我らがいるときにしてくれ。・・・不自由かもしれんが」
「はい、大丈夫。もっと色々勉強して、『常識人』目指します!」
たぶん、バレるとかなりヤバい案件なんだろうな。やっぱり常識大事!
そう思って決意表明したんだが。
「ふはっ! 『常識人』!! アルカスが?! 想像つかない!」
・・・フェイが思いっきり吹き出して笑い、つられた皆も笑い出した。
「フェーイー?」
半目で睨んでいたら、クラビスに頭を撫でられた。
「アルカス、頑張ろうな?」
そんな生温かい目で見るのは止めろ。
そして朝食後のお茶の時間。
母さんから告げられた言葉がこれ。
「アルカスとクラビスの婚姻届だ」
「・・・・・・はい?」
これが冒頭に繋がるわけ。
「昨夜お前が寝た後に皆と相談した結果、早急に婚姻を、という結論に達した。クラビスには事後になったが。もちろんイグニス達にも了承を得ておる」
至極真面目な顔の母さん。冗談ではないことがよく分かる。
「・・・・・・昨日の俺のやらかしのせい?」
「それもあるが、神の称号ですでに番扱いになっているのだ。籍だけでも入れておけば外野は黙ろう」
ウィステリアがほのほのと言う。
「・・・王家辺りですか」
クラビスが渋い顔でポツリと零す。
王家って、この国の王族って事?
「そうさの。何か言われても突っぱねる気でおるが、外堀を埋めておくに越した事はない」
「俺のことが漏れるとマズいって事だよね? ・・・俺、やっぱり」
「そこまで。前も言ったよね? 全然問題ないって。迷惑じゃないって。・・・・・・まだ分からない? 信じられないならこれからしっぽり、ガッツリ体に教え込ませようか」
「止めんか! この変態!!」
フェイがクラビスの頭をスパコーンと叩いた。
ありがとう、フェイ!!
そんでクラビス。ソレってボディトークってヤツですか??!
怖え・・・・・・!!
それ絶対監禁されるやつ!!
「ゴホン!」
グラキスの咳払いでハッとする。
皆して居住まいを正す。
「ともかく、式は後で好きにやるなりしてよいから、入籍だけでもすぐにしなさい。書類に記名して教会で受理されたら王都の神殿に送られる。そちらで書類は保管される。控えが出るのでそれを各自保管する感じだ」
なるほど。
でも、こんなにすぐにしなさいって事は厄介ごとがあるって事だよね?
チラッとクラビスを見るが、しれっと笑顔で流された。
今は言うことじゃないのかな?
仕方ない。俺にはどうすることも出来ないし、取りあえず記名してしまおう。
「ここにアルカスの名前を。俺はここに書くから」
そう言われて、届の用紙を頭から終わりまで隅々読んだ。
うん。普通の婚姻届だ。
特別変わったところもヘンな文言もない。
「・・・・・・言われたところに記入だけかと思ってたが、しっかりしてんな。上から下まで全部読んで確認してるよ」
フェイが意外そうに呟いている。
当然。
詐欺まがいの契約とか普通にあるんだから、そこは身内でも確認するに決まってる。
俺は警戒心強いのよ?
てな事を言ったら、皆に微妙な顔をされたけど、ソレってどういう意味の顔なんだ?
記入し終えた届けを教会に持っていって、すぐに受理されて控えを渡された。
俺とクラビスと、フォレスター家とフォルター家に1部ずつ。
「そういえば、俺、クラビスのお父さんにまだ一度も会ってないんだけどいいの? 結婚が先になっちゃったけど『息子さんを俺に下さい』って言う気満々だったんだけど?」
「ぶはっ」
・・・・・・そこかしこで吹き出す音が聞こえる。
「アルカスはそのままでいい。そうだな、近いうちに顔を出すか」
クラビスが微笑みながら言った。
「ん、分かった。なあ、こっちの結婚式って、神様の前で誓いの言葉とか言うの?」
「まあ、決まった文言はないかな? 結婚しましたって報告するような感じだ。向こうでは違うのか?」
「誓う神様によってちょっと違うかな。でもわりと多いチャペル、えと、教会での式の時は確か神父さんが新郎新婦に『病めるときも健やかなるときも、共に歩んでいく事を誓いますか?』って事を聞いて、2人とも『誓います』って答えるの」
それで、お互いの薬指に結婚指輪を嵌めあってキスするんだよ。
恋愛結婚で、子供も望まれて産まれてくる。皆に愛されて幸せに暮らすんだ。
この世界に還ってきて、スローライフが一番の望みだったけど、ソレって好きな人がいて周りに愛されて、自分も愛して。だからこその望みだったんじゃないかなって思う。
「クラビス?」
クラビスが抱きしめてきた。
「アルカス。愛してるよ。病めるときも健やかなるときも、死んでも愛している」
・・・・・・クラビスが言うと別な意味で『病めるとき』が過ぎるから。
ギュッと抱きしめてくれるの嬉しいけど。
周り見て!
皆、引いてるから!!
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