24 / 90
第一章 フォレスター編
比翼連理
しおりを挟む
「じゃあ、今は解放しても大丈夫という事でしょうか」
クラビスが俺を後ろからギュッとして聞く。
《うん。だから呼んだんだ。ただ、反動でまた倒れると思うから、よろしくね。次に目が覚めたら魔力は回復してるはずだよ。聞きたいことがあれば今のうちに聞いて?》
まあ、何かあればアルカスに呼んでもらってもいいから、って。
あんまり会えないんじゃなかったんですか?!
《やだなあ。私の加護を持ってるんだからアルカスが願えば会えるよ? 今までは忘れてたんでしょ?》
・・・スミマセン! もう許して下さい!!
父さんが挙手をして、聞いた。
「あの、一つよろしいでしょうか?」
《なんだい?》
「アルカスの称号に『クラビスの嫁』とあったのですが、あれは一体・・・?」
え? やっぱりヘンなことなの?
《ああ、あれは、特別。普通の人にはないよ。龍人や獣人と違って人族は番というモノがないから、アルカスとクラビスには番のようになって幸せになって欲しくて》
ソレって・・・・・・つまりは。
「比翼連理・・・」
「何?」
「天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん。仲睦まじい夫婦を表す言葉だよ。死ぬまで一緒。愛してるって事」
言ってからカーッと顔が熱くなった。
うわーうわーっ!!
「熱烈なアルカスからの告白だな。嬉しい。俺も死んでも一緒。愛してる」
ギュッとされて苦しいけど嬉しい。
そんなこと思う俺も末期だな。
「ゴホン」
父さん達が大袈裟に咳をした。
ハッとする。やべえ。
《ふふ、じゃあ、とりあえず、解放するから、アルカスは暫く眠るだろうけど心配しないで》
そう言って俺の胸に手を当てて、体がほわっとしたと思ったら、急速に意識が遠退いた。
《お休み》
またね。ありがとう。
声にはならなかったが、心は読んだはず。
そう思いながら、眠りについた。
そうして、俺が眠りについたタイミングで元の部屋に戻ってきたようだ。
その後の事は、意識のない俺には分からない。
-----
あの後、神託を受ける部屋から護衛達が待つ部屋へと移動した。
時間はほとんど経っていないようだった。神域では時間の流れが違うようだ。
移動中、誰も、ひと言も話さなかった。
クラビスは愛おしそうにアルカスを抱きしめている。
ソレを見てフェイが呆れたような、ホッとしたような顔をしている。
ウィステリアは、好々爺な感じで見守り、司教他フォレスター家の面々は半ば呆然としながら、歩みを進めた。
護衛達が待つ部屋へと辿り着いた後、出されたお茶を飲んでひと息つくと。
「・・・まさしく奇跡ですな・・・」
司教が恍惚とした顔で呟いた。
「長年神に仕えておりますが、ご尊顔を拝謁する事になろうとは・・・」
「我々も全くの同感です。これは予想の範囲外でした」
イグニスも深く溜息を吐きながら話す。
「思ったよりも気さくな方でしたね。エストレラ神」
ウィステリアが朗らかに言う。それに、待機していた護衛達がギョッとした。
「発言をよろしいでしょうか?」
「ああ、なんだい?」
「先程から仰っている話を聞きますと、エストレラ神とお会いになられたように思えるのですが・・・」
「うむ。会った」
「・・・・・・は」
護衛達が固まってしまった。
司教がほうっと溜息を吐きながら、
「畏れ多くも、エストレラ神のご尊顔を拝謁賜った次第で御座いますよ」
「私たち全員、神域へと招かれまして」
とウィステリアが続ける。
「アルカスは魔力欠乏を癒す為、暫く眠る。目が覚めたら回復しているとの事だ。・・・とりあえず、ひと安心だな」
グラキスもホッと一息ついた。
護衛達はやや混乱したが、ひとまずアルカス様は大丈夫という事にホッとして、表面上は冷静を取り繕った、が。
内心は・・・。
(エストレラ神と会ったってどういう事?! 気さくな方って?!)
と大騒ぎであった。
「本日は、実に有意義な事で御座いました。誠にありがとう御座いました」
司教はもう満面の笑みでお礼を述べた。
フォレスター家は苦笑して、
「こちらこそ世話になった」
と礼を述べ、アルカスを休ませるべく、足早に教会を後にした。
クラビスはずっとアルカスを抱き込んで離さず、邸に戻るまで終始ご機嫌だった。
アルカスを部屋に寝かせて、邸の者に事情を説明して、各自自分の仕事に戻っていった。
クラビスは当然のようにアルカスの部屋に篭もり、フェイはウィステリアとアルカスの魔力関係の話で盛り上がる。
一番の問題だった魔力欠乏の件が解決し、皆、アルカスの無事を喜んだのだった。
クラビスが俺を後ろからギュッとして聞く。
《うん。だから呼んだんだ。ただ、反動でまた倒れると思うから、よろしくね。次に目が覚めたら魔力は回復してるはずだよ。聞きたいことがあれば今のうちに聞いて?》
まあ、何かあればアルカスに呼んでもらってもいいから、って。
あんまり会えないんじゃなかったんですか?!
