【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

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第一章 フォレスター編

初級魔法とは?

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そして来ました鍛錬場。

前もってギルマスに連絡していてくれて、すんなり貸切状態。

ホウレンソウ(報告・連絡・相談)大事。

・・・俺が言うなって?

クラビス達の視線はスルー。

ところで、誰かいる?
「あれはギルマスにサブギルマス」
「んん? あれ、さっき買い取りカウンターにいたおじさん?!」
ニタリ、と悪そうな笑み。
「さっきぶりだな」
「ホントだよ! 何なの?! そしてギルマスは初めまして。アルカスです」
「初めまして。ギルドマスターのダルク・フォルターだ」

あれ?

「クラビスと家名が同じ。ん? フロウの街のギルマスはクラビスの叔父さんって言ってたよね? あれ? もしかして・・・」
「そう。ザイン叔父さんの弟だ」
うん。言われてみればザインさんに似てる。なるほど。

「ところで、サブギルマス?は二度目まして。でも俺、名前知らないです」
そう言ったら、そうだった、と笑って名乗ってくれた。
「ギルバート・リンデンだ。時々受付や買い取りカウンターにいるからよろしくな」

「よろしくはいいんですけど、暇なんです? ギルマスが大変そう」
思わず苦笑してしまう。
おっと、ギルマスが遠い目をしてる。・・・ご苦労様です。

「さて、挨拶も済んだ事だしそろそろ本題に入りましょうか」
ウィステリアの言葉で意識が切り替わった。
「まずは初級魔法ですが、最初は危険の少ない水魔法をやりましょう」

えと、俺が使える属性は『光』『水』『風』の3つ。
魔法は『治癒魔法』『水魔法』『風魔法』の他に『鑑定EX』『隠蔽EX』がある。

治癒魔法は怪我人が今の所いないし、使ったことがない。
水と風は攻撃魔法だろう。
異世界育ちでラノベあるあるだとウォーターボール、ウインドエッジ辺り?

「水魔法の初級は『ウォーターボール』だね」
ビンゴ!
「魔力を掌に集めるようにして。循環が上手くいってるから大丈夫。よく言われるけど、呪文は何でもいいんです。イメージして。言葉はきっかけにすぎない」
ふんふん。中二病は煩わなかったので、下手な言葉は恥ずかしいんだが。

「たぶん、アルカスなら無詠唱でいけるよ」
クラビスに言われて、それならば、と、声を出さずに頭で思う。
『ウォーターボール』

思った途端、凄い勢いで水球が飛んでいき、的を木っ端みじんに破壊して、そのまま壁に激突。

結界がちょっと壊れかけた。

・・・・・・うん。

・・・初級魔法とは?

散々、危険と言われた意味がよっっく分かりました。

アカンヤツだコレ。

おそるおそる周りを見ると、ギルマス達は真っ青な顔して固まって。
フェイとクラビスも、ちょっと顔色が悪い。
ウィステリアは想定内なのか、にっこりしたまま。

「結界の強化を図りましょうか」

とのたまった。



ひとまず休憩と言われて、そんなに疲れてないと言ったら、
「その間に結界修復(強化)するからね」
と、クラビスに言われたら「是」と答えるほかはなく。

仕方なく、休憩用と思われる椅子に座って。
違った。
椅子に座ったクラビスの膝の上に座って。

当然のよう座ってるから、ギルマス達はガン見するけど、俺も含めてフェイとウィステリアはスルー。

クラビスは俺の首筋に顔を埋めてスハーッと吸ってる・・・うん、それ知ってる。猫吸いっていうんだよ?
俺が『馬』にやってたヤツ。
覚えたのか?

人にやったら変態チックな?!

そしてギルマス達、スミマセン。コレがデフォルトです。


・・・・・・

それにしてもヤバかった。
何あの威力。
俺、そんなに力込めてないし、イメージも普通だったのに。

「・・・ねえ、アレって普通じゃないんだよね?」
おそるおそる聞いてみる。
「アレが普通だったら、俺なんか下の下よ。そもそも初級なのに結界にヒビ入れるってどうなのよ?! さすがに俺も心折れそうになったわ」
フェイがふっかーい溜息吐いて思いっきり言う。

それは、なんか、
「ごめんなさい」
しか言えないわ・・・。

「何をどうしたらあんなことに?」
クラビスに聞かれて思い起こす。
「掌に魔力を集めて、クラビスが無詠唱でいけるって言ったから頭の中で『ウォーターボール』って唱えたら?」
「・・・・・・」
フェイが唖然としてしまった。

「フェーイー?」
顔の前で手をひらひら振ってたら再起動した。
「は、俺は一体何を・・・って違ーう! そもそも初級だといってもそんなに簡単に無詠唱出来るか! クラビスももう少し常識を教えろよ!」
「アルカスに常識は通じなさそうだから」
「オイ!」
思わず俺のツッコミが入る。

ソレって馬鹿って事かな?!
真顔で言うことじゃねえだろ!
「まあ、今回はその非常識が仕事をしたんだろうね」
ウィステリアがほのほのと間に入る。

ちなみに、結界修復(強化)の為にギルマス達は今はここにいない。

「異世界には魔力や魔法がないっていってたろう? なのに物語ではそういった想像での魔法が多々あったと」
「うん。本なんかの他にも映像・・・んと、伝達魔導具で向こうの様子が映る仕組みの道具とかで動く絵の物語を観たりするのがあって、その物語の中にフェイ達の魔法のようなのが出てくるのがあって」
「それは凄いな」

ファンタジーなアニメとか映画とか、ネットでも見れたし。
「ソレで、想像の産物だけど知識はいっぱいあるの。現実は無理でも魔法なら何でも出来る! って感じで」
「なるほど。ソレがストッパーを外してしまって、魔力を無意識に込めすぎたのかな?」
ウィステリアが分析する。

「そうかも。だって、最初に聞いた転移魔法とかも、物語の中では魔法使いがぱっと使ったりしてたから出来るんじゃないかなと思ってさ」
って言ったら、ウィステリアが、
「ちょっと試してみる?」
なんて軽く言うので。
「はいはい! やってみる!」
取りあえず、近くの距離で。
「クラビス、一旦離れて?」
「いや」
「・・・・・・」
でも危ないかも? と言ったら。
「そういうのも一緒。知らないところで何かある方が怖いから」
なんて、可愛いヤツ!
「・・・バカップル」
フェイにツッコまれた。ゴメン。

しょうがないので、取りあえず抱っこのまま立って貰って、ひとまずウィステリアの横に『転移』っと。

「・・・・・・出来たね」
「出来ちゃったね」
「・・・・・・この非常識がっ!」
「出来る分にはよいよい。もっと遠くても大丈夫かな?」
ウィステリアが促すので、
「たぶんイける。じゃああそこの入り口付近に」
『転移』

思った瞬間、クラビスと移動してた。
たまたま戻ってきたギルマス達と鉢合わせて、ギョッとされたが。

「・・・・・・なにがどうした」
ギルマスのやや片言な言葉に、転移でウィステリア達の元に戻ると。
「・・・・・・」
言葉もなく、愕然としてしまった。
「・・・・・・非常識の塊だから」
フェイが2人に、諦めろと言う声で言った。

酷い。















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