《やだなあ。私の加護を持ってるんだからアルカスが願えば会えるよ? 今までは忘れてたんでしょ?》
・・・スミマセン! もう許して下さい!!
父さんが挙手をして、聞いた。
「あの、一つよろしいでしょうか?」
《なんだい?》
「アルカスの称号に『クラビスの嫁』とあったのですが、あれは一体・・・?」
え? やっぱりヘンなことなの?
《ああ、あれは、特別。普通の人にはないよ。龍人や獣人と違って人族は番というモノがないから、アルカスとクラビスには番のようになって幸せになって欲しくて》
ソレって・・・・・・つまりは。
「比翼連理・・・」
「何?」
「天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん。仲睦まじい夫婦を表す言葉だよ。死ぬまで一緒。愛してるって事」
言ってからカーッと顔が熱くなった。
うわーうわーっ!!
「熱烈なアルカスからの告白だな。嬉しい。俺も死んでも一緒。愛してる」
ギュッとされて苦しいけど嬉しい。
そんなこと思う俺も末期だな。
「ゴホン」
父さん達が大袈裟に咳をした。
ハッとする。やべえ。
《ふふ、じゃあ、とりあえず、解放するから、アルカスは暫く眠るだろうけど心配しないで》
そう言って俺の胸に手を当てて、体がほわっとしたと思ったら、急速に意識が遠退いた。
《お休み》
またね。ありがとう。
声にはならなかったが、心は読んだはず。
そう思いながら、眠りについた。
そうして、俺が眠りについたタイミングで元の部屋に戻ってきたようだ。
その後の事は、意識のない俺には分からない。
-----
あの後、神託を受ける部屋から護衛達が待つ部屋へと移動した。
時間はほとんど経っていないようだった。神域では時間の流れが違うようだ。
移動中、誰も、ひと言も話さなかった。
クラビスは愛おしそうにアルカスを抱きしめている。
ソレを見てフェイが呆れたような、ホッとしたような顔をしている。
ウィステリアは、好々爺な感じで見守り、司教他フォレスター家の面々は半ば呆然としながら、歩みを進めた。
護衛達が待つ部屋へと辿り着いた後、出されたお茶を飲んでひと息つくと。
「・・・まさしく奇跡ですな・・・」
司教が恍惚とした顔で呟いた。
「長年神に仕えておりますが、ご尊顔を拝謁する事になろうとは・・・」
「我々も全くの同感です。これは予想の範囲外でした」
イグニスも深く溜息を吐きながら話す。
「思ったよりも気さくな方でしたね。エストレラ神」
ウィステリアが朗らかに言う。それに、待機していた護衛達がギョッとした。
「発言をよろしいでしょうか?」
「ああ、なんだい?」
「先程から仰っている話を聞きますと、エストレラ神とお会いになられたように思えるのですが・・・」
「うむ。会った」
「・・・・・・は」
護衛達が固まってしまった。
司教がほうっと溜息を吐きながら、
「畏れ多くも、エストレラ神のご尊顔を拝謁賜った次第で御座いますよ」
「私たち全員、神域へと招かれまして」
とウィステリアが続ける。
「アルカスは魔力欠乏を癒す為、暫く眠る。目が覚めたら回復しているとの事だ。・・・とりあえず、ひと安心だな」
グラキスもホッと一息ついた。
護衛達はやや混乱したが、ひとまずアルカス様は大丈夫という事にホッとして、表面上は冷静を取り繕った、が。
内心は・・・。
(エストレラ神と会ったってどういう事?! 気さくな方って?!)
と大騒ぎであった。
「本日は、実に有意義な事で御座いました。誠にありがとう御座いました」
司教はもう満面の笑みでお礼を述べた。
フォレスター家は苦笑して、
「こちらこそ世話になった」
と礼を述べ、アルカスを休ませるべく、足早に教会を後にした。
クラビスはずっとアルカスを抱き込んで離さず、邸に戻るまで終始ご機嫌だった。
アルカスを部屋に寝かせて、邸の者に事情を説明して、各自自分の仕事に戻っていった。
クラビスは当然のようにアルカスの部屋に篭もり、フェイはウィステリアとアルカスの魔力関係の話で盛り上がる。
一番の問題だった魔力欠乏の件が解決し、皆、アルカスの無事を喜んだのだった。
135
お気に入りに追加
789
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる